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臆病少女は世界を暗躍す。  作者: 池中織奈


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色々予定があっても会いにいく。

 短い冬休み。

 その中で、リア・アルナスには予定が詰まっていた。

 一つは、ギルドマスターが行くぞといい始めた家族旅行。

 もう一つは、ギルド最高ランク保持者の《竜雷》に誘われた獣人の国のある大陸へと向かう事。

 しかし、それだけの日程が詰まっていたとしてもリアは冬休みに霊榠山の《ホワイトドラゴン》ルーンの元へと遊びに来ていた。

 ついてすぐに行ったのは、相変わらずの殺し合い(遊び)だ。

 リアは、どんどん強くなっている。ひとまずの目標に、友人であるルーンに勝つ事というのがリアにはある。何度も何度も戦っても、勝てない。だけれども自分は確かに強くなっていて、以前よりもルーンとの強さの距離が縮まっているとリアは実感する。負けても負けても、リア・アルナスの心は折れない。強くなりたいと願望の元に彼女は突き進んでいる。

 (また、勝てなかった。ルーンに勝てるようにいつなれるかな)

 リアは、実力差があろうともいつも勝つつもりでルーンに向かっていっている。勝てない、負けて当然だと思って向かっていっても意味がない。実力差があろうとも、勝利をつかめる事はある。あきらめなければ活路を見いだせる事もある。リアは、それを知っている。

 リアは、ルーンの巨大な体にもたれかかっている。霊榠山の《ホワイトドラゴン》に体を預けてのんびり出来る存在なんてリアぐらいだろう。

 「学園は、どうだ?」

 「んー。普通かなぁ。面白い観察対象はいるからちょくちょく見てはいるよ。授業は知らない事もあるし真面目に受けてる」

 「そうか。友人は作ったか?」

 「いや? 学園では私ずっと、のんびり一人で過ごしているよ。あ、でも……そうだね、昔の友人と久しぶりに会えたよ」

 「友人? リアにか?」

 「そう。ずっと昔の、私が今の私じゃなかった頃の友人」

 「あー……前に生まれる前の記憶がどうのこうの言っていたが、それか?」

 「そう。私の生まれる前の記憶って、夢でも私の妄想でもないんだよね。その頃の友人がこう、異世界からこちらの世界にやってきたみたいな、そんな感じ。この世界で生きていくって決めたみたいだから」

 昔、ルーンには「生まれる前の記憶あるんだー」と軽く言っていた事があった。ルーンは疑うでもなく、この世界は不思議に溢れているからそういうこともあるかと軽く受け入れていた。リアが転生者だと知っているのはルーンと、あとこの前教えたソラト、前世の知り合いのラウルぐらいである。狭い交友関係の中でも、別に前世の記憶があると告げても問題ないかなと思えたから、ルーンにもソラトにも告げたわけだ。

 「お前が友人というのは珍しいな。幼馴染の事も友人とは言わないだろう?」

 「幼馴染は幼馴染だからね。友人とは感覚が違うというか……別物?」

 リアはのんびりとそう答える。

 「その幼馴染も、リアの友人も機会があったら連れてこいよ。俺も気になるから」

 「んー、私は連れてくる気はないよ。足手まといはいらないし。自分でここまでこれるなら一緒にきてもいいけど。ソラトは……凄い来たがってるけど、レベルが、まだ低いから」

 《炎剣》などと呼ばれていて、《超越者》にはなっていないとはいえ、あの歳で二つ名もちなのは十分に強者であると言える。が、霊榠山の山頂まで来れるかどうかというと、それは難しい。

 「そいつは、いつかここにこれそうか?」

 「来れるんじゃないかな……少なくとも《超越者》にはなれると思う」

 寄りかかったまま、リアはそう答える。少なくともいつになるか分からないが、幼馴染として《超越者》になるだろうとは思っている。

 ルーンはリアの幼馴染のソラトの話を少しだけだがリアに聞いているので興味があるらしい。《ホワイトドラゴン》であるルーンにとっても友人という枠組みに入る相手は少ない。それに、種族が違う相手とこうして友人関係になるというのはルーンにとって滅多にない事であるといえるだろう。

 ルーンにとってもリアは数少ない友人であると言える。

 そんなリアの事をルーンは色々気にしていた。一応仮にも年頃の娘にも関わらず強くなる事にしか興味がなく、人の世にほぼ無縁な生活を送っているルーンからしてみても異質な少女。異質で、他と感覚が違うからこそ、この年で《超越者》となり得た長い付き合いになるであろう少女。

 「そうか」

 ルーンはそう答えながらもリアに《超越者》の人の知り合いがこれからも増えそうな事に安堵する。

 「あと、義妹になった子ももしかしたら……時間はかかるだろうけど《超越者》にはいつかなれるかも」

 「……姉の方はどうだ?」

 「ルカ姉は……わかんないかな」

 《超越者》になった存在は、《超越者》に至らなかった存在においていかれる。同じ種族だったとしても、先に儚くなっていく。《超越者》に至らなかった存在が寿命を全うしてもリア・アルナスはきっと今の姿のままだ。

 「まぁ、百年とか先に私が生きてても、ルーンはきっと生きているし、ソラトも《超越者》にはなっているだろうし、ラウルは……既に《超越者》に至っているし、私の環境も生き方もきっとほとんど変わらない」

 「……その頃には、流石に《姿無き英雄》だとばれているのではないか?」

 「その頃も、ばれずにのんびり過ごしたい……」

 リアは、将来もほぼ変わらないと口にする。数少ない交友関係はほぼ変わらない。そういったリアにルーンが言えば、リアはそんな願望を口にするのであった。



 それからしばらくして、また殺し合い(遊び)を行い、その日にリアは霊榠山を下りた。





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