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27(終)

 中庭を散策しながら、わたくしは膨らんだお腹を優しく撫でた。


 今、わたくしはシオンとの子供を妊娠しているのだ。


 白い結婚を覚悟していた。


 前世で「彼女」にした事、何より、父の娘であり父と同じ髪と瞳の色をしたわたくしをシオンが抱けるとは思えなかったからだ。


 けれど、そんな心配は杞憂どころか、こちらが(おのの)くくらい濃密な夜を妊娠が発覚するまで過ごしていた。


 さすがに、そんな日々を過ごせば、シオンのわたくしに対する想いが恩だけではないと分かってきた。


 最初はシオンを初めて気にかけたからだという理由だとしても、彼なりに、わたくしを愛してくれているのだと。


「タリア、敷地内とはいえ一人で歩かないでください」


 いつも冷静沈着なシオンが慌てた様子で邸内から飛び出してきた。


 わたくしが妊娠してから以前にも増してシオンはわたくしを気遣ってくれる。下手すれば出歩く事もできないくらいだ。


「少しは運動しないと、と医者も言っていたでしょう?」


「そうですが、せめて私の目の届く所にいてください」


「だって、あなた、少しでも、わたくしが動くと止めようとするじゃない」


 わたくしが反論するとシオンは黙った。心当たりが多すぎるのだ。


「わたくしとあなたの子よ。少しくらい無茶をしても大丈夫よ」


「無茶は絶対に、やめてください」


 厳しい顔になったシオンに、わたくしは微苦笑した。


 行き過ぎたように感じても、それだけシオンが、わたくしと産まれてくる子を心配しているのが分かっているからだ。


「大丈夫よ。わたくし、何があっても、この子を無事に産むから」


「勿論、貴女自身も無事である事が大前提ですよ」


 シオンは壊れ物を扱うように、わたくしをそっと抱きしめた。


「当然だわ。わたくしも、あなたと産まれてくる子と三人で、いえ、もっと増えてもいいわね、家族で仲良くずっと暮らしていきたいもの」


 両親や妹という最初に与えられた家族とは築けなかった愛と信頼を今度こそ築きたい。


 そう思いながら、わたくしも愛する夫を抱きしめ返した。











 


 




 


完結です!

読んでくださり、ありがとうございました!

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