第三声、鼻水の臭いと共に
「数日ぶりだな有名人よ」
「その有名人を連れてきてるんだぞ、他の店にしろ」
温かな春風と共に花粉が鼻孔をくすぐる。
ここは『花園喫茶店』と呼ばれる場所であり、文字通り派手に飾り付けされた花が印象的な喫茶店だ。
地元じゃ知る人ぞ知る名店らしく、客の往来が少ないながらもコアなファンが度々来るのだとか。
俺は普段こういう場所には来ない。
何故かと聞かれれば――――
「この際だからはっきり言うぞ、俺は花粉症だ。花粉症にはこの店キツイんだよ。何でこの店なんだ」
俺はティッシュを手に取ろうとするも、ここで鼻をかんでしまえば他の人の迷惑となる音を響かせるだろう。
つまり、花粉症の俺には地獄みたいな場所だ。
「私の行き付けの店なんだ。静かな空間、花の香り、この雰囲気が好きでね」
「そうなのか。俺は嫌いだが」
静かな空間も、花の香りも、俺は感じ取る事が出来ない。
だって目がかゆくて見えないし、鼻水の洪水で香りが通らないからな。
「前置きはここまでにして……蓮、やっと私の追いかけているプレイヤーの名前が判明したぞ」
「やっとか。長いような短いような」
「その者のプレイヤーネームは”万事屋”だ。情報によれば、『セイレーン社』所属の者らしい」
万事屋ねぇ……ぶっちゃけ、目の前の野郎と殴り合ってくれるなら助かるんだよな。
逆にこの「クソみたいな店」に毎度連れ込むこの輩をボコしてくれないかな。
「数日後には公式イベントあるんだろ、そこでボコせば良いじゃねぇか」
「ほう、ボコしてくれるのか」
「……やっぱ、俺がやんないと駄目?」
こいつに粘着される万事屋も可哀想だな。
……いや逆にここまでキレさせた万事屋も悪いか?
「そういや聞いてなかったんだが、何でそんな万事屋にキレてるんだ?」
「……Relics Onlineとは別のゲームの話になる。私はそのゲーム内のイベントで優勝を果たした時、彼がその優勝商品を強奪したのだ」
「――――あ〜そりゃ、やっちゃ行けない行動だな。つーか、そのこのゲーム運営大丈夫かよ」
「そのゲーム運営はポンコツだったからな。全てが有耶無耶になった」
まだ運営が育ちきっていない時にやられた荒業。
――――荒業というより、悪質なズルだが。
「しかも、その優勝商品は私が喉から手が出る程欲しかったものだったんだ」
「あぁ、十分納得した」
となると、今回でもやってくる可能性高いか?
もし優勝した後も警戒を怠らないようにしなければ。
「分かった。俺がきっちり仕留めてやる」
「有難い。では、イベントでまた――――」
「あ、ちょっと待った。奢りだよな?」
「………………………………奢りだ」
「何で毎回渋るんだお前は」
その後、ちゃんと奢って貰った。
声色は凄く嫌そうだった。
これにて、第二章終了でございます!
ここまでご覧下さった皆さん、誠にありがとうございました!
第三章はイベント回ですので是非楽しんで!
(最初の数話は日常回挟みます)




