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邂逅

この度は当方初投稿作『バッドボーイ&ロンリーウイッチ』を閲覧して頂きまして誠にありがとうございます。

この作品の作者の能村倅吉と申します。どうぞ宜しくお願いします。


この話は前話からの続きとなります。この話から読んでも展開が分からない場合がありますので、良ければ前話・前々話以前からもお読み頂ければ幸いです。


今回も読んで頂いた読者の皆様の心、精神、感情、センスといった部分の何らかの琴線に少しでも触れられれば幸甚と存じます。


拙い話ではありますが、それではどうぞお楽しみ下さいませ。

痩せた黄土色の大地に、橙と薄紫が彩る天空(そら)


降り注ぐ陽射しを浴びながら改めてこの超絶景を眺望しても、一体何がどうなって自分がこの場所にいるのか見当が付かなかった。


曖昧にぼやけていた記憶を浚って思い出した限り、いま自分が置かれている現状は記憶と全てが食い違っている。


夜にバイクで道を流していた最中、突如自分の身体に発生した奇妙な謎の白い光に気を取られて操縦を誤り、目の前に現れた路側帯を躱せず真正面から突っ込んで…そのまま夜の海へと身を投げ出したはずだ。


だというのに、俺の目の前に広がっているのは世界は夜でもなければ海でもなく、キレた陽射しが乾いた荒野に降っている、さっきまで俺がいた場所とは何もかもが違っている真逆の場所だった。


「な、なんだ…ここ?やっぱ死んだのか、俺…?」


誰に問うでもないボヤキが口をついて出る。せっかく運良く生き残れたとか思った矢先だってのに、こんな意味不明な状況に何の事前知識も無く急に投げ出されて、俺の頭は再び混乱に陥った。


果たして、いま自分は生きているのか…それとも既に死んでいるのかさえの判断も出来ないまま俺はその場で両足を組み替えて胡坐(あぐら)をかくと、この支離滅裂な状況と理解不能な現状に頭を悩ませた。


俯いて垂れた前髪を無造作に掻き上げ、知恵熱で火照る額を覆うように手を置く。


額はほんのりを通り越して発熱したように熱くなって、ロクに使われたことのない俺の頭は茹ったような熱さを持っていた。


「チッ…一体全体、何がどうなってやが…ぁん?」


ひたすらに俺の身体を覆うかったるさをボヤキにして溢したその時、俺の背後から石が崩れるようなガララっという乾いた音が遠巻きに聞こえた。


今の今までただでさえ物音らしいモノが一つもしなかったせいもあって、俺の耳はその音を鋭敏に捉え、かったるさで覆われていた意識を瞬時に切り替えさせた。


「……何だ…?」


気を張りながらゆっくりと背後を振り返る。振り返った先には、今まで眺めていた岩塊や枯れ木が点在する寂れた荒野が同じように広がっていた。


ここが死後の世界だろうが、何か別のドコか知らないが…夜の海に落ちたってのに気付けばこんな明るい荒涼とした場所にいるってのは明らかに異常だ。


少なくとも、俺が今までに得てきた知識が通用するような場所じゃないことだけは直感と肌で理解していた。そんな未知な場所では俺の行動の一挙手一投足…それに周囲の些細な変化や物事に警戒するに越したことはない。


「…何だ、誰かいんのか」


警戒と威嚇の意味を込め、普段の声よりも少しドスを利かせた声を出す。


すると、俺がいま腰を下ろしている場所から3メートルぐらい離れたところにある大岩の陰になっている部分に、この静止したような世界の中で初めて動きを見た。


岩の陰から恐る恐るといった感じで半身を出し、身体を捩って背後を見ている俺を警戒しながら窺っている人の影。


互いの距離が開いているせいでその人影の正体はハッキリとは分からなかったが、全身を黒く長いコートかローブのようなモノに身を包んでいる小柄な奴ってことがこの距離からでも判別出来た。


(何だ…?人、だよな…?それとも死神か何かか?)


正体不明の人影の存在に、俺はさらに心身に警戒の意識を強める。もしこの場所が死後の世界だと仮定するなら、岩陰に隠れながら俺の方を窺い見ているあの人影は死神って存在が妥当だと密かに思った。


当然それ以外の存在の可能性だって考えられるが…ともかく、現時点であの人影が友好的な存在か敵対的な存在なのか分からないが、こんな意味不明な世界で初めて遭遇した貴重な人型生命体であることは確かだ。


もし、あの人影が友好的な奴だった場合…これで言葉や意味も通じれば万々歳だ。


言葉が通じなかった場合でも、最終手段として身振り手振りを交えながらも何とかコミュニケーションを執り行うしかないだろう。


そして、逆にあの人影が敵対的な奴だった場合…こっちの方が遥かにかったるい。


喧嘩なんかしてる場合じゃないというのもあるが、もしも向こうが()る気ならば、俺もそれなりに抵抗をすることだって視野に入る。


一体何がどうなっているのか未だにさっぱり理解出来ていないこの現状において、無闇かつ軽率に行動した挙句、せっかく生き永らえた身をむざむざと危険に曝し、こうして意識があるのを水の泡にするのだけは避けたかった。


…もっとも、もう俺がとっくの前に死んでいるって可能性も、現段階で真っ向から否定出来る材料は何一つないが…取り敢えず今一番大事なのは俺の意識の問題だ。


警戒心が充満する頭の片隅でそんなことを考えていると、件の人影が大岩の陰からおずおずといった感じで歩み出てくるのが見えた。


どこかそわそわと不安そうに胸の下の辺りで組んだ手を(せわ)しなく動かし、一歩一歩確実にゆっくりとした足取りで俺の方に近付いてくる。


その足取りや気配からは、俺に対する敵意や殺意なんてモンは一切感じられない。


むしろ、その影の動きは弱々しい小動物が警戒しながらこっちに近付いて来るのを遠巻きに温く見守っているような感覚に近く、そんなどこかハラハラとした思いがその謎の人影の動向を警戒する俺の胸中に宿った。


そして、緩やかな歩みのまま俺へと近付く小柄な人影が、たっぷりと数分をかけてようやく胡坐をかいて座っている俺の前へと到着した。


頭部は黒いフードですっぽりと覆われて、地面の上に引き摺るまでに長いローブを着込んだ小柄な人物。何故か頭を俯かせているせいでその顔や表情は見えないが、フードの隙間からは長い金色の髪が風に(そよ)ぐ稲穂のように揺れているのが見えた。


改めてその目の前の人物を見直してもやはり小柄…というか、地べたに座っている俺から見てもかなり小さく感じる。


春先に学校で行われた身体測定で182cmを記録した俺が胡坐をかいて座ったまんま少し顔を上に向けるだけで、この未知なる人物の顔を正面から見ることが出来る。ならば、恐らくこの人物の背丈は130cm前後ぐらいだろうと推し測れた。


俺が静かにこの男とも女とも分からない人物の観察をしていると、目の前の人物がおもむろに自分の頭に被っていたフードの縁に手をかけてバサッと後ろへやると、そのフードに覆われていた顔を白日の下に晒し、俺にその全貌を露わにした。


(が、外国人の、子供…それも女…?)


目の前でフードを取り払った人物の顔を仰ぎ見ると、俺は目を丸くさせて驚いた。小柄な背丈から子供だろうとは考えていたが、それがまさか女の子だとは思わず、俺は意表を突かれて言葉を失った。


二重瞼のクリっとした二つの目と、顔の中心にスっと通った鼻筋。どこか愛おしい幼さを残す面影を持ちながらも、全体的に均整の取れた美麗な顔立ちをした絶世の美少女がそこに立っていた。


フードの中に仕舞われていた金紗のような細く長い金髪を頭を振って正し、白銀の中に星が散ったような深い色合いの瞳はこの少女の中で何かを決意したかのような強い意志と輝きに満ちている。


「………」


「………」


お互いに無言のまま、真剣な表情になった顔を見合わせる。


何とも言えない気まずく重苦しい鉛を背負ったかのような沈黙が俺達の間に流れ、まるで次の一手を読み合う剣豪同士の立ち合いに似た極限にまで張り詰めた気配が俺達の間に静かに下りていた。


別に俺の方から声をかけても良かったが、目の前に立つ金髪の少女から発せられる決意じみた気迫を汲み取った俺は向こうから先に声をかけてくるのを黙って待ち、この事の成り行きをひたすら見守ることにした。


すると、目の前で俯いていた少女が自らの服の袖口を手でギュッと掴むと、まるで意を決したかのように一回深く深呼吸して呼吸を整えた。


その姿を見た俺は次に少女がとる言動に注意を払って身体を正し、何が起こっても動じないように心を構えた。

ここまで読んで下さり、本当にありがとうございます。


一応、ヒロイン(?)との出会いのシーンでした。

女性の身体や顔立ちの描写は難しいと切に思っております。

改稿するために改めて読み直してますが、もっと出来たろ…と思えて止みません。


ヒロインがシュール過ぎる、もっと可愛く描写せーよ、これがお前の限界だよ…と思っていらっしゃる方も多いとは存じますが、ちょっとでも良いな、ほう…などと思って下さいましたらまた是非読みに来て下さい。


また、誤字脱字、表記揺れ、設定の矛盾、感想等を頂けますと嬉しいです。

それと、ページ下部のいいねボタンや☆マークを押して頂けると私のテンションやモチベーション等が上がって創作の励みとなりますので、良ければきまぐれにでも押してやって下さい。


今後とも『バッドボーイ&ロンリーウイッチ』をよろしくお願いします。

12/8改稿。

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