コンマ1平方光年の空き地にて
異なる速度で互いを特殊相対論的に見たときの話です。
コンマ1平方光年の空き地にて
こどもが自転車を漕いでいる
無風の空間を突っ切っていく
光速の80%のスピードで横切っていく
僕が一番とばかりに
私は土管に座って自転車をじっと見る
自転車が進行方向に60%に縮んで見える
コンマ1平方光年の空き地にて
こどもは自転車を漕いでいる
土管の目の前を通り過ぎてく
光速の80%のスピードで横切っていく
ぼんやり座る私を尻目に
彼も自転車に乗って土管をじっと見る
土管が進行方向に60%に縮んで見える
コンマ1平方光年の空き地にて
私は土管の上で考えてみる
特殊相対性理論にしたがえば
僕から見た彼の時間と空間とが
同じ比率で変わってる
私が見た短い自転車は僕には同時でも
彼のゆっくりの時計では同時じゃない
私の時計より彼のは60%ゆっくり
私の同時より彼のは60%ワイドだ
彼の同時では自転車も元の長さに伸びるはず
コンマ1平方光年の空き地にて
私は土管の上で考えてみた
特殊相対性理論にしたがえば
私の見た彼は縮んで時計もゆっくりだが
彼の見た私も縮んで時計もゆっくりだ
互いに見ると長さが縮んで不思議だが
互いの状況を想像で補うと矛盾がない
コンマ1平方光年の空き地にて
地面に寝転び更に考えてみる
特殊相対性理論にしたがえば
私の見た彼は縮んで時計もゆっくりだが
彼の見た私も縮んで時計もゆっくりだ
どちらの時間が遅れてるのか判らない
どちらにしろ各々の時空を生きるんだ
コンマ1平方光年の空き地にて
夜空を見上げてまだ考えている
特殊相対性理論にしたがえば
私が彼の時計を見ればゆっくりとみえ
彼が私の時計を見ればゆっくりみえる
一般相対性理論にしたがえば
自転車が私に向かって方向転換すれば
自転車の加減速で時間が遅れるらしい
彼と私が再会して互いに時計を比べる
彼と私のどちらにも彼が遅れてみえる
・空き地に土管が置いてあるのは、むしろ稀でした。何かの影響です。
・互いに相手の距離が縮んで、時間がゆっくりに、見えます。自分の時計の同時では、こうなります。
相手の時間がゆっくりなことを思い出して、相手の「同時」で想像すると、伸び縮みはありません。
・0.1平方光年は、一辺がおよそ0.32光年の正方形の面積です。1平方光年は、8.9×10^(31)平米です。ちなみに、近所の空地が、例えば一辺100mとして、100m×100m=10^4平米です。
・自転車と土管の長さが同じだとします。土管の私から見て自転車は縮んで、自転車の後端が土管の後端と一致しても、前方に40%の余りができます。しかし、これは土管の私の時計の同時です。自転車の時計では同時でないのです。時間がゆっくりなので、自転車の時計の同時では、後端が一致したとき、前端も一致します。これで、矛盾がなくなります。ただし、自転車の時計の同時では、今度は、土管が縮んで見えます。自転車の彼も土管の時計がゆっくりなのを考慮すれば、土管は縮まないです。
・時間がゆっくりと言っても、呼吸や心拍、細胞分裂の周期、神経伝達や思考回路の生化学反応の早さもゆっくりです。距離も同じ比率で縮小するので、ゆっくりと言われた相手は、気づかずに、普通に生活してます。むしろ、あんたが進んでるのがおかしいと思うでしょう。
注1: 自転車が加減速を受けて、時間が遅れるのは自転車の方であると決まるのは、一般相対性理論によります。本作のように方向転換までは必要なく、加減速の力を受ければ良いです。ただ、どれだけ時間が遅れるかは、土管の上の私からみた特殊相対性理論で近似できます。
注2: 0.32光年の平な地面は、事実上ありません。ありえない巨大な星です。あったとしても、異常な重力です。重力は地球と同じくらいでこの話では無視できる、例え話でお願いします。
注3: 光速の80%は、ローレンツ因子=1/0.6=1.67なので、距離は0.6倍、つまり60%に縮みます。時間は1.67倍、つまり67%ゆっくりです。本文では、時間も60%ゆっくりと描きましたが、正確には、67%です。思考が混乱しないように、長さの縮み60%に合わせました。0.6×1.67=1.0のおかげで、相手の時間を想像すると矛盾がなくなります。
注4: 互いに「見る」というのは、電磁波(光)の相互作用です。電磁気の法則は、相対性理論の座標変換に対して不変です。光速に近い粒子の間に働く力は、この座標変換に対して不変な必要があります。ニュートンの万有引力の法則や加減速による力を含むように座標変換をより一般化したのが、一般相対性理論です。
注5 これほど速くなくても、自転車には、ヘルメットしましょう。