ソラト・マネリ、突撃する。
ソラト・マネリはその日、ギルドマスターの元へ行っていた。なぜかというと、ギルドマスターに聞きたいことがあったから。ソラトはギルドマスターとそこまで会わない。まぁ、ソラトの興味はリアにしかなく、リア以外にはあまり自分から会いに行かないのがソラトである。
なお、ソラトに関しても本人が《炎剣》であることは隠して生活をしているのでギルドマスターの元へやってくることはあまりない。が、今回はやってきていた。
それはなぜかというと、
「ギルドマスター、《爆炎の騎士》ってどこ行けば会える?」
リアの友人である《爆炎の騎士》のことを気にしていたからである。リアから前世の友人ということを聞き、前々から気になっていた。
「さっき、ギルドに報告にしに来たばかりだからその辺にいると思うが。一番確率が高いのは、俺が手配した家じゃねぇか?」
「わかった。ありがとう!」
「お前は……本当に、他人に興味がない癖にリア関連だと食いついてくるな」
「当たり前!」
「……リアは振り向くことが万が一にあるとしても、どうせずっと先だろう。それまでに女と遊んでもいいだろうに」
「無理無理!! 俺、リアちゃん以外どうでもいいもん」
ソラト、即答した。そもそもリアがソラトに対して好意を抱くなんてことは今の所まず確率がないといってもいいだろう。だというのに、即答である。何れ《超越者》には至るであろうが、考えるだけでも長い長い時間になるだろう。
「お前、ラウルにあってどうする気だ?」
「んー、ちょっと話すだけだよ。そんな警戒しなくていいよ。俺はリアちゃんの嫌がることはしないって」
ソラトはちゃんと理解している。
ラウルという存在がリアにとってその他大勢に分類されていないことをきちんと理解している。リアは、他人のことをそこまで気にしないが、家族や友人などに関してはそれなりに気にしている。だからこそ、ソラト・マネリは、ラウルのことをどうこうする気はなかった。
ソラトにとってみれば、リアの友人は、それなりに大切にすべき存在である。大切にせずに、リアの機嫌を損ねるなどといったものをソラトはしたくないのである。
「よし、じゃあ、いってくる」
「場所はわかってるのか?」
「ああ。リアちゃんの友人の家だから」
ソラトにとってみれば、リアの友人の家は知っていて当然であるらしい。その言葉に、ギルドマスターは呆れた表情を浮かべるのであった。
そしてそんな呆れているギルドマスターを置いてソラトはラウルの家へと向かった。
さて、ラウルはその時、元闇ギルドのメンバーでもあるナキエルと共に休日を謳歌していた。ナキエルは料理を作っていた。好意を寄せているラウルに美味しいものを食べてもらいたいという健気な思いから台所にたっていた。
闇ギルドの元メンバーとは思えないほどの幸せそうな様子のナキエル。ナキエルは、ラウルの側で過ごせて幸せだった。
(ラウルさんおいしいっていってくれるかな)
そんなことを考えながらにこにこしているナキエルの耳に、こんこんっとドアのたたかれる音がした。来館者の訪れの合図である。
「ラウルさん、私が出ますね」
「いや、いいよ。俺が出る」
ラウルはそういいながらソファから立ち上がり、玄関へと向かっていく。
(今日は誰も来ないはずなんだけどな)
そんなことを思いながら、玄関まで歩き、ラウルは扉を開ける。
「貴方が、《爆炎の騎士》か?」
ラウルが扉をあけて目にしたのは、仮面をつけ、フードをかぶった一人の人物だった。ローブの色は、水色。素顔をさらしていない存在に、ラウルは少しだけ怪訝な顔をする。
「――そう、だが。君は——」
「俺は、《炎剣》。いや、リア・アルナスの幼馴染って言った方がいいか?」
後半の、リアの事を話すときの声は小さかった。だけど、ラウルには十分聞こえる距離だった。
「―――君、が?」
ラウルは、まじまじと素顔の見えない男を見る。
(リアに惚れているっていう……この男が……ナナの——この世界でのリアの幼馴染……。《姿無き英雄》などと呼ばれる存在の幼馴染として生きてきた男)
ラウルはそんなことを思う。
幾ら、ラウルの方がレベルが高くても、ソラトとラウルには経験の差が圧倒的に違う。ソラトにはこの世界で生きてきた十六年の経験がある。それに対してラウルには、一年にも満たない経験しかないのである。正直ソラトがなんのためにここにきたのかわからないのもあってラウルは思わず唾をごくりと飲む。
「――上がらせてもらう」
ソラトはそういって、足を踏み入れ、扉を閉め、鍵も占める。
「貴方と話をしたいんだ、いいだろうか?」
「……それは、構わない。では、こちらへ」
ラウルはそういって、ソラトを奥の部屋へと案内するのであった。
ナキエルは仮面をつけた来訪者にラウルのことを心配そうに見ていたが、ラウルが控えるようにいったのもあって奥の部屋まではついてこなかった。
そして、その部屋には、ソラト・マネリとラウルのみがいるのである。
「――――それで、話とは?」
最初に口を開いたのは、ラウルだった。




