些細なトラブル
「戻って来たは良いものの……視線が痛いな?」
ダンジョンから帰ってきた俺は何故か周囲のプレイヤーにジロジロと覗き見られている。
その原因は当然この格好にあるだろう。
こんな序盤でもう良さそうな装備来てる奴居たら、嫌でも注目を集めてしまうものだ。
何なら初日駆け抜け勢最大のデメリットはこれと言っても過言ではない。
「そういや階級上げたら様々な援助を受けられるようになるとか何とか……集会所行ってみるか」
流石に階級上げて何も無いって事はあり得ないだろう。
そうじゃなきゃ上げる意味が無い。
「……何だ? 騒がしいな」
どうやら受付の方で騒ぎが起きてるらしく、周囲のプレイヤーも凄く迷惑そうに覗き込んでる。
「困ったな……報酬貰いに来たのに」
この様子だと、この騒ぎが収まらない限りランク報酬は貰えないだろう。
「へいお前ら、一体何騒ぎ立ててんだ。こっち後ろつっかえてんだわ」
見た所、紫髪のプレイヤー――――
”BAN”を筆頭に複数のプレイヤーを大勢連れて一人のプレイヤーに寄って集って詰めている様子だった。
何かをやらかしたのか、それとも冤罪か――――
どちらにせよ俺には関係無いが、この場を収める為には争いの内容を聞かねばならない。
「これはこれは、すんませんねぇ。この方がうちのパーティに、えらい数のモンスター連れて来はりましてね」
MPK――――
要するに、モンスターを大量に誘き寄せてプレイヤーを殺すやり方だ。
普通ならBANとその一行を擁護すべき何だろうが……。
「それでまぁ……どういう経緯なんやろ思いまして、ちょっと事情を聞かせてもろてるだけなんですわ」
容疑者は”寿司打”と呼ばれたプレイヤーだった。
寿司打は必死に自分の無実を証明しようとしているが、その努力虚しく周囲の目線は冷たい。
「何かの間違いだ! 俺は近くに居ただけで――――」
「“近くに居ただけ”、ですか」
BANは軽く肩をすくめた。
「いやまぁ、その言い分も分からんでもないんですけどね。ただ……それで皆が納得するか言うたら、なかなか難しい話でして」
そして、周囲をぐるりと見回す。
「ここに居る人ら、だいたい事情見てはりますし。証人いう意味では、まぁ……十分ちゃいます?」
物腰は柔らかいが、冷酷にも逃げ道は用意していない。
「せやからまぁ……今のうちに正直に話しといた方が、お互い楽やと思うんですけどねぇ」
俺は事の発端を見てないから、この件については何も言えない。
だが真偽はどうあれ、この雰囲気は好きじゃないな。
「おい、お前。BANで良いんだな?」
「……ええ、そうですけど」
「もう一度言う。後ろがつっかえてるんだ。場所を変えるか解散してくれ」
沈黙が流れる。
立場なんざ知った事じゃない。
単純にゲームの邪魔をされては困るんだ。
「――――そう言われたら、流石に敵いませんわ」
BANは少しの間こちらを見つめた後、くすりと笑った。
「皆さん、今日はこの辺にしときましょうか。場所変えて、ゆっくり話聞かせてもらいましょ」
多少の言い合いは覚悟していたが、意外なほどあっさり引いた。
だがこの場合は――――
「赤月さん……」
BANは立ち去り際、振り返る。
「またどこかでお会いすることもありそうですねぇ」
柔らかい笑みだったが、目は笑っていなかった。
――――目、付けられたな。
こういう腹を探る相手は疲れるよ。
さっさと向かってきてくれた方が気が楽だと言うのに。
「あの、階級が上がれば様々な援助を受けられるようになると聞いたんですけど」
「……は、はい。では確認致しますね」
あんな騒ぎを起こしたから受付の人もビビってるよ……。
一体どれだけ重い空気流れてたんだ。
「確認出来ました。赤月様はランク10になられました。まずは達成報酬として500HG、低級体力回復ポーション5個、低級魔力回復ポーション5個を支給します」
回復ポーションの支給は有難い。
お金は既に1000HG超えてる程持ってるから、今更500HGを貰っても感動は薄い……いや嬉しいんだけどな。
「次に受けられる依頼の質が上昇します」
今までは雑魚の討伐やら採取やら簡単な依頼しか無かったからな……もう少し難しい依頼じゃないと、やりごたえが無くてゲームをプレイしてる感が薄い。
「最後に市場の機能が解放されます」
「市場? 物を買ったり売ったり出来る場所か?」
「簡単に言えばそうです。ですが他のお店とは違い、完全にプレイヤーが主導となって経済を回せるんです」
探索で集めた遺物などを出品する事も出来るし、その遺物を他のプレイヤーが買うなんて事も出来る訳だ。
[市場機能が追加されました]
市場にはアイテム欄と同じUI操作で行けるみたいで、現状の出品状況や価格の変動など細かく見る事が出来る。
適当に使わなくなった黒羽のダガーを200HGで出品してみた。
「階級報酬は以上です」
「ありがとう」
心優しい方が黒羽のダガーを買ってくれる事を祈って、ひとまずはログアウトする事にした。
明日は『カラカラ荒野』をもっと探索してみても良いかもしれない。
◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆
名前 赤月
階級 ランク10
所持金 2290HG
武器 血酸嘴砲【血腐食霧】
武器 腐王鴉の嘴短剣【腐王吸命】
防具 血羽の屍外套【死肉伝播】
装飾 腐王鴉の眼核【死肉の王眼】
装飾 なし
装飾 なし
ステータス
体力 60
魔力 40
攻撃力 30
防御力 20
自動魔力回復 1秒毎1
状態異常命中 +30%
状態異常耐性 +40%
◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆




