リア・アルナス、何故かハーレムについて考える。
闘技大会が行われるということで、学園内は騒がしい。
しかし、リア・アルナスは驚くほどにいつも通りに過ごしている。彼女にとって闘技大会程度は心が乱されるようなことでは一切ないのである。普通の人間にとっての非日常が、リア・アルナスにとっての日常であるといってもいいぐらいだ。彼女は、滅多な事では取り乱すことはない。
リア・アルナスは、エマリス・カルトの誘いをのらりくらりと躱している。エマリス・カルトがリアに「一緒にやらないか」みたいに問いかけているのを、教室の外からちらりと一瞥したソラトは一瞬だけ恐ろしい顔をしていた。
リアは多分、自分が誘いたいのになどと考えているのだろうなどと思っている。
学園内は騒がしいが、リアは、いつも通りおとなしく過ごしている。リアはやろうと思えば、この学園の誰よりも目立つことが出来るし、誰よりも強いということを示すことは出来るだろうが、そんなことやりもしない。
(……エマリス・カルトがうざいのはどうしようか。私に対して親しみを感じているみたいだけどそういうのいらない)
リア、学園生活を送る中で誰ともかかわらずに卒業まで向かうのは無理だということはきちんと理解しているが、正直絡まれることはとても嫌であった。
(来年、クラス離れたら絡まれなくなるか。クラス、面倒なクラスにならなきゃいい)
毎年、この学園ではクラス替えがある。三学期が終われば新しいクラスになるのだ。ティアルク・ルミアネスに関しては、外から見ている分には楽しいが、同じクラスだと絡まれる可能性があって面倒なのだ。
(そういえば過去あり主人公の方は普通に学園生活しているな。結局時間を無駄に消費している。でも少しはレベル上がってたし、何もしていないわけではないのだろうけど。もったいない時間の使い方している気がする)
リア・アルナスは《何人もその存在を知りえない》を行使して、学園内をうろうろしている。闘技大会のために訓練をしている学生たちを見ている。
(というか、将来有望な面白い存在いたらいえとお義父さんにも言われているし、《炎槍》の前で見せなくても私が本当に有望そうならお義父さんに報告してるしなぁ。個人的に面白い存在ばかり報告しているけど)
リア、ギルドマスターと会うことは普通の親子ほどはないが、それなりにある。その際に学園のことを少しは話している。ティアルク・ルミアネスとその周りは有望だが、全員何かしらの事情を抱えてたりするものなのでギルドには入らないだろうなどという報告とか。まぁ、ティアルク・ルミアネスはギルド所属なので、もしかしたらそのハーレムたちもギルドに所属する可能性もあるが。
(というか、ハーレムの行く末って、なんなんだろう。そのまま、一夫多妻制? まぁ、強者に関してはそういうこと普通にある世界だから大丈夫だろうけど。でも圧倒的な強者ではなく、ハーレム主人公って中途半端な強さしかないし、正直《超越者》にはなれるかもしれないけれど微妙な強さだし。それであれだけの美少女侍らせてたら厄介ごととか凄いあるんじゃないか)
リア、ふと、ハーレムの行く末を思った。ハーレムで、皆妻で、幸せに暮らしました。めでたしめでたしで、きっとこの世界は終わらない。物語ではなく、現実なのだから、その先がある。彼らが《超越者》に至るのならば、彼らのハーレムはずっと続いていくだろう。そして子供が生まれて、その先に何が待っているのだろう。
(うん、ちょっと面白そうだからそのあたりまで観察したら楽しいかもしれない。ハーレムといって思い浮かぶのは後宮。後宮は国最大のハーレムだよね、基本的に。後宮はどろどろした女の争いがあるイメージばかりが、強い。実際どろどろだし。まぁ、上手くやっているハーレムもあるだろうけど。国のハーレムはまだ権力者でちゃんと管理しきれているからこそ成り立っている感があるよね。ハーレム主人公は無意識にハーレム築いているけど、あの感じだとハーレムとかを好んでいるって感じではなさそうだしなー。どうするんだろ?)
リア、まじめにハーレムについて考えている。一言も音を立てずに、一言も発さずに、ただのんびりと移動しているリアは、心の中では沢山のことを考えている。
(お義父さんは強いけどハーレムは作ってないな。ギルド最高ランクは、そういうのに興味なさそう。エルフの女王様も逆ハーレムは作ってないし、そう考えると、《超越者》ってハーレム作ってない気がする)
強者はハーレムを作っている、というのがイメージであったが、よく考えればリアの知り合いはそういうの作っていなかった。
(となると、人によるのか? 逆ハーレムとか、ハーレムとか、正直めんどくさそう。何を好き好んで皆作るんだろう。私はそんな面倒なことする暇があるなら強くなるために行動したいって思うけど。ああ、でもそうか、お義父さんがハーレム作らないのは、そういうことするよりも面白いものを探すのが好きだからとかそういうのもあるのか。となると、他の知り合いもそういうほかへの興味が強いからっていうのもあるのかな? ちょっと観察して答え合わせしてみよう)
リア、そんな結論に至って、一人口元を緩めるのであった。




