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臆病少女は世界を暗躍す。  作者: 池中織奈


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家族旅行っぽいもの 7

 家族旅行っぽいこの旅行は、もう終焉を迎えようとしていた。リアは、イランティエラと遊べる限り遊んでいた。そしてその関係で、仮にも家族旅行という名目にも関わらず、義姉であるルカとはあまり交流をしていなかった。

 ギルドマスターはリアの存在に気づいていて話しかけたり、殺し合い(遊び)をするのを見にいったりしていた。ソラトに関してはリアに会いたいと行動していたので、それに伴ってネアラもリアと食事をするなんてこともしていた。

 そんなわけで帰る頃に、リアは

 「帰りのルカの護衛ぐらいしてやれ。あいつもリアに家族旅行なのにあまり会えなくてさびしがってた」

 と、ギルドマスターに言われた。

 そんなわけで、帰りはルカと一緒にリアは帰ることになった。一緒に帰るとはいってももちろんリアはユニークスキルを行使してほとんどルカの目の前には現れないわけだが。

 それにルカは仕事仲間と一緒に船に乗っている。そんな前にリアが現れるはずもない。

 (……リア、どこかにいるのかしら。本当にあの子は家族旅行だっていうのに私の前に現れないで)

 ルカは風にあてられながら、そんなことを考える。

 自身の、義理の妹。《姿無き英雄》などと呼ばれる、最強の一角。普通とは違う、異質で、臆病な、ルカの義理の妹。

 (私は、《超越者》に至れるのかわからない。寧ろいたれない可能性が高い。お父さんは《超越者》で、ソラトは恐らく、《超越者》になれる。ネアラだって……お父さんが養子にするぐらいだからなれるかもしれない。私の家族は私以外が、長い時を生きる可能性が高い。だからこそ、家族としての思いで、沢山作りたいと思うのに。本当に……リアは、自由気ままなんだから)

 ルカはちゃんと自覚している。自分がギルドマスターの実の娘であるとはいっても、二十代前半でレベル六十を超えていようとも、彼女は自惚れない。いや、自分が強者であるなんていう自惚れなんて出来ない。

 それは、義理の妹がいるからだ。義理の妹の、リア・アルナスがあまりにも、異常で、あまりにも———天才であったから。リアは自分が天才であるなんて認めないだろう。だけれども、天才であると、ルカは思う。

 (努力する天才、そういえるでしょうね。強くなりたいという意志を一切曲げずに、自分を曲げないあの強い精神も、一種の才能。それでいてどれだけ強くなっても、あの歳で《超越者》に至っても、リアは自惚れたりなんてしない。もっと、もっと強くなりたいと常に行動している。それでいて、自分が強くなれないというあきらめがない。あきらめないこと、それも、才能よね)

 リア・アルナスのことを、ルカは様々な才能を持っている存在だと思っている。努力し続けること、強い精神、自惚れない強さ、諦めない心、言葉にすれば簡単なことだけれども、それを実際に実行できるものはそうはいない。

 ルカが自分はギルドマスターの娘だ、この年でレベル六十もあるなどと腐らずにいた要因にリアは大きくかかわっている。ルカが十六歳の時にギルドマスターの養子になったリア。リアは、ルカに大きな影響を与えている。今のルカを構成する大きな要因にリアはいる。

 (本当……リアが義理の妹になってくれてよかったわ。リアっていう天才を間近で見ていなければ私は嫌な大人になっていたかもしれない。それにソラトも、リアに会うまではぶすっとしていて、何事にも興味がなさそうな子供だったのに、リアに出会って本当に表情豊かになって……。まぁ、あの子はリアが関わらない時は相変わらず無表情だけど、それでもソラトにとって良い影響を与えたわ。お父さんだってリアが面白いから楽しそうだし、私も……リアみたいな面白い子が妹で、正体をひた隠しにしている《姿無き英雄》のことを自分が知っているという状況が面白いもの)

 ふふっと、一人、ルカは笑う。笑って、独り言のように、声を発する。

 「私は貴方が妹になって、本当に楽しいわ。貴方が、妹になってよかったわ。……貴方は、人前に出ることを嫌がっているのは知っているけど、それでも家族らしいことを、姉妹らしいことを……もっとしたいわ」

 誰もいないその場で、一人つぶやくルカ。誰かがその場で目撃していたら不自然な光景。だけど、ルカは確信している。きっとこの場にリアがいると。

 実際に、リアは、そこにいた。というより、ルカが感知できないだけでルカの真正面に《空中歩行》のスキルで立っていたりする。

 (……私も、義理の家族がルカ姉で良かったとは思っている。お義父さんも、ルカ姉も、私を理解したうえで、私を受け入れている。ネアラも、家族になって日は浅いけどそんなに悪い妹ではないし……。私も、家族は嫌いではない。でも家族らしいことねぇ、一応家族旅行なんだけど、これ。あ、でも私ほぼ単独行動だから家族旅行ではないか。もう少しルカ姉のところに顔出すようにするか。あと、ルカ姉が部屋戻ったら会いにくらいいってあげるか)

 そんなことを考えているリアは、なんだかんだで家族に気を許しているのだった。



 船の客室に戻ったルカの元へ顔を出せば、リアは「やっぱり聞いていたのね」とにこにこしているルカに捕まって、しばらく会話を交わすことになるのであった。





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