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Cover note.7
あれから。
私は定期的に大木のある広場へと足を運んでいる。
それは彼に会えるかもしれない、という淡い期待を抱いているのも
ほんの少しだけあるが、本当の理由はそこにはない。
ここは私の"はじまり"なのだ。
そしてこれは"はじまりの木"ではなく"はじまりの本"。
とても大切なもの。
だから私はここに来る。
大切なものを確認するため。
遼くん、聞こえますか。
私はもう25歳になりました。
もう子供もいるんですよ。
元気なお母さん、しています。
あなたみたいな素敵な笑顔、作れるようになれましたよ。
そちらはどうですか。
ちゃんとご飯、食べてますか。
そっちの世界はどうなのかは知らないけれど、
またいつでもこちらにきてね。
歓迎するよ。
君の大好きなからあげ、作ってる待ってるから。
またいつか、会おうね。
ばいばい。
私は顔の横で手を少しだけ振り、
踵を返して子供の手を引き連れてその場を後にした。
季節は春。
そよ風に靡く大木は
まるで遼くんが元気に返事をしているかのようだった。
読んでいただきありがとうございました。
本が描くストーリー。
二人の間にはいつまでも本という絆でつながっています。