ポンニチ怪談 その78 ウラガネ節分
国民の代表の議員という立場でありながら、裏金をため込み証拠隠滅、だんまりで罪を逃れたジコウ党議員たち。だが、裏金問題を誤魔化すための集会で起きたのは…
いまだに寒さ厳しくも、日に日に日が長くなっているニホン国。首都では、政府与党、ジコウ党会館で、臨時党大会が開かれようとしていた。
「いやー、この時期に大会を開くとは、しかも極秘、やはりあの問題が…」
「ええ、やはりあのパーティー券購入などの裏金問題でしょう。もう金額関係なくほとんどの議員が手を染めてますし。特に故アベノ元総理のアベノ派…」
「ハギュウダンさん他、5人衆とかいろいろひどい話がリークされてますなあ。それで、今回の大会の取材陣も、ごくごく内輪といいますか、記者クラブの気心の知れた記者たちに絞っているそうですよ」
「やはり、あの人たちの処遇ですかねえ。まさか、私たちも何か処分があるんでしょうか。一千万円いくか、いかないか、なのに除名されるなんて」
「いや、そんなことしたら、ジコウ党の議員なんて地方ですらいなくなりますよ」
とヒソヒソ話をする議員たちだが
ドタン、バタン
という音に、壇上に目をやった。
そこには 5人の半裸の男性が横たわっていた。全身傷だらけ、頭にはなにやら紙でできたような被り物をしている。
「なんですかあれ。…あの頭に体型…まさか、ハギュウダンさん!!」
「サヨクとか活動家のらんぼうか!!」
「一体、警備は何を」
と驚く議員たち。不意にスピーカーから声が流れた。
“ニホン国に徒なす、悪い悪い鬼を退治しましょう!”
“この者たちはニホン国の民の代表と偽り、民から金を搾り取る鬼どもです。石をもって追い出しましょう”
“パーティー券だのと称して汚い金を集め、こっそり隠し、民をダマし、そのうえ政党助成金などの民の金をかすめ取る鬼どもは退治しましょう”
「なんだ!一体、今日は党大会じゃないのか!」
「ああ!!パンツ・タカギギさん!いつの間にそんな格好に!」
「オオイズミさんこそ、なんで下着姿なんですか!!」
と見回すといつの間にか、下着姿にされている議員たち。女性議員もあられもない姿たになっているが、誰もこの状況にとまどい、怯えるものさえいた。
「ど、どういうことなんだ、裏金をつくったからってこんな、誰がこんな」
「や、野党やリベラルのいやがらせか、それにしては、手が込んでいる。いや、だいたいどうして一瞬にしてみなこんな姿に、まるで…」
ハッとした顔でガタガタ震えだすパンツ・タカギギ。
「どうしたんですか、パンツ・タカギギさん。暖房が効いているとはいえさすがにこの格好では」
「いや、さ、寒いんじゃない…こ、怖いんだ、まさか、まさか、本当に…いや、そんな」
“お前たちはニホン国に巣食う悪い鬼!!国民の富をくらう鬼は外に追い出さなければ!!”
“石をもって追い出せ、このニホン国から”
バラバラと上からイシツブテのようなものが降ってきた。
「ぎゃあああ」
「なによこれええ、い、痛―い」
「ぎょえええ」
と叫びながら逃げ回るジコウ党議員たち。記者クラブの記者たちもよけようと走り回っている。激しくふってくるイシツブテを避けようとしてぶつかり合い、転んでひっくりかえったり、打ち所が悪くて倒れたり、場内は大騒ぎ。
「ひいい、こ、こんな、こんなことが本当に…あの話はガセじゃなかったんだああ」
「パンツ・タカギギさん、それは一体」
「近所の爺さんが俺らが悪さするたびに鬼の話をしてたんだ、イテッ!!悪い子は鬼って思われて、追い出されるぞ、あの世にやられちゃうぞって、節分は悪いものを追い祓うものだって」
「ぼ、僕ら、ジコウ党議員が…悪いもの、ウ」
と脳天にコンクリートの大きな塊をくらい、オオイズミ議員は頭から崩れ落ちた。
“まだまだ足りぬ。この石の家ごと壊してしまえ”
“壊してしまえ、お前たちの汚い金で作った汚いものなど壊してしまえ”
声と同時に地面が大きく揺れ、ジコウ党会館は崩れ落ちた。
『臨時ニュースです!昨夜、首都のチンヨダ区で局所的大地震が起き、ジコウ党会館が全壊、ジコウ党議員他多数の死者がでました。会館内にいた人々はほぼ即死でしたが奇跡的に周辺の建物は無事、揺れもなく怪我人もなかったとのことです。地震計でも正確に感知できず、警察、消防などが原因を追究しています』
節分というのは疫病など、悪いものを祓うためのものらしいですが、別の意味でも悪いものを祓っていただきたいものですねえ。