表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
忌み姫は孤高の鬼王に愛される  作者: 藍凪みいろ
第一章 鬼の国
2/22

第1話 出発の朝


 麗らかな昼過ぎ頃。

 私は王城の中庭を護衛であり、幼い頃からの付き合いで幼なじみでもある黒髪の青年。

 春日千明かすがちあきと共に歩いていた。


「姫さま、いよいよ明日、行ってしまわれるのですね……」

「ええ、こうして貴方と他愛のない会話をしたりすることも出来なくなると思うと寂しく感じるわ」

「そうですね、私も姫さまと同じ気持ちです」


 千明はそう言い寂しげな笑みを溢す。

 幼い頃から、ずっと護衛として私のことを守ってくれて、幼なじみとしては側にいてくれた。私の大切な人。


 私はそんな千明のことが好きだった。

 鬼の国の王の元に嫁ぐのはなく、ずっと隣に居てくれた幼なじみであり、私の護衛である千明の元に嫁ぎたかった。


 でも、それは叶うことはない。

 私はこの国の姫であるのだから。


「千明、これまで私のことを守ってくれて、側にいてくれてありがとう」


 隣にいる千明にそう伝えると、千明は真剣な眼差しで私のことを見てくる。


「はい、あの、姫さま。一つ約束して欲しいことがあるんですけど、いいですか?」

「ええ、何かしら?」

「何か辛いことや、逃げ出したくなるようなこと、寂しくなることがあったら、俺のことを思い出すことを約束して欲しく思います。俺は離れていても、姫さまの味方ですから」


 千明から言われた言葉に私は強く頷いた。


「ええ、約束するわ。ありがとう、千明」



 その夜。

 私は中々、寝付けず自室の部屋のベランダに出て、夜風に当たりながら星々が瞬く夜の空を見上げていた。


「綺麗な夜空ね」


 もう、凛蘭王国からこの夜空を見ることもできないのだなと思うと寂しい気持ちが湧き上がってくる。


 鬼の国である【神月かみつき】はどんな国なのだろうか。

 私は鬼の国で上手くやっていけるのだろうか?


 沢山の不安を抱えながら、私は星が瞬く夜空に背を向けて、部屋の中へと入ったのであった。



         ❀❀❀


 翌日の朝。

 私は陛下にお兄様。護衛の千明に見送られて、王城の正門に止まっていた馬車へと乗り込んだ。


 私が馬車へと乗り込んだのを御者の中年の男は確認し、数秒後、馬車はゆっくりと動き始めた。


 ガタン、ガタン、という馬車の車輪の音と共に私を乗せた馬車は王城の正門を潜り、王城を出た。


 私は振り返り、馬車の後ろの窓から見える陛下やお兄様。千明の姿を見つめる。

 徐々に遠くなっていく家族と大切な幼なじみの姿を自身の緑の瞳に映しながら、私は泣きそうになるのを堪えた。



 王城を出てから少し経った頃、私はようやく心の落ち着きを取り戻し、馬車の窓から見える空を見上げた。


「今日は曇りね……」


 空は薄暗く、今にも雨が降りそうである。

 私はそんな曇った空から目を背けた。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ