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忌み姫は孤高の鬼王に愛される  作者: 藍凪みいろ
第二章 鬼の国の王と人の姫君
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第8話 新婚旅行【中編】


 私と永和様が宿屋の中へと入るなり、白い割烹着に後ろで一つに束ねた黒髪に目尻の笑い皺まで優しさに満ちている頭に鬼の角がある鬼人の女将であろう方が「いらっしゃいませ、ようこそお越しくださいました」と丁寧に迎えてくれた。


「予約している永和という者だ」

「永和様ですね。お部屋までご案内致します。こちらです」


 女将であろう女性は永和様と私にそう言い、部屋までの案内の為、広々とした宿屋の玄関から続いている廊下を歩き出した。


「何処からいらっしゃったのですか?」


 女将の女性は客室の部屋へと繋がる廊下を歩きながら、後ろを歩く永和と美月に話しかける。


「鬼の国の王都からだ」

「まあ、そうなのですね。この宿屋から少し歩いた所に商店街があるので、そちらも良かったら行ってみてくださいな。色々、名物がありますので」

「そうなんですね」


 女将の言葉に私は後で永和様と行こうと心の中で呟いた。



「お部屋はこちらです。では、ごゆっくりお過ごし下さいませ」


 女将は私と永和様を客室の部屋の前へと案内し終え、軽く会釈をしてから立ち去って行く。


 女将が立ち去った後、永和様は手に持っていた鍵で部屋のドアを開けた。


「先に入ってくれ」

「はい、ありがとうございます」


 私は永和様が開けてくれたドアから部屋の中へと足を踏み入れると、畳の香りがふわりと鼻をくすぐった。


 窓の近くにある障子越しから柔らかな日の光が部屋に差し込み、木の温もりに包まれた和室が目の前に広がっていた。


「とても素敵なお部屋ですね。落ち着きます」

「ああ、そうだな」


 永和様は部屋のドアを閉めて、部屋へと入るなり、穏やかな声で返してくれた。


「今日はゆっくりしよう。観光は明日でもいいか?」

「そうですね、明日で大丈夫ですよ」


         ❀❀❀


 その日の夜。  

 部屋に運ばれてきた夕食を食べながら私と永和様は明日のことについて話していた。


「明日なんだが、部屋に案内してくれた女将さんが言っていた商店街にでも行かないか?」

「行きたいです……!」

「それじゃ、明日は商店街とか、その辺の観光しよう」

「はい!」


 そう返事を返してから、ふと、私の目に、永和様の皿の端に寄せられた小さなものが映った。煮物のひとつ、ほろ苦いゴマ味噌和えの茄子だった。

「……永和様、茄子は最後に残してるんですか?」


 永和は少し顔を赤くして、箸先で茄子をつまみながら答えた。


「え、…… ああ、実は……あまり得意じゃなくてな……最後に食べようと思っていた」


 そんな永和様に私は微笑んで箸を進める。

 苦手なものをそっと最後に残す姿に、どこか可愛らしさを感じたからだ。

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