一歩
この度は当方初投稿作『バッドボーイ&ロンリーウイッチ』を閲覧して頂きまして誠にありがとうございます。
この作品の作者の能村倅吉と申します。どうぞ宜しくお願いします。
この話は前話からの続きとなります。この話から読んでも展開が分からない場合がありますので、良ければ前話・前々話以前からもお読み頂ければ幸いです。
長くなりました。改稿したらもっと長くなりました。何故でしょうね。
今回も読んで頂いた読者の皆様の心、精神、感情、センスといった部分の何らかの琴線に少しでも触れられれば幸甚と存じます。
拙い話ではありますが、それではどうぞお楽しみ下さいませ。
「そ、それで…どうかな?理由も話したし、今度こそ弟子になってくれる?」
「………」
おずおずといった感じでガキが俺を見つめて来る。いよいよ最後の決断が迫られ、俺は気恥ずかしさで埋め尽くされた感情を切り替えて、ここまで聞いたガキの話を頭の中で纏めた。
ウォーアムとかいう星の人々から嫌われ、世界から迫害を受けているという魔女。そこには、まぁ…多少の同情の余地があると思う。
だが、唯一の理解者である友人が弟子を取ったからと言って、それを羨んで自分も弟子を取りたいと思ったという理由はバカバカしいと言わざるを得なかった。
そんな身勝手な理由で召喚された俺からしたら、いくらガキの設定した召喚条件に俺が合致したからといっても堪ったモンじゃない。
こっちが帰りたいという意思を表示をしても、ガキに俺を地球に帰らせないという鋼の意志がある以上、俺がいくら訴えても事態は進展しないだろう。
つまり、非常に癪な話だが…俺が地球へ戻るためにはこのガキの協力が無い以上は実現不可能であり、他に帰る手段や方法が分からない俺には素直にガキの言い分を聞き入れる以外の道は残されていなかった。
よしんば弟子になる件を蹴ったとしても、こんな身寄りや知り合いが一人もいない地球の常識が通用しなさそうな異星で俺一人が生きていくのはそれこそ自殺行為…一週間と持たずに野垂れ死にする未来しか見えなかった。
それにだ…本音を言えば、俺はこのガキの正体が本物の魔法使いだと知ってから、どこか心の片隅で好奇心を刺激されて気が昂っていた。
召喚なんてモノが出来る本物の魔法使いなんだし、呪文を唱えて何もない空間から火炎や水流を出して操ったり、箒に跨って空を自在に飛べたりと、俺が知っている漫画やゲームに出てくる魔法や超能力といった超常の力を扱えたりするのだろう。
斜に構えた喧嘩三昧の人生を送っている俺だって、所詮は17歳のガキだ。
魔法や超能力といった人智を超えた力が登場する漫画やゲームといった娯楽作品に触れる機会も多ければ、そんなに頻度は多くないがアニメだって視聴しているし、子供の頃はそんなアニメのキャラクター達に憧れてポーズや技を真似たりもした。
もしも、俺がこのままこのガキに弟子入りしてその下で修行とやらを積んだ結果、将来的に俺の記憶に残っている漫画やゲーム、アニメの登場キャラクターのように手からビームやバリアー、瞬間移動や空を飛ぶ術なんかを修得出来るのかと思うとそれだけで夢が広がった。
なので、滅茶苦茶かったるいし、癪にも触るし、心の底から納得出来ていないが、ここはガキが語った身の上と後出しした条件…それと少しばかりの下心を持って、渋々ながらもこっちが折れてガキの言う通り弟子になるしかなかった。
だが、ここまで理不尽かつ身勝手な応対をされて、そのまま黙って素直に従うほど俺も聞き訳が良い方じゃない。未だに俺から返答がないことに不安そうにしているガキを見据えながら、俺はいよいよ腹を括って重々しく口を開いた。
「………分かった。弟子になってやる」
「もう、まだ…って、えっ!?ほ、本当!?本当に弟子になってくれるの!?」
俺の喋る言葉がまたしても拒絶の意味を含んでいるとでも思ったのか、ガキが一瞬落胆したような表情を浮かべるも、次の瞬間には言葉の意味を正しく理解してか、その表情を一変させて目を見開いて驚いた。
そして、ガキはまるで飼い主に構ってもらえるのが嬉しくて堪らない子犬のような屈託のない笑顔を浮かべて俺の側へと飛び込むようにして詰め寄って来た。
「ほ、本当に本当!?本当に弟子になってくれるんだよね!?ね!?」
「くどいな…ああ、男に二言はねぇよ。ただし、一つだけ条件がある。その条件をお前が飲むってんなら、まぁ…しゃーねぇから弟子になってやる」
「うんっ!うんっ!そ、それで、どんな条件かな?痛いのや怖いのはイヤだけど、私に出来そうなことなら何でも言ってね!」
興奮で鼻息を荒くし、目を輝かせながらガキがさらに俺に詰め寄って来る。その、子犬ならば千切れんばかりに尻尾を振っているであろう歓喜に満ちたガキの態度に気圧されながらも、俺はガキを宥めつつ話を続けた。
「だから近ぇーってんだよ。はしゃいでないで落ち着け」
「う、うん…ゴメン、あんまりにも嬉しくってつい…そ、それで?条件って?」
「ああ。いいか?その条件なんだが、弟子になるっつっても互いの立場は対等だ。俺が納得出来ねぇモンは納得出来ねぇって言うし、俺が嫌なモンは嫌だって言う。これが条件だ」
「ええっ!?で、でも!それだと師弟の関係が…それに、修行だって貴方の気分で突っぱねられちゃったら、私としてはどうにもならないよぉ…」
俺の出した条件に納得がいってないのか、ガキがさっきまでの嬉しそうな表情から一転して困惑した面持ちで不満の言葉を溢した。眉根は下がり、もし尻尾があればシュンと萎っていそうなほどの変わり様だ。
そんなガキの姿を見ながら、俺はガキの訴える懸念を払拭するべく口を開いた。
「いや、何も修行を全部突っぱねるわけじゃねぇ。人の道から外れてたりだとか、誰かに迷惑かけそうな修行はしねぇってだけの話だ。分かったかよ?」
「えっ、そうなの…?うん、それだったら私も全然構わないよー!私も師匠として弟子にそんな酷いことを強いる気は全然ないから、そこは安心してね!」
「分かりゃいい。あー…それと師弟の関係がどうのこうの言ってっけど、テメェの勝手な理由や都合で人のことを召喚した分際でアホなこと抜かしてんじゃねぇよ。押し付けて来た弟子に真っ当な師弟関係なんて求めんな」
「うぅっ!?た、確かに貴方の言う通りだけど…で、でもさ?師匠と弟子っていう関係上、やっぱりそれなりの敬意とか尊重は大事かなーって思うんだけど…」
やはり、まだこのガキの中では踏ん切りがついていないのか、どうも師匠と弟子の上下関係を明確にしておきたいらしかった。
互いに対等な関係ってのは、俺にとって譲ることの出来る最大の落としどころだ。ここまで理不尽で身勝手なガキのワガママに付き合わされるってんだから、せめて対等な立場と関係を結べなければ到底付き合っていられない。
これでもし「弟子は常に師を敬え」とか「師匠の命令には弟子は絶対服従」などと言われたら、俺はあまりのかったるさに潔く一週間後の死を選んでいるところだ。
「敬意とか尊重とか言ってるが、何も互いに全く遠慮無しってわけじゃねぇよ。程々でいいんだよ程々で…って言うか、こっちが遠慮無しにぶつかってやれるのを譲ってやってんだから、お前もそれぐらいの条件は飲めよ」
「ううっ…はぁ、やっと弟子を導くカッコイイ師匠になれると思ったのになぁ…」
俺の提示した条件にガキが苦悩した顔をして考え込むと、最後には溜め息をついて渋々といった感じで納得したらしかった。
と言うか、弟子を導くカッコイイ師匠ってのは何だ…?ここまで来てまだ腹の中にそんな一物を隠し持ってたことに呆れて来る。
「…カッコイイ師匠とかは知らねぇが、取り敢えず納得はしたみてぇだな」
「うん…で、でも大丈夫?修行は遊びじゃないんだよ?師匠になる私の言うことをちゃんと聞かなきゃ危ないんだよ?」
ガキが少しばかり真剣さを帯びた口調で俺のことを見据えた。この期に及んでまだ師弟関係を強調して来るとは、このガキはよっぽどカッコイイ師匠とやらに憧れを持ってるのだろう。
しかしながら、確かにガキの言うことも一理あるように聞こえる。ただでさえ俺が今まで過ごして来た地球とは違って、超常の魔法やそれを操る魔法使いが存在するこの世界で修行をするのならば、そりゃ多少の危険は付き物だ。
だが、そんなモノにいちいち気後れして、安心・安全な緩い修行なんかしていたらそれこそ一体いつになったら地球に帰ることが出来るか分かったモンじゃない。
それに、怪我とか危険なんかはこちとら散々喧嘩で経験している荒んだ身の上だ。ガキが俺の身を案じて心配してくれるのは分かるが、俺はその全てを承知した上で弟子になることを選んだ。
俺としてはガキとは対等な立場を維持しつつも、程々に良い上下関係を築くことが出来れば万々歳なんだが、どうもガキはそれを良しとしない考えらしい。
どうしたモンかなと考えていると、俺はガキの発言の中に丁度良い言葉が出ていたことに気付き、復唱しながらそれを口にした。
「…遊び、遊びねぇ…それでいいじゃねぇか」
「へっ…?」
「遊びだよ遊び。危険や怪我なんて自前で散々経験済みだからそこは気にすんな。だから、お前も師弟ごっこでもしてるぐらいの感覚でいてくれりゃ俺も気が楽だ」
「ま、またそんなこと言ってぇ…ううっ…尊敬される師匠になるっていう私の夢がどんどん崩れてくぅ…」
俺の返答を聞いて今度はガキの方が頭を抱え、苦悩しながらその場に蹲った。
そんなガキの様子を見て、師弟ごっこは少し言い過ぎたかもしれないと思ったが、俺の目指すところを言語化するんならこの表現が一番しっくりと来た。
対等な立場と程々な上下関係。余りに身勝手な理由で俺のことを召喚した魔女と、余りにも理不尽な理由でガキに召喚された一般人。そんな俺達二人が師弟の関係を結ぶのであれば、それは格式ばった堅苦しいモノじゃなくて良いと思ったからだ。
元より、ガキとは今日出会ったばかりの縁の薄い間柄だ。弟子になれって言うのもガキが一方的に言っているだけで、俺は心からそれを受け入れたわけじゃない。
それならば、俺達二人の関係はあくまでも軽度なモノ…ハイレベルなごっこ遊びの延長線上に置くのが適当だと思い、俺は我ながら言い得て妙だなと一人で頷いた。
自分の思い描いていた尊敬される師匠の夢を打ち崩されたガキに視線を向けると、ガキは未だにその場に蹲ったままブツブツと何か自問自答するような言葉を小声で呟きながら俺の言葉に葛藤していた。
「うううっ…で、でもなぁ…ぇう~…」
「なに悩んでんだ?条件が飲めねぇってんなら、さっさと俺を帰してくれ」
「うぅぅ…う、うん、分かったっ!貴方が本当に弟子になってくれるんだったら、それがごっこ遊びの延長でも構わないよ!」
「ぁん?やっと分かってくれたか」
「うん!それに例え師弟ごっこだとしても、私がちゃんと身を守る方法を教えて、もしもの時は私がしっかりと守ってあげばいいだけだしね!」
どうやらガキの中で一旦の気持ちの整理が着いたのだろう、葛藤する直前に見えた困惑した表情は一切無くなり、どこか晴れ晴れとした顔そう答えた。
そのガキの快い返事が俺の提示した条件を了承したと受け取った俺は、この世界に召喚されてから感じていたかったるさを全て吐き出すようにして深く息を吐いた。
「はぁ…決まりだな。取り敢えず、お前が飽きるまでは付き合ってやるよ」
「えーっ、私なら絶対に飽きないよー?だって、私の初めての弟子なんだからね。教えたいこととか見せたい法術だっていっぱいあるし、この星の美味しい食べ物や綺麗な場所なんかも貴方に見せたいから、今からすっごく楽しみだよー!」
「…俺は観光しに来た訳じゃねぇんだぞ?」
賑々しく大袈裟に立ち振舞うガキを横目に見ながら、俺は組んでいた胡坐を解き、服や尻に付いた砂埃を片手で無造作に叩くとゆっくりと立ち上がった。
そこで俺は初めて立った状態でガキと対面した。座っていた時から思っていたが、いざこうして立ち上がって目の前のガキ見下ろすとやっぱり小さい。それに加え、今までの爛漫な言動や浅慮な性格を加味して考えると、目の前のガキが小学生だと言われても信じられそうだった。
「はわー、おっきいねぇ」
「…お前が小せぇんだよ」
ガキがポケっとした間抜けな顔で対面する俺のことを見上げる。
確かに、俺は同年代の連中の中じゃ背丈は高い方だとは思うが、地球規模で見ればそれほどでもない。それとも、このウォーアムの星の奴は総じてこのガキみたいに背が低いのだろうか?
珍奇なビルを見るようなそのガキの視線を切るように首を左右に振ってゴキゴキと鳴らすと、俺は人間関係のファーストコンタクトにおける一番大事なことをガキに聞きそびれていたのを思い出した。
今まで自分の置かれた現状を把握するのを優先し、それを理解するのに手一杯で、俺はガキの名前を聞くのをすっかりと忘れていた。
「あー…そう言やぁ、まだ聞いてなかったな。お前、名前は?」
「名前…?あっ、そっか。そう言えばまだ名乗ってなかったね。コホン…」
ガキも俺と同じことを思ったのか、俺の質問にわざとらしく咳払いを一つ挟むと、目の前に立つ俺の目を見て元気よく手を挙げた。
「改めてこんにちは!私、『リスティーシァ・ウレゥスカム』!魔女をしてます!これからよろしくね!」
周囲にハッキリと通った明瞭な自己紹介が俺の鼓膜を震わせる。俺は最初にガキを見た時に、その容姿から外国人の子供だと思っていた。そして、その俺の想像通り横文字の名前がガキの口から告げられた。
それも、りすてぃーしあうれうすかむ?とかいう、日本人の俺からすればどうにも発音のし難いフルネームだったこともあり、俺は率直に思ったことを口にした。
「…長ぇ名前だな」
「ぅん?そうかなぁ?あっ、じゃあ特別にリスティーって呼んでいいよ!仲の良い魔女の子もそう呼んでくれるし、私もそっちの方が嬉しいなー!」
「リスティー、か。まぁ、長ったらしいよりはマシか」
「でしょ?えへへー、それで、貴方の名前は?なんて言うのかな?」
「…アギト。遊佐アギトってんだ。あー…苗字で呼ばれんのは好きじゃねぇから、呼ぶんならアギトでいい」
リスティーと名乗るガキの問いに、俺は目を逸らしてぶっきらぼうに答える。
俺はこの「遊佐」って名字が大嫌いだ。何をどうしたってあの忌々しいクソ親父と血が繋がってることを認識させられるし、巷の不良共も人が気にしている三白眼を論って「射殺しの遊佐」と呼んでいるせいで、もうこの名字は悪性の耳タコだ。
幸いなことに、眼下のガキ…リスティーはそんな俺の身の上や素性なんかを詳細に知っているわけじゃない。ならば、一々名字を呼ばれる度に嫌な記憶を回想させてイラつくのを防ぐ目的で、こうして早い段階から名字を呼ばせないようにしておくことに越したことは無いと判断した。
そんな俺の気を知ってか知らずか、リスティーが顎の先にその細い指を添えながら何度もブツブツと俺の名前を繰り返していた。ひょっとしたら、この星の住人には発音のし難い名前だったのかと、妙な心配が俺の脳裏を過ぎる。
「あぎと?あギト、あぎト…アギと、アギト…うん、なるほどね!」
「…ンだよ?」
「変な名前だね!」
「………」
リスティー…いや、ガキが満面の笑みを湛えて明るく答えた。そのニコニコとした向日葵のような笑顔を前にして、俺は自分が嫌っている名字で呼ばせないことや、発音の難しい名前だったのかと杞憂したのが心底バカらしくなった。
そして、俺は乾いた苦笑を一つ静かに溢すとそのまま一歩前へと進み、ガキの顔を両側から持ち上げるようにして両の親指の腹をこめかみ添え、それ以外の指を耳の後ろにやってガキの頭を動かないように固定した。
その俺のおもむろな行動に、ガキは顔に疑問符を浮かべながらも身を任せていた。
「…?なぁに?」
「…あのなぁ、テメェって奴はよぉ…人様のことをバカにすんのも大概にしとけやコラァ!!」
「みぎゃーーーっ!?」
声を張り上げると同時にガキの両こめかみに添えた親指に力を込め、激痛とまでは行かないがそれなりに痛みを生じる絶妙な力加減で指圧する。
ガキはその痛みに手足をバタつかせながら何とか逃れようとしているが、俺に頭を完璧に固定されているせいで身を捩る他なく、涙目になって奇声を上げていた。
今まではこのガキの不躾な態度や言動にはなんとかギリギリで我慢して来れたが、ことここに来てただでさえ臨界点間近だった俺の我慢のゲージは、さっきのガキの舐めた発言のせいでとうとう臨界を突破したらしい。
本来であれば女子供に暴力を振るうのは俺の信条に反する一線を超える行為だが、このリスティーシァとかいうガキは特別かつ例外だと俺の本能が断定した。
それと同時に、俺はこの瞬間からこのガキのことは名前や愛称なんかでは呼ばず、この世界に留まっている限りはガキと呼ぶことを密かに決めた。
「い、痛い痛い痛いぃ!?ご、ごめんなさい!変な名前って言ってごめんなさい!ごめんなさいぃっ!い、痛い痛い、痛いよぉっ!?」
「…分かりゃいいんだよ。ガキがあんまり舐めたこと言ってんじゃねぇ」
固定していたガキの頭を解放して一息つく。半ベソをかいているガキは俺の指圧が余程痛かったのか、解放されてからもその場で蹲ったまま両のこめかみを手の平で揉んで痛みを和らげていた。
「うううっ…酷い弟子だよぉ…頭の横がジンワリ痛いぃ…」
「自業自得だアホンダラ」
痛みに喘ぐガキを見ながら叱るように吐き捨てる。少しやり過ぎたとも思ったが、これからの関係を保つ上でもここで舐めた言動を許すわけにはいかなかった。
蹲りながらこめかみを揉むガキを見下ろしつつ、俺は次に取るべき行動を考えた。
弟子…それも魔法使いや魔女といった、今までフィクションや娯楽作品の中でしか見聞きしたことのない奴の弟子となったからには、当然魔法や召喚といったモノを修得するための修行をするのだろう。
しかしながら、俺は魔法や魔女なんかとは一切縁のないただの一般的な地球人だ。素養や素質があるのかどうかも分からないし、そもそもガキの言うまどーし?や、さっきの会話に出て来たまどーもん?など、俺が知らないことが余りにも多い。
その辺の事情も鑑みて、俺は弟子となったこの後どういった扱いをされ、果たしてどういう修行をするのかをガキに訊ねてみた。
「…それで?これからどうすんだ?」
「ううっ…ぇう?どうするって?」
「決まってんだろ?お前のお望み通り弟子になってやったんだからよ、何かこう…早速修行するとか基礎を教えるとか、何かあんだろ」
「あっ、そうだね!えっと、えっと…じゃあ、まずは私の拠点に案内するよ!」
俺の言葉に痛みに悶えていたガキがハッとし、一転して表情に明るさを取り戻すと取り急ぎと言った感じで快活な声を出して答えた。
そのガキの返答に俺は取り敢えず納得が出来た。こんなトコでくっちゃべってちゃ詳しい話も落ち着いて出来やしないし、何よりガキの拠点…魔女の家へと招かれることに少しだけ興味をそそられた。
一般的に想像し得るおどろおどろしい洋館風の家か、はたまた極限にまで妖しさを煮詰めたようなボロ屋が出てくるのか…俺は湧き上がる好奇心を顔に出さないよう努めながら先を促した。
「おし。じゃあ、さっさと行こうぜ。その拠点って遠いのか?」
「う~ん、ここからだと少し遠いかな…でも、お喋りして歩いてたらすぐ着くよ!さっ、こっちこっち!」
ガキがその身を翻して先へと駆け出し、何が嬉しいのか輝かしい笑顔を湛えたまま俺を自分の方に手招きする。
俺はそんなガキのあどけない所作に呆れつつも、この魔法や魔女がといったモノが普通に存在する異星・ウォーアムの世界への第一歩をかったるく踏み出した。
ここまで読んで下さり、本当にありがとうございます。
ここまでに10部以上を要して書く辺り、地の文の構成力が長いんだと思ってます。
もう少し無駄な文を省いた簡潔で分かり易いものを書いていきたい所存です。
物語はまだ序盤ですが、私のこの長い文体に飽きずお付き合い下されば幸いです。
10部以上書いてやっと出発か、地の文が長ったらしい、序盤でこの文字量はバカとお思いの方も多いでしょうが、少しでも良いな、面白そうだなと思って下さったらまた是非とも続きを読みに来て下さい。
また、誤字脱字、表記揺れ、設定の矛盾、感想等を頂けますと嬉しいです。
それと、ページ下部のいいねボタンや☆マークを押して頂けると私のテンションやモチベーション等が上がって創作の励みとなりますので、良ければきまぐれにでも押してやって下さい。
今後とも『バッドボーイ&ロンリーウイッチ』をよろしくお願いします。
12/13改稿。