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どしゃぶり

作者: 清水漱平

久しぶりに会うと、意識しないように意識しないようにと思いつつも『これってデートなのか』と考えてしまう自分がいる。いやデートだよ、そりゃね。デートだし。だからどうしたと自問自答すると、決まって次の課題が浮かびあがる。それでどうする、そのあとどうする、それからどうする、あのあとどうする。ある程度の雨天は想定済みだが、ゲリラ豪雨は想定外。ある程度の予兆があればカフェで雨宿りしただろう。いきなりきて、いきなりさってゆく、急いでもゆっくりでも変らない。ほら雨宿りの場所ココにしよう。とついた時には雨は小降りで、もうすぐあがりそう。だけど濡れた服は濡れたままだからやっぱり雨宿りしよう。

ああ むしあつい むわっとする

どしゃぶり

どしゃぶり

どしゃぶりだよ


ああ ふらついて くらくらする

どしゃぶり

どしゃぶり

どしゃぶりかよ


いつもより大き目の傘でいるのに

きみのスカートびしょびしょ

そでからしたたるしずくが

散る

溶ける

混ざる


ふたりの吐息が交差点で交ざりあう

どこかに寄ろうよ

どこかに寄ろうか

どこかに寄るなら


覗きこむ瞳

潤いの輝き

わるくないな

どしゃぶりも












  ####


「200字に達していないので投稿できません」

と言われた。

気にせずにいたけど、たまにあったな。

あっというまに文字数が増えてくものだけど、

足りないこともある。

それだけのことだけど、それだけのことだしさ。

ザザザー。

っと雨。

でも、じきに、弱まる。

ポツリ。

残響音しづくが四方八方で鳴り響く。

ちなみに傘は大きすぎて向こうから誰かが来ると、

「やばい。じゃまになるな」

って、あせる。

とにかく大きいというか横幅に広めな広がり方。

もちろん、ふたりでひとつこの傘を使ってもいいようにという配慮からだし、

そもそも歩行者なんて滅多にいない地域なんだしで、

これはこれ。

彼女のスカートは濡れきってしまっている。

しぼることが、できそうなほど。

いつもより短い丈だから下にスパッツをはいていて、

「やばいよこれ、まさに速乾吸汗ていうか効果てきめんで、もう快適だよ」

と上機嫌だ。

ちなみにおれもズボンの下に、はいている。

たしかにサラッとしている。

あんなにびしょびしょになったのに、不快感まるでない。

速乾吸汗ちょっとだけ接触冷感もあるのかないのか。

消臭ということだし、汗かいても蒸れ蒸れになっても気にせずにいて平気だろう。

街角の輝き、水滴はクリスタルで、街路樹は宝飾ストリートビュー。

梅雨だからこその空気感。

もしも雨あがれば、

青空いちめんに。

茜色も見えるかも。

彼女がスカートを脱いで干している。

シャツも干している。

蒸し暑いから、このまましばらく気だるい余韻。

窓を開けて、わずかばかりの風。

扇風機の羽根が回り続ける音が聞こえる。

彼女は軽く体操をしどめて、ヨガのポーズをいくつかしている。

おれは濡れたついでに掃除をしたあと飲み物をつくる。

りんご酢と炭酸水。

コーヒーもいれる。

炭焼き深煎り。

どうでもいいことばかりの日常の時間を、このうえなく愛おしいなと意識しながら、

ゆっくり、ゆっくり、ゆっくりと無意識領域へ。

ゆっくり、ゆっくりと、だが確実に無意識宇宙へ。

人時生産性がどうしたって?

あまり突き詰めすぎると生きてることがいやになるから、

ほどぼとにしような。

要求や目標は尽きないだろうけど、子供の頃にかけられた期待の重さに比べたらどうってことないし。

ちゃんと自分の呼吸ができている。

ちゃんと自分の呼吸でいられる。

申し分ないよ。


おれはシャワーを浴びることにした。

水泳気分だな。


ごく自然に自然の流れで自然にふるまうのだから、そのすべてが自然そのものなんだろう。せっかくの時間を雨で台無しにされたなんて嘆く必要はない。ほら、どしゃぶりのおかげで見れた景色がある。どしゃぶりでびしょぬれになってしまったからこそ、そういうことができた。だろ? 計画外だからこその喜びってあるし、あっていいし、そのためにも念入りに用意周到に練りに練った計画を抱えて待ち合わせ場所で再会を喜んでそれから。それから。

想定外を楽しめ。予想外の結末を喜ぶ。なによりも世界が美しいことを堪能し、自然のまま彼女が美しいことをひとりじめする。

それでじゅうぶんだよ。

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