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臆病少女は世界を暗躍す。  作者: 池中織奈


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リア、ぶらぶらする。

 リア・アルナスはその日もぶらぶらしていた。ユニークスキルを行使しながら、誰にも悟られないようにぶらぶらと移動している。リアは、春休みだというのに誰かと会うということはほとんどしない。といっても、誰にも会いたくないからとひきこもることはない。リアは人とかかわるのは嫌いだが、外に出るのは好きである。

 人に気づかれないように、こそこそと動くのが好きだ。体を動かすのも大好きである。そんなリアだからこそ、家には基本的にいない。そもそも春休みではなくても家に居るのなんて必要最低限なリアなのである。

 リアは、春休みが楽しいと感じていた。

 (休みの日って、学園に入る前みたいにのんびり誰にも気づかれずに行動するってことだから楽)

 学園に通う、ということを決めたのはリア自身である。しかしリアは、自我が芽生えてから如何に自分の存在を消すか、というのを実行してきた少女である。ユニークスキルが開花してからというもの、ほとんどの場所でユニークスキルを使い続けていた。それは、誰もリア・アルナスという少女がそこに存在していると認識していなかったということ。その状態でリアはずっと行動してきた。誰かの隣にいるけど、誰にも認識されないようにひっそりと。《姿無き英雄》という二つ名を周りが認識していたとしても、それがリア・アルナスという少女であるとはまず誰もが想像出来ないものだ。彼女はひっそりと、誰にも悟られないように過ごしていた。そんな彼女が学園生活を送るからと言ってすべての人に認識される状況―――ユニークスキルを使わずにあれだけ長い時間姿をあらわし続けるという当たり前の生活を送ることはリアにとって面倒なことである。

 そもそも姿をあらわし続けるというのがリアにとっては慣れないことで、学園に入学するにあたって一年前に人前に出る訓練をしていたぐらいだ。

 人前に出続ける。普通の生徒として行動し続ける。それを一年間行ったリアであるが、やはりユニークスキルを使ってぶらぶらするときのほうが一番落ち着くのだ。

 隣を通り抜けても誰も気づかない。

 空を《空中歩行》で歩いていても誰も気づかない。

 機密の話を聞かれていても誰も気づかない。

 ―――誰もが自身に気づかずに、自分は好きなように動けて、好きなように話を聞く。

 そういう時間がリアは好きだった。自分よりもレベルの高い存在が居れば、こうして隠れてこそこそしたくてもこそこそ出来ないのだ。それに自分より強い存在が居れば、自分は幾らこそこそしていても殺されるかもしれないのだ。

 こうしてぶらぶらすることを、リアは楽しいと思っている。落ち着く時間だと感じている。それと同時に恐ろしさを常に感じている。だからこそ、強く、強くなりたいとリア・アルナスは望んでならない。

 (―――あと、二年。学園を卒業するまでの間に、私はもっと強くなる。学園生活をしながらのレベル上げは難しいかもしれないけれど、もっと、もっと強くなる)

 リアはユニークスキルと《空中歩行》という二つのスキルを行使したまま、街の中をうろうろとする。そうしたら、リアは、カトラス・イルバネスを見つけた。

 カトラス・イルバネスは、リアに一切気づかない。

 カトラス・イルバネスは剣を手にして、街の外に向かっていた。

 (おお、過去あり主人公、なんだかんだで中途半端なんだよね)

 リア・アルナスの、カトラス・イルバネスに対する印象はどこか中途半端であるということ。強くなることをあきらめているのに、強くなることをあきらめていない。そんな矛盾した感情を抱えているように、リアには見えた。

 リアは、単純な話の方が好きだ。自分がやりたいと思ったからやる、がリア・アルナスの基本である。

 (そんなに悩む時間があれば、どんどんレベルを上げていけばいいのに)

 リアはそう思いながらも、特に興味もなかったので街の外に出ていくカトラス・イルバネスの後を追う事はなかった。

 (んー、二年目、どうなるかな。ずっと表に出続けているってことはそれだけ色々な影響力があると思うけれど、私にとって嫌な影響力じゃなければいいけど。私の学年にはハーレム主人公と過去あり主人公がいるし、私とソラトがいるからあれな学年だしな。そうなると、後輩にあたる学年は流石にそこまで濃い学年には多分ならないはず……でもどうかな)

 自分で次の学年のことを考えながら、自分の学年が色々とややこしい存在が沢山いるので下の学年もややこしい存在が多くいるのではないかと考えてしまった。自分が一番隠し事をしているややこしい存在でありながら、下の学年が面倒だと嫌だと感じているあたり、リア・アルナスは自己中である。

 (とりあえず、私にとって害である存在なら対処する。最悪、消す)

 リアはそんな物騒なことを考えながら、街の中をぶらぶらするのであった。



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