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弟子

この度は当方初投稿作『バッドボーイ&ロンリーウイッチ』を閲覧して頂きまして誠にありがとうございます。

この作品の作者の能村倅吉と申します。どうぞ宜しくお願いします。


この話は前話からの続きとなります。この話から読んでも展開が分からない場合がありますので、良ければ前話・前々話以前からもお読み頂ければ幸いです。


ちょっとずつ話は進展しています。本当にちょっとずつですが…。


今回も読んで頂いた読者の皆様の心、精神、感情、センスといった部分の何らかの琴線に少しでも触れられれば幸甚と存じます。


拙い話ではありますが、それではどうぞお楽しみ下さいませ。

頭を悩ませながらも、これまでに聞いたガキの発言を思い返す。


なんやかんや紆余曲折を経て横道に逸れたりもしたガキとのやり取りの中で、俺は世界中から嫌われているというガキが自身と似た境遇の他人を召喚して、そいつを()()()()()()()()とか言っていたのを思い出した。


弟子という単語を聞いて俺がパッと浮かんだのは、テレビで見る漫才師や落語家、剣道家や茶道の家元といった、その道に秀でた名のある師匠の下で芸や技術を習う見習いの奴だ。


今までそういったのとは縁遠い人生を送って来たから詳しいことは分からないが、一般的な弟子のイメージといえばこんなトコだろうし…恐らく、ガキの言っている「弟子にする」ってのもそういうことなんだと思う。


だが、目の前のガキの雰囲気や風貌からは、俺のイメージするそういったお堅めの地位や職に就いている気配は微塵も感じられなかった。


それならば、さっきからガキの台詞に度々登場している魔導師…俺が想像しているところの魔法使いのことだと思うが…ガキは俺をその弟子にするのだろうと思い、俺は今後の自分の扱いがどういうモノになるのかを交えて訊ねてみた。


「なぁ、ちょっと聞きてぇんだが…」


「ぅん?何かな?」


「お前がさっきから言ってる、俺を弟子にするってのはどういうことだ?」


「えっ!弟子になってくれるの!?ぃやったー!」


「おい早合点すんな。俺は弟子になるなんて一言も言ってねぇ。勝手に決めんな」


「ううぅ…頑固だなぁ…で、でもでも!貴方が弟子になってくれたら私がしっかりお世話するよ!寝床もご飯もあげるし、修行や勉強だってちゃんと教えるよー!」


俺の言葉を受けたガキが喜んだ表情を浮かべたかと思えばすぐさま両肩を落として悄気(しょげ)るも、次の瞬間にはめげずに明るい表情を浮かべながら俺が弟子になることのメリットを説いて勧めて来た。


その、感情の発露がハッキリと見て取れるガキの様相がどこか面白くて、まだまだこの世界のことを把握しきれずに戸惑い、このウォーアムに召喚されて以来余裕を無くしていた心に少しだけゆとりを与えてくれた。


「いや、だからよぉ…あー、そもそもアレだ。確か魔導師?とか言ってたけどよ、お前って魔法使いみてぇな何かなのか?」


「えっ?う~ん…まほーつかい?って、貴方がいた世界の魔導師のことなのかな?もしそうなら、同じって認識で合ってると思うよ。あっ、でも、確かに私は魔導師なんだけど、正確には女性の魔導師だから魔女って言った方が正しいかな」


「魔女って…マジかよ。っつーか、俺のいた地球(トコ)じゃ魔法使いや魔女っつーモンはフィクションの中だけの存在で、現実には存在してねぇんだが…この星には普通に存在してんのか…」


この世界に召喚され、それを行ったガキの存在を認識してから俺が心の内で密かに思っていた考えが的中した。


やっぱり、このガキは魔導師という呼び方は違えど、俺の想像した通り魔法使いに似た存在だった。


ただ、俺が想像していた魔法使いは広くて大きなツバを持つ円錐形の帽子を被り、醜い鷲鼻とボサボサの白髪からギラついた双眼を覗かせた杖を持った老婆という、まさしく漫画やゲームに出てくるような姿を想像していた。


だけども、目の前のガキは俺の想像していた魔法使いや魔女なんかとは正に対極に位置している姿で、外見もさることながら、先端の尖った帽子を被っていなければ宝石や髑髏で彩られた杖や怪しげな薬を持っている気配もない。


精々ガキがその身体に纏っている黒いフード付きの長いコートかローブの存在が、辛うじて俺にこの年端も行かないガキを魔女っぽいと感じさせている程度だった。


自分の頭の中にあった魔女のイメージと、現実として目の前にいる魔女(ガキ)との差異に頭をこんがらがらせていると、おもむろにガキが俺の言葉に相槌を打った。


「へぇ、貴方のいた世界には私みたいな魔女とか魔導師って存在しないんだねー。うーん…それじゃあ修行は基礎の基礎…まずは魔導紋の生成からしないとダメか…魔導力の扱い方とかはそれからってことにして…」


想像と現実の乖離でフリーズしている俺を(ほっ)たらかし、ガキが何やら考えるような仕草をしながらブツブツと独り言を呟いた。


呆けながらもチラと聞こえた限り、またしてもガキの口からは聞き馴染みの無い「まどーもん」や「まどーりょく」という単語が聞こえて来たが、今それについて訊ねるとまた話が横道に逸れると思った俺は気を取り戻し、改めて話を元の路線に戻すことにした。


「おい、何か俺がもうお前の弟子になったような口振りしてっけどよ、俺は弟子になるなんてひとっ言も言ってねぇんだぞ?分かってんのか?」


「え、ええーーーっ!?こ、ここまで来ておいてそれはないよー?!ねっ、ねっ?悪いようにはしないからさ、お願いだから弟子になってよー!」


「ザケンな。確かにお前が本物の魔法使い…あー、魔導師だったか?っつーことは分かったけどよ…それとこれとは話は別だ」


「うう~っ…それじゃあ、どうしたら弟子になってくれるの?」


今にも泣きだしそうなぐらい顔を歪めながら俺に懇願してくるガキを尻目に、俺は少し罪悪感を覚えながらも考えた。


俺が地球へと戻るためにはこのガキの力が必要不可欠…これは間違いないだろう。遠方に置き去りにされて徒歩や自転車(チャリ)で帰るのとはワケが違う、地球外惑星からの帰還なんて自力じゃ不可能なのはバカな俺でも分かる。


そして、そのガキは俺を自分の弟子にする気満々で地球に戻す気なんて全く無い…これはもう、ある意味詰んでるんじゃないかとすら思えて来て頭が痛くなる。


確かこのガキが俺を召喚した理由…弟子となる奴を召喚する条件に挙げていたのは「世界中から嫌われている者」ってのと「優しい人」だったはずだ。


じゃあ、その理由ってのは何だ…?まさか、わざわざ惑星間を跨いだ召喚までして世界から嫌われている者同士で傷の舐め合いがしたいってことでもないだろう。


仮に、世界から隔絶された孤独の寂しさを埋めるためだけに赤の他人を弟子として召喚したっていうのも、余りに壮大過ぎて逆に理由付けとしては弱い気もする。


それならば、このガキにはわざわざ召喚をしてまでも弟子を欲しがる()()()()()があるに違いないと思い、俺は今にも泣きだしそうな顔をしているガキに訊ねた。


「どうしたら、ってか…まぁ、最悪理由次第だな。何でお前は弟子に拘ってんだ」


「………え?」


「え?じゃねぇよ。お前は何でそんなに弟子を取りてぇんだ?友達とかじゃなく、あくまでも弟子に拘ってるしよぉ…何でだ?」


「あ~…えっと、それは…そのぉ…」


さっきまで泣きそうな顔をしていたガキが俺の元からサッと身を翻して離れると、目を泳がせながら歯切れが悪そうに言葉を紡いだ。


このガキと知り合って恐らく三十分も経ってないが、そのガキの仕草が俺に対して何か隠し事をしている際にするモノだということを、俺はこれまでに交わして来たガキとのやり取りの中で知り得ている。


この期に及んでまだ俺に対して隠し事をしているのかと呆れる半面、それと同時に落ち着いていたイラつきが再燃し、思わず訊ねる声色に威圧感が宿って強くなる。


「ぁん?何だ?何か言いにくい理由か?それともバカバカしい理由か?どっちだ」


「そっ、そんな怖い顔しないでよぅ…言う、ちゃんと言うからぁ…」


俺の声色と雰囲気に気圧されたのか、ガキが言いにくそうに口籠っていた言葉を訥々と話し始めた。


「えっと、あのぉ…その…わ、私ってウォーアムの世界中の人から嫌われてるって言ったじゃない?」


「おう」


「で、でもね?そんな私にも、たった一人…不定期だけどたまに会いに来てくれるすごく優しい魔女の子がいるんだけど、その子がこのまえ会いに来てくれた時に、初めて自分の弟子を取ったって言ってたの…」


「…ぁん?」


「そして、一緒にお茶をしながらお喋りしてる時に弟子の扱いが分からないとか、教えたことをしっかり理解してくれるのが嬉しいとか言ってるのを見ちゃってさ、そのぅ…何と言うか、羨ましくなっちゃったって言うか…ねぇ?」


ねぇ?とシナを作って俺に同意を求められても困る。要するに、このガキは自分の知り合いが弟子を取ったことに感化されて、それを羨ましく思ってわざわざ条件を付けてまで自分の弟子…俺のことを召喚したという。


言いにくいかバカバカしいかの理由は、どうやら後者に軍配が上がったらしい。


そのあまりにもバカバカしい自分勝手な動機に俺は呆れかえり、爆発しかけていたイラつきがオーバーフローしてか、却って冷静になれた。


「…チッ、かったりぃな。って言うか、お前には仲が良い奴がいるんじゃねぇか」


「えっ?あ、あはは…確かにそうだね。でも、全ウォーアム上でたった一人だけの仲良しさんだからね…星の総人口っていう観点から見ればさ、やっぱり私のことを嫌ってる人の方が絶対的に多いんだよね…」


ガキがシュンと肩を落として項垂れる。このウォーアムの総人口がどんなモンかは知らないが、その中でたった一人だけでも自分のことを理解してくれるって存在が近くにいるってんなら、俺はそれは何よりも得難いモノじゃないかと思った。


…少なくとも、俺の周囲にはそんな奴は誰一人として思い浮かばなかった。


共に遊ぶ仲の良い友達もいなければ良き理解者も得られず、このかったるい人生を斜に構えながら生きて来たんだから、まぁ当然と言えば当然の結果だろう。


だからだろうか…世界中から嫌われていたとしても、その中でたった一人だけでも仲が良い知り合いがいるこのガキのことがほんの少しだけ羨ましく感じた。


「…良かったじゃねぇか。そういう奴が一人でもいるんならよ」


感傷的(センチメンタル)な気持ちになって神経が緩んだのか、不意に思っていた言葉が口をついて零れ出た。その瞬間、俺はガキに聞かれる気恥ずかしさから「しまった!」と思い臍を嚙んで視線をガキからは外した


そして、視線だけを動かしてガキの様子を窺うと、ガキは何事かとキョトンとした表情を浮かべていた。どうやら、さっきの俺の発言はガキの耳にも届いたらしい。


俺が自分の発言の気恥ずかしさに苦虫を噛み潰したような渋い表情を浮かべている反面、ガキは次の瞬間には俺の言葉の意味を理解したらしく、満面の笑みを湛えて「うん!」と力強く頷いた。

ここまで読んで下さり、本当にありがとうございます。


もう少しで話が大きく進展しそうな気配です。

登場人物同士の掛け合いは難しい…如実にそう思います。

色んな用語が出て来てますが、後々キチンと回収したいとも思ってます。


10話もかけて未だに進展0は笑う、もっと小気味良く会話させろ、用語がイミフと思っている方も多いですよね…気を付けたいと思う所存ですが、少しでも良いな、続きが気になると思って下さったならばまた是非とも読みに来て下さいませ。


また、誤字脱字、表記揺れ、設定の矛盾、感想等を頂けますと嬉しいです。

それと、ページ下部のいいねボタンや☆マークを押して頂けると私のテンションやモチベーション等が上がって創作の励みとなりますので、良ければきまぐれにでも押してやって下さい。


今後とも『バッドボーイ&ロンリーウイッチ』をよろしくお願いします。

12/10改稿。

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