犯人を求めて 1
リア・アルナスは、その日もいつものようにユニークスキル、《何人もその存在を知りえない》を使ってぶらぶらしている。
いつも通りの行動しかしていないように見えるだろうが、リアはギルドマスターから殺人事件をが起こっていることを聞いて、それなりにレベルが高い人達の元を見に行ったりしている。もし、殺人鬼が何かやろうとしているのならば、すぐに捕まえようと思っているが――、リアはそもそも正義感がそこまで強いわけではないので、見かけたら対応するが、それ以外で殺人鬼が暴れてもとりあえず放置といったスタンスである。
(それにしても確かにレベルが高い人を殺せばレベルは上がりやすいけど、それをしちゃったら危険人物として認定されて殺されるだけなのに。自分は殺されないと思っているのか。なんて甘い考えなのか。目立てば目立つだけ、殺される可能性があるっていうのに。だからこそ、私も目立たないようにしようって思っているのに)
リアはその殺人犯の事を理解出来ないなぁなどと思う。
……まぁ、その殺人犯もリアの思考や行動は理解出来ないだろうが。
(お義父さんが先に捕まえたら、なんか悔しい。だから探す)
リアはそう思いながらも、他の人に協力を頼むこともなく、ただ一人だけで動いている。リアも交友関係が狭いとはいえ、協力を頼める相手がいないわけではない。とはいえ、一番交流の深いソラトは、その殺人犯に狙われる可能性が十分ある存在であるし、一人で全部やってしまおうと早速動いているのだ。
ソラトが後からリアの行動を知ったら、「俺もリアちゃんの手伝いしたかった」などということ間違いなしであろうが、リアはソラトにそもそも告げる気もなかった。
対して、ギルドマスターはおそらくギルドのメンバーの協力も踏まえて行動しているだろう……ということなので、リアよりは有利だろう。
「……ねぇ、貴方は大丈夫なの? ギルドマスターが言っていたけれど、貴方のような人を狙っている人がいるのでしょう?」
「大丈夫よ。私は強いもの!!」
リアの目の前でそんな会話が交わされている。
リアの前にいるのは、二人の女性である。一人は見た目は40代ほどの、レベル50過ぎの女性で、もう一人はその女性の友人のようだ。
ギルドマスターの方からもレベルがそれなりに高い人達が殺されたりしていることを本人に知らせている。とはいえ、そういう人たちは結構自分の強さというものを過信している。レベルが通常の人たちよりも高いという自負があるのだろう。そこには自信がありふれていて、リアは凄いなとちょっと思ったりする。
リアはどれだけレベルをあげてもいつか誰かに殺されてしまうのではないか、自分よりレベルが高い相手がいるのではないか、とネガティブ思考な心配性なので、全く安心が出来ない。その自信からギルドマスターが申し出た護衛もいらないと言い放ったりしているらしい。あとなるべく一人にならないようにとかも言われているそうだ。もっともどれだけ人数がいようとも、圧倒的にレベルが高い相手だと意味をなさないが。
それに護衛に回せる人材もそんなにいるわけではない。
リアはとりあえずさっさと捕まえよう、などと考えていた。
怪しい人はいないかとか、こちらを狙っている人がいないかとか、そんなことを考えながらその人物の周りをうろうろしていたわけだが、その日はその人物が現れることもなかった。
(……今日は現れなかったか。んー、探しもしたいけど、レベルあげのためにも魔物退治にも行きたいんだけど。どうしようかな。毎日のように様子見にきてもどうなるか分からないし。効率よく、見て回りながらレベルを上げられるようにした方がいいけど。あとあれだね、それなりにレベルが高い人達だともしかしたら私がいると少しぐらい勘づく人もいるかもしれない。
レベルが私より低いから大丈夫かもだけど、そのあたりも考えておかないと。……あと学園に通っている間に事が起きたら私は動けないしな)
とそこまで考えて、また別の事を考える。
(ああ、そうか。あとあのハーレム主人公も一応自分のレベルを隠して学園に通っているけれど、バレバレすぎるから、ハーレム主人公を狙いに来る可能性も十分あるか。いっそのこと、ハーレム主人公を囮にして呼び寄せる? それとも勝手にくるかな? それに、あれか。ハーレム主人公がこのこと知ったら犯人捜しとかしそうだしな。……ゲンさんとルノさんがさらっと話しちゃう恐れもあるかな)
リアはハーレム主人公がこのことを知ったら、おそらく犯人探しに精を出すだろう。正義感が強く、人が死ぬことが許せないといった性格をしているので、絶対に動くだろう。
――そう思ったリアは、学園でハーレム主人公たちの話を盗み聞きしようと決意するのだった。




