nO,.※※※ 好奇※と後※と※意のサンドイッチ
リビングでトーストを食べているとガチャンとドアの開く音が聞こえた。
「おいおい。和樹のやつ、朝食も食べずに学校に行ってしまったのか。成長期が終わっても知らんぞ」
お父さんは呆れたようにコーヒーを飲んでいる。
あぁ、やってしまった。
今朝のことを反省しているとお母さんが私のおでこを小突いてきた。
「どうせお姉ちゃんがからかったんでしょ?ダメよ、和樹も思春期なんだから」
「ごめんなさい。だって和樹のリアクションが面白くてついついちょっかいかけたくなっちゃうんだよね」
「来年には大学生なんだからお姉ちゃんもいい加減弟離れしないと彼氏もできないわよ」
小さくカップとソーサーの当たる音がリビングに響いた。
「うん。けど今は和樹と遊んでいる方が楽しいから彼氏はしばらくいいかなぁ」
「あらあら、お姉ちゃんもまだ子供ねぇ。でも好きな人とかカッコイイ人とかいないの?せっかく顔も可愛くスタイルもよく産んだのにもったいないわねぇ」
「うーん、たまに告白はされるけどタイプじゃないんだよね。今はイケメンでも六十年後はシワシワのおじいちゃんになっちゃうからね」
「そこに気付くなんて血は争えないわねぇ。でもそんな先まで考えてるってことは今は見定め中かしら」
「まぁね。どうせなら初めて付き合う人と死ぬまで一緒にいたいかな。けど今はあっちがそんな覚悟持ってないから様子見しているところ」
「彼氏ができるまで和樹と遊ぶのはいいけど、あまり怒らせないようにしてちょうだい。せっかく朝ご飯を作ったのに、お母さん悲しいから」
「ごめんね、そこは反省してます。もったいないしサンドイッチにして渡そうかな」
からかい過ぎた上に朝ご飯抜きは可哀想なので席を立とうとするとすでにお母さんがラップとスパイスラックを持っていた。
「さすがお母さん。よく分かったね」
「伊達に十八年二人の母親しているわけじゃないの。和樹の性格もお姉ちゃんの考えも手を取るように分かります」
そう言ってお母さんは私の瞳を覗き込むように見ている。
ふむ、今の私ではお母さんを出し抜くことはできないようだ。
バターを塗ったトーストにベーコンとマヨネーズを挟みながら考える。
血というのはなぜこんなにも厄介なのだろうか。
「いつか私もお母さんを超えられるかな」
「私の目が黒いうちは二人に負けることはありませんから」
手強い……。
私はサンドイッチと諦めを一緒に包んでランチパックに仕舞い込む。
今はお母さんに勝てなくても負けなければいいのだ。
勝てる戦い方と負けない戦い方は全く違うのだから当分は負けないように頑張ろう。
ローファーを履きながら改めて決意した。