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臆病少女は世界を暗躍す。  作者: 池中織奈


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犯人を求めて 4

 その日、リア・アルナスはティアルク・ルミアネスたち一味と、それを追う少女の事をこっそり観察していた。

(んー、退屈)

 ただ、現在、それなりにレベルの高い者たちの事を襲っている者は姿を現すことがなく、リアは退屈そうに読書をしながら彼らの事を眺めていた。視界の先のティアルク・ルミアネスたちは、狙われるであろう人の護衛を申し出て、「私は貴方より強いのよ。何が護衛よ」と激怒され断られたのである。

 でも断られたぐらいでティアルク・ルミアネスの心は折れない。どれだけ拒絶されても、どうやら俺があの人を守るんだという気持ちの元、近くに居座っている。無理やり居座るティアルクたちに女性は呆れていたようだが、それなら好きにすればいいと思っているようだった。

(それにしてもハーレム主人公ってメンタル凄いよね? 何であんなにメンタルすごいんだろうか。私なら無理なんだけど。そもそも人に関わることが無理だし、本当に意味がメンタルお化けだよね)

 リアはティアルク・ルミアネスたちの精神の強さに関心していた。リアには無理な所業である。そういう所は関心してしまう。

(というかわざわざ護衛します! っていうあたり不思議な感じだよね? なんでわざわざそんな風に護衛をしようというんだろうか。やるならこっそりやればいいのにその方が相手も油断するだろうになー)

 リアはそんなことを思いながら、会話を交わしているティアルクたちをじっと見ている。ちなみにティアルクたちを追いかけている女性は相変わらず、ティアルクたちの事を追いかけていた。

 リアはそのすぐ近くにいるわけだが、女性はリアに気づくことは一切ない。



 さて、そんな風に過ごしていれば……、事態が動いた。




 いや、事態が動いたというよりもリア・アルナスが気づいたというべきか……、こちらを伺っている何人かの事をリアは察したのである。

 ティアルク・ルミアネスやその護衛対象の事を見ている彼らは、上手く人にまぎれている。だけど、戦いの中で生きてきたリアの研ぎ澄まされた感知能力の前では、上手くまぎれていても意味はない。

 リア・アルナスは、彼らがティアルク・ルミアネスが護衛している女性を狙っていることに気づいた。ついでにいえば、ティアルクのこともそれなりにレベルが高いことを把握したのか狙おうとしていることが理解出来た。

 リア・アルナスは、人込みにまぎれてティアルクに近づこうとしていた男にさらっと近づく。

 まだ襲い掛かってはいないが、襲い掛かろうとしていることは確かである。一瞬で一人を気絶させる。それに対して驚いたもの達は足を止め、驚愕の目をティアルク達に向けるが――、彼らがこちらを意識していないのを確認し、それをやったのが別のものだと理解したようだ。

 その四人ほどの者たちは、一人が気絶させられたからと困惑したように、踵を返していた。急に意識を失った男を見ていたティアルク・ルミアネスが「大丈夫ですか? 手伝いましょうか?」などとのんきに問いかけているが、それは断られていた。

(それにしてもハーレム主人公、全く気づいていないなぁ。しかし人込みで良かったかも。気絶もさせやすいし。此処大通りだしね。というか、こいつら大通りで人を殺してどうする気だったんだろ? とりあえずついて行こう)

 そう思いながらリアは彼らが何処に帰宅するのか興味を抱き、追いかける。もちろん、捕らえるためでもある。

 さてリアがそうやって追いかける中で、リア以外にも彼らを追いかけるものがいた。それはティアルクたちを追いかけていた女性である。

(ふーん。レベルはそんなに高くないけど、こういう所を気づけるならそこそこ将来有望なのかな。でもちょっと邪魔。私はあいつらをさっさと捕らえたいんだけど。というか、四人だけなのかな? もっといるのかな? 組織的??)

 リアは一緒に追いかけている女性をどうしようかなと悩む。この女性に恨みなどはないが、好き勝手動いて捕らえるためには、この女性は邪魔である。

 そんなわけでリアは一旦、女性を気絶させて、安全な場所に置いておくことにした。

 一瞬で、相手の背後に回り気絶させると、教会の前に転ばせておく。ちょうど、目の前に教会が映ったからだ。

 突然意識を失った女性に周りが騒がしくなったが、リアはそれを放置してティアルク・ルミアネスに襲い掛かろうとしていたものたちを追いかける。彼らが向かったのは森であった。

 森の奥に向かったかと思えば、巨大な木の前で立ち止まる。

 そして何かをしたかと思えば、その木が開く……。どうやら隠れ家のようになっているらしかった。リアは彼らと一緒にその隠れ家の中へと入った。

「……なんなんだ。急に気絶するなんて」

「そうよね。おかしいわ。あそこに何かいたのかしら」

「あいつらを殺して、レベルを上げようと思っていたのに……」

 リアはそんな会話をしている彼らのことを観察する。他に人がいるのかと思ったが、どうやらレベルが中位の連中を殺して回っていたのはこの四人らしい。

 ステータスを見ると、皆揃いも揃って、レベル50~60ぐらい。それなりのレベルだ。ただし、四人で襲い掛かればそれよりレベルが高い者を殺すことも可能だろう。

 称号に《私利私欲の鬼》などとでている。レベルをあげるためだけに人を何人も殺めた結果だろうか。レベルを上げたいのは分かるが、必要以上に人を殺す意味はリアには分からない。そもそもそんなことをしていればいずれ人の世に排除されるだけである。リアは必要であれば、人を殺すことも厭わないが、好き好んで人を殺しているわけでもない。

(んー。拍子抜け。私にも気づいていない。捕らえるか)

 リアは正直言ってもっと恐ろしい存在が殺人鬼なのかと思っていたが、彼らはリアの想像よりもずっとしょうもない存在だった。

 リアはその場でささっと動き、彼らを気絶させ、ぐるぐる巻きにする。所詮レベルが中位とはいえ、リアの存在に気づけなければ不意打ちで気絶させられるのである。




 それからギルドマスターに連絡して、リアは彼らを回収してもらうことにした。


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