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宵空

この度は当方初投稿作『バッドボーイ&ロンリーウイッチ』を閲覧して頂きまして誠にありがとうございます。

この作品の作者の能村倅吉と申します。どうぞ宜しくお願いします。


この話は前話からの続きとなります。この話から読んでも展開が分からない場合がありますので、良ければ前話・前々話以前からもお読み頂ければ幸いです。


自分の思考や設定を文章にするのは難しいですね。


今回も読んで頂いた読者の皆様の心、精神、感情、センスといった部分の何らかの琴線に少しでも触れられれば幸甚と存じます。


拙い話ではありますが、それではどうぞお楽しみ下さいませ。

―――森の中に踏み入ってからどのぐらい経っただろうか。


俺は腕時計なんて小洒落たモノは持っちゃいないし、普段時間を確認するためにも使っていた携帯はこのウォーアムに召喚された時に海に落として無くしたらしく、今の俺には時間を把握することすら不可能だった。


ただ、俺の体感ではもう彼是一時間近くはこの薄暗い森の只中を椅子の材料となる木材採取のために彷徨っている気がしている。


森全体に漂う(たお)やかな湿気と、歩き回って出た汗が混ざり合い、額から頬を伝って顎先から滴り落ちてるのがその証拠だ。


いくら師弟ごっこの最初の作業とはいえ、材料となる樹木がなかなか見つからない苛立ちと、未だに活躍の場の無い手に持って肩に担いだ斧のズシッとした重さに、俺はいよいよ本格的にかったるくなって来ていた。


「…なぁ、そろそろ…」


「あっ!アギトアギトー!あれあれ!あの木はどうかなー?」


我慢と面倒を乗せた天秤が面倒側に傾いて、先を歩くガキにいい加減一旦帰ろうと言おうとした矢先、ガキが再び伐採に見合った木を見つけたらしく、進行方向先を指で差しながら俺に勧めて来た。


かったるくなりながらも、半信半疑でガキが見つけたという木へと視線を向ける。目を向けた先は森の中に出来た天然の広場のように少し拓けた空間で、その片隅に太く立派な幹を持ったイグスの大木が陽射しを浴びながら悠然と立っていた。


そのイグスの大木は高さもさることながら幹の胴回りも採集するのに申し分なく、虫に巣食われていたり、水気を持って苔が生しているようにも見えず、これならば伐採して切り出せば十分な木材が確保出来そうに感じた。


「ああ。まぁ、これならいいんじゃねぇか」


「えっ、本当!?ぃやったー!わーい!わーい!」


四度目の正直で見繕った木がやっと俺の眼鏡に適ったことがよっぽど嬉しいのか、ガキがその場で何度も飛び跳ねながらその嬉しさを全身で表現させた。


ただでさえ子供っぽい身形と背丈だっていうのに、その言動のせいで俺の両目には小学生の女の子が喜んではしゃいでいるようにしか映らなかった。


「だからよ、いちいち大袈裟に騒ぐんじゃねぇよ」


「えへへぇ…ごめんごめん」


「まぁ、取り敢えず切り倒すとするか。おい、危ねぇからちょっと離れてろ」


俺の真横で飛び跳ねるガキを宥めて落ち着かせると、俺はその拓けた広場へと足を踏み入れてガキが見つけたイグスと言う名の木に近付き、その雄大に佇むイグスの大木を正面から見据えた。


地面から空へと向かって真っ直ぐに伸びたその木は、俺が知る地球に存在している木で例えれば、その高さと樹皮が逆立っている点を除けばどこか杉の木に似ている雰囲気があった。


刺々しい樹皮を纏った幹は5メートルほどの高さまで伸びて、そこから先は枝葉に隠れてよく見えないが、恐らく10メートル近い高さを誇っているようだった。


(これ切り倒すとか結構骨だな…っつーか、素人の俺がどうにか出来んのか?)


これまでの人生の中で木一本を丸々切り倒した経験なんて当然のことながら無い。そもそも俺の中にある伐採に関する知識は、以前に見たテレビのバラエティ番組で芸人が林業業者の仕事を手伝っている企画の一場面を見たことあるくらいだ。


確か木の根元の方に三角形の切り込みを入れて、その反対方向からチェーンソーを使って伐採してたように記憶してるが…そんな薄っぺらい知識で何とかなるのか、こっちの得物はテレビで見た高性能なチェーンソーとは違う原始的な斧一本のみ…最早全ての条件が違っているので正直不安しかない。


しかし、これ以上探してもこの木よりも上等なモノが見つかる保証も無く、探索に疲れていたこともあって、俺はこの木を伐採することに決定した。


「…かったりぃな…っし!」


呼吸を整えて気合を入れると、俺は木が倒れる時の方向を計算して、最終的に木が拓けた方へと倒れるように木の背後に回り、その根元から俺の膝上に当たる箇所に斧で鋭角な切り込みを入れた。


そして、そのまま元いた広場の方へと戻り、ようやく日の目を見る斧を構えると、俺は技術や経験なんて関係無いと言わんばかりの荒々しいやり方で、振りかぶった斧の刃を木の根元に入れていった。


…。


「チィィィッ…!クッッッソだるかった…」


拠点のある場所まで切り出した大量の木材を抱えて戻り、そのまま地面にドカッと座り込んで額から流れる汗を雑把に拭う。


あの後、素人仕事でなんとか無事に木を切り倒すことに成功した俺は、続いてその木を椅子の材料にする解体処理作業に追われた。


伐採したイグスの木の表面を覆う逆立つ硬い樹皮を削ぎ落とし、その樹皮を削いだ木を等間隔にぶつ切りにし、そこから持ち運びやすい大きさに切り出していった。素人仕事でもここまでなんとかなることに感動を覚えるほどの手際だったと思う。


その過程で、ガキが「私も手伝うよー」と言ってその作業に参加しようとしたが、道具は俺が担いでいた斧一本しかない上に、解体作業は基本的に力仕事になる。


その揚々としたやる気は買うが、俺は小柄なガキは到底戦力にならないと判断し、下手に怪我でもされたらそれこそ後々面倒になると思って、俺はガキに解体作業の手伝いを丁重に断った。


ガキは俺の言葉に頬を膨らませてゴチャゴチャと文句を抜かして抗議していたが、最終的には俺の言葉に従って大人しくなり、その代わり解体作業を進める俺の横で「頑張ってー」や「上手だよー」と無駄に熱いエールを送る役になっていた。


キンキンと喧しいガキの声を間近に聞きながら、俺は必死こいて慣れも経験も無い木の解体処理作業を感覚(かん)で押し進めた。恐らく、伐採から各処理が終わるまでは、ゆうに数時間は掛かっていたと思う。


そして、どうにか全ての処理作業を汗だくで完了させて、切り出した木材を二人で抱えながら拠点と切り出し場を二往復した頃には、拠点の隅には新鮮な木の香りが漂う木材の山が出来ていた。


「はぁ、はぁっ…よくやったな、俺」


おもむろに空を仰ぐ。この世界で最初に見た橙と紫が共存する極彩の空の色彩は、俺達が伐採に掛かった時間の経過を示すように宵の紫色が濃くなっていた。


「お疲れ様アギト!はい、お水!」


「あん?おお、サンキュ…」


肩で息を切らしながら呼吸を整えていると、いつの間にやら姿を消していたガキが水の入ったグラスを俺に向かって差し出して来た。俺はその差し出されたグラスをガキの手から素直に受け取ると、そのまま勢いよく一気に飲み干した。


氷も何も入っていない常温の水よりも少し冷えただけといった感じの水だったが、それが喉を潤しながら通って胃に落ちていく感覚が今は何よりも心地良かった。


「…っあぁ…生き返った…」


「ううっ、ごめんねアギト…全部の作業任せちゃって…」


「ぁん?ああ、大いに反省しとけよな。そんで?取り敢えず材料は揃えたけどよ、まさか今から椅子を作るとか言わねぇよな?」


「そ、それは心配しないでよ!アギトがそんなに疲れてるのに、そんな酷なことは流石に言わないって!」


「そうかよ。そりゃ良かった…」


「うん!それに、今日切り出した木材はこのまま数日間天日干しにして、木の中の水気を全部抜く必要があるから、本格的な椅子作りはその後だねー」


ガキのその言葉を受けて、俺は今日の分の作業が取り敢えず終わったことに安堵の息を吐いた。ただ、後日に本格的に椅子作りの工程が待っていることが俺の心中に物凄いかったるさとなってのしかかった。


座ったまま両手を上に組んでウンと背筋を伸ばす。その途端に、俺の背中の方からボキボキと小気味良い香ばしい音が聞こえた。どうも、長時間の慣れない重労働にいよいよ身体が限界の悲鳴を上げているようだった。


「まぁ、そういうことなら、今日はもういいんだな。よっと…」


立ち上がってズボンの尻に付いた砂を叩いて払い、不慣れな伐採と切り出し作業で凝り固まった腕の筋肉を肩をグルグルと回しながら和らげる。


長年の喧嘩三昧の人生で激しく動き回ることには多少慣れているつもりだったが、やっぱり労働と喧嘩は根本から違うんだなとつくづく思い知らされる。


ましてや、チェーンソーのような近代的な伐採道具を一切使わず、原始的で無骨な斧一本を使って初めての伐採を最後までやり遂げたのは称賛されるべきだと思う。


「うん、改めてお疲れ様!すぐにご飯の準備を…あっ」


「ん?おい、どうかし…ぁん?」


それまでニコニコとしていたガキの表情が一変し、驚いた表情のまま絶句した。


その視線は俺に向けられていると思ったが、よく見るとその視線の先は俺の背後…つい今し方作業を終えて抜け出て来た森の方へと注がれており、一体何事だと思い俺も振り返って背後を確認した。


すると、そこには出た時と同じ鬱蒼とイグスの木が茂った森の姿が広がっていた。だが、ガキが驚き、俺も絶句した問題はその森の上空に飛んでいた。


そこには紫の割合が多い奇怪な色合いの空を背負う形で、見たことの無い不気味な姿をした黒い鳥のような生物が数十羽、離れている俺達からでも分かるほどの鋭い殺気の籠った視線でこちらを睨みつけていた。

ここまで読んで下さり、本当にありがとうございます。


話を次話に引き継ぐことを意識して書きました。

自分のように考えなしで書き殴っていると難しいモノですね。

改稿しているとその他にも粗や設定の浅さが目立ちますね。精進したいモノです。


もっと意識することあるだろ、少しは考えて物を書け、元から粗しかないだろがとお思いの方…慧眼恐れ入ります。それでも、ちょっとでも良いな、面白いななどと思って下さったのならばまた是非とも続きを読みに来て下さいませ。


また、誤字脱字、表記揺れ、設定の矛盾、感想等を頂けますと嬉しいです。

それと、ページ下部のいいねボタンや☆マークを押して頂けると私のテンションやモチベーション等が上がって創作の励みとなりますので、良ければきまぐれにでも押してやって下さい。


今後とも『バッドボーイ&ロンリーウイッチ』をよろしくお願いします。

1/13改稿。

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