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Cover note  作者: リスト
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Cover note.4

「あたし、ひいらぎみなと!」

「ぼくはさかきりょう!よろしくね!」


とある本屋で元気な挨拶を交わす光景が見える。

まだ小学1・2年生と言ったところだろうか。

しかも、女の子は私に似ている。


「あ、みてみて!このほん、かっこいいよ!」

「うわっ、ほんとだあっ」


無邪気に本に夢中になって。

一体何の本だろう。


「んーと、んー・・・」

「なんて読むの?」

「わかんない!でも、ふたつでひとつってかいてる」

「ほんとだっ、ふたつでひとつってへんなほん」


あの本って・・・

私がさっきもらったばかりの・・・


そして一転してフラッシュバック。

世界は夕日を背負い、舞台は見覚えのある広場へと移された。

ベンチには子供が二人、小さな手には少し大きい本を抱えて座っていた。


「みなとちゃん!またあえたらぜったいあそぼうね!やくそく、わすれないでね!」

「うん、うん、ぜったいわすれないっ!ほんも、まいにちみるからっ」


女の子は泣きじゃくっている。

男の子も必死に涙を堪えているみたいだ。

そして二人はベンチを離れ、

男の子は右へ、女の子は左へと歩みはじめた。

広場には少しの温もりと反響する二つの子供の声が響いていた。


また一転して今度は暗闇の世界。

視点は車の中。

外は雨降り模様でワイパーが働いている。

どうやら家族で外食にでも出かけているらしい。

父親が運転をして、母親は助手席に、そして女の子は後部座席に。

すると前方から眩いばかりの光が飛び込んできた。

そして。


キィィィィィィィッ!!

ガシャンッ!!


一転。

比喩ではなく。

車は対向車線と正面衝突をなし、そのままひっくり返ってしまった。

双方の車とも無事ではない。

フロントガラスは無残にも割れ、ボンネットは原型をとどめていない。


外から叫び声や助けを呼ぶ声が聞こえてくる。

女の子は意識が遠のき、世界は閉じられてしまった。



目を開くとそこには天井があった。

白い壁。

見たことのない部屋。

そして隣にはおばあちゃん。


「ああっ!先生!先生っ!ミナトちゃんがっ!ミナトちゃんが目を!」


おばあちゃんは顔をくしゃくしゃにして

涙を浮かべて先生と呼ばれる人を呼ぶ。

そんなに叫ばなくてもいいのに。

と、当時の私は思ったのだろうか。


―――そう、これは私。

紛れもない私の記憶。

今まで明かされることのなかった、記憶の欠片。


「ショックによる記憶喪失かと見受けられます」

「記憶喪失っ・・・・・・・先生、それは治るんでしょうか・・・?」

「いえ、治すのは困難だと思われます。しかしミナトちゃんの場合、失われた記憶は事故以前半年くらいの記憶なので、むしろ幼いミナトちゃんにとっては幸いなのかもしれません」


記憶喪失。

だからこのことを私は知らなかった。

両親は事故死だとおばあちゃんから聞かされていた。

たしかに事故死だった。

でも、まさか私も乗っていただなんて・・・



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