表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
7/86

理由

この度は当方初投稿作『バッドボーイ&ロンリーウイッチ』を閲覧して頂きまして誠にありがとうございます。

この作品の作者の能村倅吉と申します。どうぞ宜しくお願いします。


この話は前話からの続きとなります。この話から読んでも展開が分からない場合がありますので、良ければ前話・前々話以前からもお読み頂ければ幸いです。


エピソードタイトルそのまんまの回です。

ひと捻り加えたタイトルを付けられる頭の回路が欲しいですね。


今回も読んで頂いた読者の皆様の心、精神、感情、センスといった部分の何らかの琴線に少しでも触れられれば幸甚と存じます。


拙い話ではありますが、それではどうぞお楽しみ下さいませ。

ゲームや漫画に登場するのと同じ性質の召喚というモノが平然と存在して、それを執り行う力を持っている魔法使いらしき人物が存在がする、地球とは違う別の惑星ウォーアム。


俺の前に立ち、さもあっけらかんとした顔を浮かべながら説明する少女によると、いま俺が置かれているこの状況は、俺のようなただの一般人の理解を遥かに超えた非日常的なことになっているらしかった。


俺は少女の口から出た言葉を一つ一つ思い出しながら、何とか自分の頭で理解して飲み込めるまで咀嚼していると、少女が俺を召喚したという台詞の根幹的な部分に引っ掛かりを覚えた。


「…って、待てよ。召喚って言葉の衝撃(インパクト)が強すぎて流しちまうトコだったけどよ、お前が俺をこのウォーアム…だったか?に召喚したんだよな?」


「うん、そうだよ!もう、すっごく大変だったんだよ?転移の召喚法術陣と一緒に探索の法術を同時に行使するなんて荒業が出来る人ってかなり少ないんだよー」


少女がどこか誇らしそうに自身が行った召喚の内容について宣った。その言葉から何かしら大変な工程を経て俺のことを召喚したってことは伝わったが、生憎と俺が知りたいのはそこじゃない。


目の前の少女のこういった質問の意図から一々外れた台詞や言動に俺のイラつきのゲージが刻々と溜まっていったが、流石に女子供に手を出すのは俺のポリシー的に憚られた。


地球で…いや、日本の地元でバカ共に絡まれた時と同じように、俺は眉間にしわを寄せてこめかみをピクつかせながらも、俺はギリギリのところでなんとか冷静さを保ちつつ少女に訊ねた。


「ンなこと聞いてねぇんだよ。で、何でだ?」


「え?」


「え?じゃねーよ。お前が俺を召喚した理由は何だって聞いてんだ」


俺の素朴で簡潔な質問に、それまで誇らしい態度だった少女が間抜けな声を出して再び惚けた顔を俺へと向ける。


引っ掛かった部分…それは、少女が俺を召喚の理由だ。魔法や召喚なんてモノとは一切無縁な一般的な人間の感覚として、召喚なんて大それたことを行ったからにはそれ相当の理由があるのだろう。


まさか手慰みや暇潰し感覚で召喚なんてしないと思うが…もしも、そんな下らない理由で人様のことを召喚したんだとしたら、俺は是が非でもこの世界から地球へと戻してもらう腹積もりで少女の言葉を待った。


すると、少女が一瞬ニヤリとした不敵な表情を浮かべると、生意気にも胸を張って腰に手を添えながら自信満々な笑顔を湛えて高らかに答えた。


「…ふっふーん、私が貴方を召喚した理由はねぇ…えへへ、貴方を私の弟子にするためだよー!おめでとー!」


「………ぁ?」


俺に向かって一人で賑々しく拍手をする少女の言葉に、俺は絶句に似た掠れた声をキュッと締まった喉の奥から絞り出すことしか出来なかった。


そんな俺を尻目に、少女は一旦拍手を止めて続けて口を開いた。


「実はね?私ってこう見えてもかなり優秀な魔導師…あっ、女性だから魔女だね。だからさ、貴方にも私の持ってる技術を初歩の初手の最初からちゃーんと優しく、分かり易いように丁寧に教えてあげるよー!やったねー♪」


その少女の天真爛漫な明るさを帯びた言葉を聞いた俺は、理解に苦しんでいた頭を瞬間的にフリーズさせ、ようやくその言葉の意味するところを理解すると手の平で額を押さえながら俯いた。


またしても「まどーし」とかいう俺の耳に聞き馴染みの無いワードが少女の口から出て来たが、俺はそれを一旦棚に上げ、先に留意すべき一点に思考を傾けた。


それは、この自信満々にふんぞり返っている少女が、俺をこのウォーアムとかいう異星に召喚した張本人であるということ…それも、自分の弟子にするためとかいう全く以て意味不明な理由でだ。


思った通りの下らない理由だった。こっちの予定や身の上を全く考慮しないそんな身勝手な理由でこんな異星に召喚されたとあっては、召喚された側の俺からすれば堪ったもんじゃない。


何より…最後に言い放った言葉尻の尻上がり気味な(テンション)が俺の逆鱗を刺激した。


俺は自分の中の苛立ちのボルテージが増加していくのをヒシヒシと感じながらも、なんとか寸でのところで爆発するのを抑え込みながら胸に溜まった空気を重々しく吐き出し、心に思った言葉をそのまま素直に少女に伝えた。


「………戻せ」


「…へ?」


「戻せ。地球に。今すぐ、戻せ」


目の前に立つ少女の姿を垂れた前髪の隙間から睨みつつ、俺は率直に思った言葉を地響きにも似た低い声と共に少女に投げかけた。


恐らく少女の方から俺のその睨む視線は見えていないのだろう、少女は俺が言った台詞に怯んだり怖がったりする様子も無く、俺の脅迫じみた言葉をただ一言だけ「イヤ!」と、にべもなく一蹴した。


そこから数分間の押し問答が続いた。俺が地球に戻せと言えば少女はイヤと答え、「絶対に弟子になってもらう!」と、まるで駄々をこねる子供のように声を荒げて頑として譲らなかった。


そして、そんな少女の言葉に、俺は真正面から「弟子になる気はない」と言い返す落としどころの決まらない虚しい堂々巡りが続き、俺はいい加減うんざりして来て本格的にイラつきが溜まり始めていた。


どうして俺がこんな意味不明なかったりぃことに巻き込まれなきゃならねぇんだ…こんな面倒なことに巻き込まれるぐらいならば、その辺のバカに絡まれて喧嘩して補導された方が万倍マシだと、今なら心の底からそう思えた。


「戻せ」と「イヤ」で構成された水掛け論のような会話の応酬がしばらく続いて、このままじゃ埒が明かないと思った俺は会話の切り口を変えてみることにした。


「チッ!かったりぃな…おい、召喚される奴は別に俺じゃなくてもいいんだろ?」


「えっ?そ、それは…そう、だけど…」


話の切り口を変えたのが功を奏したのか、少女がそれまで頑なに俺の言葉を断って強気に出ていた態度を崩してたじろいだ。


ここが好機だと思い、俺はそのまま畳みかけるように言葉を続けた。


「だろ?だったらよ、俺を地球に戻した後で、もう一回俺以外の誰かを召喚して、そいつを弟子にでも何でも好きにすりゃいいじゃねぇか」


「で、でも…」


「でも…じゃねぇよ。今ならまだ変な夢を見たってことにしておいてやるからさ、さっさと俺を地球に戻してくれ」


「だ、だけど…」


「だけど…でもねぇ。それとも、何か出来ねぇ理由でもあんのか?あ?」


「そっ、そそっ、そんな怖い顔で睨まないでよぉ…」


少女が泣きそうな表情をしながら後ろに半歩後退(あとずさ)る。どうやら要領を得ない会話が長く続いたせいで、俺のイラつきが許容量を少し超過して顔に漏れ出たらしい。


そんな俺に対して、少女はビクビクしながらもポツポツと宥めるようにゆっくりと俺の質問への回答を発した。


「あっ、あのね…?さっき私が言ったこと…貴方をこのウォーアムに召喚した時の話って覚えてるかな?」


「ぁん?俺を召喚した時の話っつーと…あー、転移がどうのこうのって時の話か?それが一体どうした」


「うん。えっと、私が貴方を召喚する時に転移の召喚法術陣と一緒に探索の法術を行使したって言ったでしょ?」


「…あー、そう言えばそんな意味の分からねぇこと言ってたな」


「でしょ?でね、私が探索の法術…召喚される人の条件を設定して探索したから、多分…って言うか、もう一度召喚しても絶対にまた貴方が召喚されると思うの…」


「召喚される人の条件だ?何だそりゃ、それに俺が引っ掛かったってのか?」


「うん。だから貴方がこうして召喚されたの…」


さっきまで声を上げて騒いでいた少女が、その小さな細っこい身体をよりシュンと小さくさせながら答えた。


その声にはどことなく覇気が無く、俺に対し何か後ろめたいことを隠しているのが手に取るように分かる仕草だった。


ここまで来たらどんな事実がこの少女の口から出ても驚かない自信があった俺は、この理不尽な召喚劇にキレて暴れ出しそうな本能を抑えながら話の続きを促した。

ここまで読んで下さり、本当にありがとうございます。


♪とかの記号をどう処理すればいいか分からず、ルビ振りで対応しました。

そもそも書くなって話ですが、人のテンションの上げ下げを描写しようとすると、私にはこうする以外に思いつきませんでした。精進します。


む・の・う♡、四流書き手♡、早く筆を折れ♪とお思いの方もいるのでしょうが、こういうのがお嫌いじゃなければ、また是非とも続きを読みに来て下さいませ。


また、誤字脱字、表記揺れ、設定の矛盾、感想等を頂けますと嬉しいです。

それと、ページ下部のいいねボタンや☆マークを押して頂けると私のテンションやモチベーション等が上がって創作の励みとなりますので、良ければきまぐれにでも押してやって下さい。


今後とも『バッドボーイ&ロンリーウイッチ』をよろしくお願いします。

12/9改稿。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ