表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

夏の終わり

作者: 今井玉木

 喫茶店でコーヒーを待つ間、隣席で談笑するご婦人達に耳をそばだてる。話は旅行計画、健康診断の結果、夏休みの子供達等々……月並みな話題を経て、なぜかヴィーガンの話題に。


 「〇〇さんトコのお家ヴィーガンに目覚めちゃって」


 「ご家族が代わりばんこに骨折だってさ、やっぱり動物性タンパク質を摂らないとね」


 「火葬したら油が足りなくって火が燻りそうね」


 最後の言葉が余りに悪魔的で、思わず笑いそうになって、堪える為に窓から空を見上げた。するとまだ18時にもならないのに空が暗くなり始めていて、夏の盛りに比べて随分と日が短くなっている事に、8月31日の今更ながら思い至った。


 程なくしてコーヒーが運ばれてきて、立ち上る湯気が火葬場の煙にも、在りし日の夏空に浮かぶ積雲にも思われて、しばらく変に意識してしまってその様をぼーっと眺めていた。


 不意に、今年も暑かった以外何も夏めいた事を感じずに夏を通り過ぎたと侘しい気持ちに襲われた。ご婦人達はとうにいなくなって、静かで薄暗い喫茶店で一人、夏の終わりを感じた。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[一言] ご婦人たちのお話のブラックさ……! ヴィーガンの話題というのが正にありえそうで、絶妙ですね。 湯気が色々なものに見えるというところが何だか好きです。 自分の心の持ちようで見える世界も変わるの…
[一言]  すごく好みです。読後感がなんともいいです。「ドカン!」と大きな事件などが無くても物語は完成しますね。  一文一文がしっかりしてて読んでいて心地よかったです。特にコーヒーの湯気→火葬場の連…
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ