血肉を喰らう者、降臨
[血染め鴉を倒しました]
[50HGを入手しました]
[ランク8になりました]
「どうしたどうした! もっと俺を楽しませろ!」
血酸嘴砲の威力たるや、血染めの鴉が2発で消し飛ぶ様子を見てると爽快感があって気持ちが良い。
ただ魔力の消費が激しいのがネックだ。
最大魔力が30に対して、一発撃つのに5も魔力を持っていかれてしまう。
それ故に【捕食葬送】で魔力を回復しなければならない。
「街で魔力ポーション買っとくべきだったかな」
きっと街に行ったら回復させる為のポーションが売られていたのかもしれない。
だが俺はそんな事を気にせずに飛び出してきた為、回復手段を【捕食葬送】に頼るしかないのだ。
「これは……上り坂か?」
今居る場所は腐れ穴鴉の地下1階。
とすれば、この上はダンジョンの1階に繋がっているに違いない。
一体どこまで続くのかは分からないが、序盤のダンジョンをそこまで長く続けさせるとは思えない。
「――――殺気!」
ふと上り坂の奥から殺気を感じた。
渓谷で感じたのと同じような感覚。
「居るな……ボスが」
これは確信だ。
この先にダンジョンが構えている。
初めてのボス戦、どうせなら初見討伐を果たしたい。
「体力良し、魔力良し、武器良し、防具良し……行くか」
一歩、また一歩と坂を登る。
殺気が一層深くなったのを感じる。
カァカァと喧騒が耳元を支配し、先には光が漏れ出す。
『腐れ鴉穴(1F)』
「「「カァ! カァ! カァ!」」」
そこは広大なドームだった。
周囲には赤と黒の鴉が声を上げ、挑戦者を歓迎する。
その中央に鎮座するは、空を覆い尽くさんと巨大な体躯を持つ大鳥であった。
「カァ……!」
大鳥はゆっくりと首を動かし、俺を見下ろした。
濁った黄金色の瞳により、重厚な殺気が放たれる。
翼がゆっくりと広がった。
ドームの天井を覆い尽くす血色の翼が広がった。
その羽がばたく度に赤い羽が舞い、腐臭が空間を満たす。
[ダンジョンボスを発見しました]
[血翼の腐王鴉 グラウ=レイヴン]
「……へぇ」
思わず笑みが零れる。
俺は血酸嘴砲を構えた。
「狩られる側がどっちか、教えてやるよ!」
俺がそう宣告した瞬間、血酸嘴砲から酸弾が放たれる。
酸弾がグラウ=レイヴンに当たり、腐食と出血によって身体を蝕む。
だがグラウ=レイヴンは気にする素振りすら見せず、口から紫色の毒酸弾を放った。
「一体どこに撃って……そういう事か!」
その毒酸弾は非常に遅い弾だ。
だがその真髄は着弾地点に毒酸を残す事。
足場を制限させ、獲物を追い詰める戦い方だ。
「させるか!」
再度グラウ=レイヴンが毒酸弾を発射する瞬間、俺は殺気を放つ瞳に向かって酸弾を放った。
グラウ=レイヴンは大きく仰け反ったが、翼から深紅の羽が飛び出してきた。
「……っ! 出血か!」
出血は状態異常を補助する為の状態だ。
となれば、尚更あの毒酸弾に当たる訳には行かない。
ガキンッ!
「もう当たるかよ!」
俺は飛来する深紅の羽を黒羽のダガーで弾く。
ドームの壁面を蹴り、地面を滑るように駆ける。
縦横無尽に駆け回り、酸弾を発射する手を止めない。
【血腐食霧】と【死肉伝播】の合わせ技。
これにより、多くのダメージを与えるに至る。
「「「カァ! カァ! カァ!」」」
それを見た周囲の観客は焦ったのかドームの中に乱入し始める。
啄み鴉、血塗れ鴉、そして血将鴉までもが俺に向かって攻撃を始めた。
「言っとくが烏合の衆だぞ」
俺は鴉の大群の中に酸弾を打ち込んだ。
腐食は霧状に散布し、互いが溶け合う惨状を引き起こす。
そして、その影響はグラウ=レイヴンにも届く。
「カァ?!」
奴は知らないだろう。
【死肉伝播】は状態異常の者が倒されると周囲に拡散する事を。
「【捕食葬送】ッ!」
黒羽のダガーの【捕食葬送】により一体ずつ雑魚を処理。
それと同時に体力回復と魔力を回復させる。
「はっは! 必勝法が生まれちまったぜ!」
俺にとって、鴉共は回復ポーションと同義よ。
回復した魔力を血酸嘴砲の魔力として使い、消費した魔力は鴉を攻撃して回復する。
グラウ=レイヴンよ、いつまで耐えられるか見物だな。
「カァァァァァァァァァッ!!!!」
「……何だ?!」
突如、ドーム全体が震えた。
グラウ=レイヴンの巨体が大きく仰け反り、天井を揺らすほどの絶叫を放つ。
その声は怒り――――
否、飢えた怪物の咆哮のようだった。
次の瞬間、周囲の鴉の身体がガタガタと震え始めた。
「……おいおい」
思わず声が漏れる。
鴉達が、吸い寄せられている。
全ての観客がグラウ=レイヴンによって捕食された。
骨が砕ける音、肉が潰れる音、湿った音を掻き鳴らしながら、更に禍々しい姿へと変貌していく。
「カァ……!」
片翼の赤い羽が、ボキボキと不気味な音を立てて折れた。
代わりに突き出したのは――――
無数の骨で構成された翼。
肋骨に、指骨に、脊椎。
それらが歪な形で組み上がり、巨大な骨翼となって広がっていく。
もう片方の翼は変わらぬ血に濡れた深紅の羽。
だがその羽の隙間から、腐肉が鎧のように盛り上がる。
身体中に張り付いた死体が、まるで生きているかのように蠢いていた。
[第二形態へ移行]
「カァァァァァァ!!!!」
骨翼と血翼が同時に広がった。
さっきまでの巨体が、今では死体の山そのものに見えた。
腐肉が鎧となり、骨が翼となり、酸が血となる。
まさしく、死肉の王と形容するに相応しい。
「第二ラウンドって訳だ」
気付けばニヤリと笑みが零れていた。
血酸嘴砲を構え直し、怪物と目が合う。
「上等!」
俺は地面を蹴った。
ボスには第二形態が付き物なのだ……え、そんな事無い?
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名前 赤月
階級 ランク8
所持金 790HG
武器 血酸嘴砲【血腐食霧】
武器 黒羽のダガー【捕食葬送】
防具 血羽の屍外套【死肉伝播】
装飾 なし
装飾 なし
装飾 なし
ステータス
体力 50
魔力 30
攻撃力 30
防御力 20
状態異常耐性 +40%
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