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わたくし、ウィスタリア・アーテルの双子の妹、エレクトラが、わたくしから奪い取った婚約者に首を絞められたと聞いた時、さほど驚きはしなかった。
物心つく頃から双子の姉の物を欲しがり奪ってきた妹は、当然のように婚約者さえも奪い取った。
元婚約者は、このコロル王国の国王陛下の孫、王太子殿下の次男だ。わたくしと妹の従兄でもある。
元婚約者は容姿と身分だけが取り柄の馬鹿王子だったので、わたくしは出会った時から嫌いだった。そして……決して結ばれないが想っている人もいる。奪われた所で何とも思わなかったのは幸いだ。
妹は、わたくしの婚約者だというだけで馬鹿王子を欲したのだ。手に入れた途端、興味を失くして相手をしなくなるのは今までの経験で分かりきっていた。
物ならばそれでもいいが馬鹿王子は一応人間だ。放り出されるままでいる訳がない。
さらにまずい事に、妹は、わたくしの新たな婚約者候補といわれる侯爵令息に付きまとい始めたので、馬鹿皇子は、それについても苦言を呈するうちに首を絞めるに至ったらしい。
人伝に聞いた話だが、あの馬鹿王子と脳内花畑な妹なら、さもありなん。
即、引き離されたため妹は気絶しただけで死なず、馬鹿王子は王宮に連行されたという。
それを聞いた時も何も感じなかった。
妹が死なずに済んでよかったと喜ぶ事も、死ななかったのかと残念がる事も。
それが、わたくし達双子の心理的な距離で、わたくし達家族の歪みだ。
とはいえ生物学上は双子の姉妹だ。知らんぷりする訳にはいかない。
放課後、仕方なく妹が運ばれた学園の医務室に向かった。
そこで、まさか衝撃的な出来事が起きるとは思いもせずに――。