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臆病少女は世界を暗躍す。  作者: 池中織奈


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ソラト、パンケーキを買ってくる。

「リアちゃん、いるー?」

「ソラ兄、おはよう。リア姉は……いるかちょっとわかんない」

 いつものように壁を回転させて、リアの家にさらっと侵入したソラト。もうすっかり突然やってくるソラトに慣れ切っているネアラは平然と返事をする。

 ソラト・マネリはリア・アルナスの家にいつでも入ってくる。とはいえ、基本的に常にユニークスキルを行使しているリアなので、その姿がそこにある事はほとんどない。

「出てこないって事は、リアちゃんお出かけ中かな」

「さぁ。それか何の用事か分かるまで出てこないとかじゃない? しょうもない用事ならリア姉、顔出したくないだろうし。ソラ兄、何しに来たの?」

「リアちゃんが買ってきてほしいって言ってたパンケーキ買ってきたんだよ」

「パンケーキ?」

「そうそう。美味しそうだったけど、人が多すぎて自分で買いに行きたくなかったんだって」

「……ソラ兄って、リア姉のパシりは喜んでするよね」

「リアちゃんの頼みなら何でも聞くのは当然じゃん」

「それで他の人の頼みは聞かなさそう」

「当たり前じゃんか。というか、これだけ話してて出てこないって事はリアちゃん、本当におでかけっぽいね」

「私もそう思う。わざわざ頼んでたパンケーキ買ってきたっていうなら出てくると思うし」

「だよな。残念、とりあえず冷蔵庫に入れとくか。ネアラ、つまみ食いとかしないようにな」

「しないよ。リア姉のものに手を出したら後が怖いもの」

 リア・アルナスは中々自分勝手な人間なので、勝手におやつを食べてしまえばどんなふうに怒るか分かったものではない。ネアラにとってリアは最も逆らってはいけない人間だ。

 近くにいるからこそ、《姿無き英雄》と呼ばれる存在がただ優しいだけではない事を十分に承知している。リアは優しいからこそ人を助けるのではなく、自分のためだけに人を助けるような人間なのだ。―—だからこそ、下手な態度を取れば義理の妹だろうとも簡単に命を狩ってしまうかもしれない。

 命を失わなくても痛い目は合うかもしれない。それが分かっているからこそ、ネアラはリアが義理の姉だろうともきちんとした対応をしている。

「……リア姉とソラ兄の学校の人は相変わらず見る目ないの?」

「気づかないのかって事か? 気づいてないな。俺もリアちゃんも気づかれるような真似はしないし」

「でも学園って将来有望な学生とか、実力者な教師とかが多いんでしょ。それなのに誰一人気づかないってどうなんだろうと思って……」

「気づかせないようにしているから」

「リア姉もソラ兄も徹底してるもんね。私も、学園に入る時真似したいな。出来るか分からないけど」

「顔も隠すようにしたんだろ?」

「うん。……私はリア姉やソラ兄のようになりたいって思うから」

 ネアラが素直にそういえば、ソラトは面白そうに笑った。

「リアちゃんのようになるのは至難の業だぞ。俺はリアちゃんに追いつきたくて仕方がないけど、まだ《超越者》にもなれないしな」

「ソラ兄ならそのうち、なるでしょう。レベルもまだ上がってるんでしょう?」

「ああ。リアちゃんの真似して、なるべくスキルを使っているから。でもまぁ、リアちゃんに追いつけないんだけど」

 ただ、ずっと努力し続けている。

 ひたすらにスキルを使い続け、その結果、レベルが打ち止めになっていない。言葉にすると単純だけれども、それは難しい事だ。ネアラもなるべくスキルを使おうとして、なるべく強い敵と戦おうとしている。だけれどもそれをずっとし続ける事は難しい。

 そんな風に話していれば、「ソラト、パンケーキ買ってきた?」いつの間にか、リアが帰ってきたのかソラトに声をかけた。

「リアちゃん!! おかえり!! もちろん、買ってきたよ。俺がリアちゃんとの約束破るわけないじゃん!!」

「……そう。なら、よし。食べる。ありがとう、ソラト」

「リアちゃんのためなら幾らでも買ってくるよ!! 他に欲しいものとかあったら何でも言ってね」

 ソラトは急に満面の笑みになっている。他の人と話すときには、此処までの笑顔にはならない。ソラトは相手がリアだからこそ、これだけの笑みを浮かべるのだ。何とも分かりやすい。

「うん。とりあえず、他はいい」

 リアはそれだけいって、冷蔵庫からパンケーキを取り出すとそのまま消えようとする。

「待って、リアちゃん! 此処で食べようよ。そして俺と話そう!!」

「……え」

「リアちゃんと俺はもっと話したい……」

「……分かった」

 あまりにもソラトが必死だったので、リアは折れたようだ。そしてネアラの座っている隣に腰かけて、パンケーキを頬張る。

「美味しい」

「……これって、結構並ばなきゃ買えないものだよね?」

「そうそう。なんか、学園でもティアルク・ルミアネスが美味しかったって広めたからまた人気が出たらしくて、凄い混んでた」

 ネアラの言葉にソラトが答える。

 学園でも影響力のあるティアルクが美味しかったと広めたせいで、人気がまた上昇していたらしい。なんとも影響力の大きな男である。

 リアはソラトがどれだけ並んでいたかなども気にしない様子でパンケーキを食べていた。

 そんなリアにソラトが一生懸命話しかけ、ネアラがそれを呆れたように見据えているのだった。





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