自分についての授業は何だかむずむずする。
リア・アルナスは、その日、授業を受けながら何とも言えない気分になっていた。この学園は強くなるための授業をしている。強者というのはこの学園の人たちにとっては、憧れである。その憧れの存在になるために、強者に対することを学ぶ授業も多々ある。
リアからしてみれば、人の真似をしてもどうしようもないし、学んだところで同じようになることはまず無理なので、そんなこと学ぶよりもスキルを使い続けた方が良いとしか思えないのであった。
しかしまぁ、この学園では必修授業とされているし、特に文句も言わずに授業を受けている。
さて、今回は最も謎に包まれている恐らく《超越者》であろう、《姿無き英雄》についての授業だった。
《姿無き英雄》の正体はリア・アルナスである。しかし、目立つことが誰よりも嫌いなリアは、一切正体を悟らせないようにしている。
普通の《超越者》は誰にでも知られている存在である。だけど、リア・アルナスは徹底的に隠している。
《姿無き英雄》という存在のことを、誰もが興味津々である。
「では、今日は《姿無き英雄》について学びましょう」
リアは、微妙な気持ちになる。自分のことを誰よりも知っているのは自分である。リアは退屈な気分になっているが、ちゃんと授業を聞くことにした。まぁ、意識は別の所にいっているが。
「《姿無き英雄》様は去年の闘技大会に参加してくださり———」
そうして教師が話している中で、カトラス・イルバネスが珍しく真面目に耳を傾けていた。
カトラス・イルバネスは、《姿無き英雄》に救われた過去がある。そのことはリア自身把握している。
(私に救われたからっていうけど、うーん、この過去あり主人公の方もどうなるんだろうか。ハーレム主人公の方は、学園生活中に色々ばれるだろうけど。というか、もうばれかけているしね。それにしても私の話いつ終わるんだろうか。あんまり私の話されると何とも言えない気分になる)
リアはそんなことを考えてしまう。
「《姿無き英雄》様は表に出ることが少ない方です。そのような方を一瞬だけとはいえ、お見かけすることが出来た私たちはとても運が良いのです」
(運がよいもなにも、少なくともこのクラスの生徒たちは学園に登校している日は毎日その、《姿無き英雄》を見ているんだけどね)
「《姿無き英雄》様はその名の通り姿を現さず、様々な推測がたてられています。我が学園では《姿無き英雄》様についての考察に関する研究をしようとしている教員も現れているほどです」
(え。凄くやめてほしい。その研究書類燃やしたい。でも急に燃やしたら不自然に思われてしまう気がする。あんまりやると近くにいると悟られちゃうかな。あんまりやりすぎてもあれだし。絶対にばれないようにしたいし)
リア、無表情のまま黒板を見つめている。その内心はその表情からは分からないぐらいに色んな事を考えていた。
「《姿無き英雄》様のユニークスキルは『その他系統』に含まれていると考察されており、おそらく姿がほとんど見えないのはそのユニークスキルの影響でしょう。『攻撃系統』のユニークスキルを発現したいと望んでいる方が皆さんの中にも多いと思います。しかし、ユニークスキルというものは、どんなものでも使い勝手があるものだと私は思っています。そもそも、学生のうちからユニークスキルを発現できているだけでも誇らしいことであり———」
(『攻撃系統』のユニークスキルの人結構多いよね。『その他系統』ってなかなかいないし。というか、『その他系統』だと本当に色々あるし本当にまさにユニークスキルって感じする。ゲーム時代から本当にユニークスキル面白かったけれど、現実になると本当色々あるからね。学園の中でもユニークスキル発現している人少ないし。そういえば、ハーレム主人公のもテンプレ系な『攻撃系統』のユニークスキルだっけ。私は割とレベルが低い頃からユニークスキル発現したけど、人によってはユニークスキルが全然発現してない人もいるし。ユニークスキル発現せずに《超越者》になっている人もいるはずだし。そう考えるとユニークスキルって本当に面白いなって思う)
ユニークスキルに関してはまだまだ謎な事がおおいのだ。そもそもユニークスキルとは、どういった条件で現れるのかそういうのも分からない。そもそもゲームではないこの現実の世界でステータスとかユニークスキルとかどうなっているのかというのは謎である。
とはいえ、そんなこと考えても分からないので、リアはそういうものであると思っている。
「《姿無き英雄》様は常に誰かを助けていらっしゃるような素晴らしい方です。気づいたら魔物から助けていただいたという方も多く存在し、人を助けたいという崇高な思いに溢れている方で—―」
(目の前で誰かが死ぬの気分が悪いだけなんだけど。それに今は学園に通っているから前ほど動いてないし。はやくおわんないかな。むずむずするし)
リア・アルナスは、無表情のまま自分の話を聞きながらむずむずするのであった。しかしリアの願い空しくその教師はずっと《姿無き英雄》の話だけをしていた。




