鬼畜人間、エルフのために死ぬ(完結)
「どうして死んでしまったんですか」
「鬼畜さん……」
とん。
エルフは手を土に置いた。
こんもりとした、小さな墓。
「わたしたち、死なないんですよ」
「妖精さんは、死なないんです」
「そんなこと、知っていたはずなのに」
「鬼畜さん、あんなに窓辺で」
「色んな設定集」
「何度も読んでたくせに」
風が吹く。
涙が落ちる。
影に咲く、リンドウの青い花に、しずくが伝った。
(わたしたち、人間の)
(行ける世界には、いけないの)
ふらりと立つ。
長い髪が、そよいだ。
「……どうしても、ダメならば」
「このままあちらに、行ってしまおう」
「この洞穴の、地の果てへ」
「あなたのいない、この世界では」
「わたしの生きる、意味はない」
ぎいいい。
どん。
開いた。
「おいっ、閉めるな」
「限定盤ジャケット、見つからないじゃないか」
「ほこらの奥に、それはあるのか?エルフはそこに、埋めがちなのか?」
「湿気対策はしてあるんだろうな」
振り向いた。
気配がする。
あの人だ。
ーー鬼畜の、優しく、変な人間。
「……どうした。驚いた顔をして」
「発光してるぞ。蛍じゃないか」
「光ディスクだ」
「オレが死ぬ?なんで」
「死ぬわけがない。このオレが」
「さあ、出てこい。エリリン」
「掴まれ」
赤い実のなる、ヤマボウシ。
「……帰るぞ」
「フィギュアみたいな顔して、もったいない」
離れない、手。
「はいっ。わかりましたよ。わたしの鬼畜のーー」
「人間さん」
天の岩戸は閉まり、
木々のざわめきは、遠く、空までとどいていった。
【おしまい】




