イルイッセッチ大陸へ!
友人である《ホワイトドラゴン》のルーンと一緒に殺し合い(遊び)をした翌日リアはイルイッセッチ大陸に向かうためにスキルを行使していた。ゲンに「普通に船に乗っていけばいいのに」といわれたものの、リアとしてみれば船に乗らずにスキルを行使して海を渡った方がレベル上げになるし、船に乗る気はなかった。
リアは自分がどこかに出かけているとか、何をしているとか、そういう小さな情報でも人に知られたくないと思っている。こそこそしながら誰にも悟られたりせずに生きていられればいいとリアは思っている。
と、そんな気持ちをゲンに告げた所、「……本当にそこまでする意味がわからん」と呆れられたがリアはそれでも呆れられようが、自分の道を行くのである。
とはいえ、ゲンと共に依頼を受ける事になっているので《竜雷》ゲンが乗っている船と同じスピードで移動している。そのため時々、船の上でリアは休んだりしながらの移動である。リアとしてみればさっさと移動したかったが、ゲンはスキルを使って移動をしようと思っていないのでリアは合わせている。
リアが《何人もその存在を知りえない》というユニークスキルを使っていても、ゲンはリアがどこにいるかちゃんと知覚する。普通に話しかけてこられるわけで、リアとしてみればいつかゲンさんに悟られないぐらい強くなりたいとそんな思いにかられるのだ。
リアとゲンの間では、時々会話が交わされる。本当に二人っきりしかいない場でしか、リアは姿を現さない。
「リア、お前は……本当こそこそするのが好きだな」
「ん、当然、です」
「そんなにこそこそしているから《姿無き英雄》なんて呼ばれるんだぞ。いい加減、ギルド会議の場でぐらいちゃんと姿を現せばいいと思うんだが」
「やです。本当は、誰にも、知られたくなかった、です」
「《炎槍》はいつ、お前に会えるんだろうな」
「……一生、会わない、それ、理想」
「いや、会えよ」
と突っ込まれたけれど、リアは進んで会う気など全くないのであった。
船の旅の中で魔物が出ても、《竜雷》ゲンが居る事もあってリアは積極的に動くことはなかった。同じ船に乗っている存在たちは、この場に《姿無き英雄》がここにいるなんて想像もしていないだろう。知っているのはゲンだけだ。
ゲンは魔物が現れた時にもゲン任せなリアに出てくればいいのにという表情をしていたが、リアは素知らぬ顔をしていたのだった。
そして、そんな感じで船の旅を終えてイルイッセッチ大陸へと到着する。
「リア」
「ん、なんですか」
船から降りて、一人になったところでゲンが話しかければリアは姿を現した。
「……今から、ガオウストロにまずは向かうぞ」
「はい」
ゲンの言葉にリアは頷く。
「ルートなんだが」
とゲンはそういって地図を取り出して、どうやって獣人の国であるガオウストロに向かうかというのを説明する。ゲンは乗り物を乗り継いで向かう予定である。調教した魔物に馬車を引かせる馬車も存在し、それで向かう予定である。リアのように全て徒歩で向かう予定は特になかった。
というより、リアみたいに何からなにまで自分のスキルで、自分の足で向かう存在なんてそうはいない。
「ん、私、ついていきます」
「……乗らなくていいのか」
「問題なし、です。疲れたらMP回復薬、飲んだり、します」
「無理はするなよ?」
「はい」
そんな感じの会話がなされて、リアたちはガオウストロへ向かう事になった。
リアはゲンと一緒に馬車に乗るなんて嫌であった。そんな目立つ行為は絶対にしたくなかった。《ギルド最高ランク》と共に過ごしたなどという事実を残したくなかった。……自分も《ギルド最高ランク》のくせにである。
自分も《ギルド最高ランク》という本来なら目立つ存在であるというのに、《ギルド最高ランク》の存在と共に過ごしたくない、目立ちたくないという何処までもこそこそと生きたいと考えているリアであった。
(……本当に、リアは全然、乗り物つかわねぇな。話には聞いていたが、普通そんな事はしない。あれだけ常にスキルを使い続けているからこそ、これだけの結果を残して、あの歳で《ギルド最高ランク》になっている。俺も真似するべきか……、リアにも追い抜かれそうだしな)
馬車に乗りながら、すぐ近くを移動するリアの気配をゲンは感じる。リアの気配を感じながら、リアの事をゲンは考える。
(俺もうかうかしてられねぇな。それにしても、ティアルクと同じ年でこのレベルなんて本当、驚くべきことだ。……ティアルクの奴は、リアに瞬殺されて、もっと皮剥けるかと思ったが、そうはならなかったしな。そもそもあれか、普通の学生生活をしたい、友達が欲しいなんて浮ついた思いで学園生活を行って、現状への満足から抜け出せないのが、リアとの大きな違いか)
ティアルク・ルミアネスはゲンとルミの弟子である。ゲンはリアとの戦いから、ティアルクが成長する事を期待していた。やる気は出したようだが、それでも自分の強さへの不満がティアルクには足りない。強くなりたいという本気の思いが足りない、そんな風にゲンは感じた。
(……まぁ、あの歳でレベルがあれだけあれば満足するのも当たり前といえば当たり前か。リアはあれで満足なんてしていない。《超越者》に至っても強さを求め続けている。貪欲な強くなりたいという思いが、リアをあれだけ強くしている)
《竜雷》ゲンは、《姿無き英雄》リア・アルナスと自分の弟子ティアルク・ルミアネスの事を馬車の中で考え続けるのであった。




