35 刀鍛冶師ハチロク
陰陽師のセイヨウ、トモエは彼を紹介した。
話を聞くと彼らは今ここ鉄石で抱える問題、鎌鼬の討伐の為に都から来たらしい。
俺が約束した後衛の件はどうやら彼らと行う事のようだ。
一通り話を聞き、セイヨウ達と明日に向かうと聞いた。
それにしても…鎌鼬討伐、と言うのはよほど喜ばしい事だったらしい。
街の皆があれが噂に聞く妖魔祓いのセイヨウ様かと話が聞こえるほどだ。
そして鬼達にいたっては俺とセイヨウの周りに集まりずっと話の行方を聞いているように見えた。
「それでは、明日に…」
「ああ、それじゃ…」
話が終わり、今日泊まる家についてトモエゴゼンが俺達やセイヨウ達を連れて行こうとした時、軽い暴動じみた事が起こった。
鬼達が俺めがけ集団で近づいた為もみくちゃにされたのだ。
「是非!私の家に来てください」
「いや!俺の!!」
「あっ! ルーク様!?」
「なっ!?」
ルークが鬼達の渦に消えアンリは慌てふためきテルマは6本ある腕で次々と鬼達を掻き分け探した。
対しセイヨウは顔が良かった為か名が売れていた為か、鬼達程では無かったがこれもまた多く人を集めていた。
「お前たち離れろ、客人だ」
そのトモエのひと言でようやく全員が離れ俺もセイヨウも解放された。
「ルーク様!? ご無事ですか?」
テルマがすぐに見つけ立たせてくれる。
「全く、何だったんだ?」
「すまない、うちの者達が失礼をかけた。
ここでは客は珍しいのでな。
皆、嬉しいのだ」
そう言い終わると、さらに鉄石の人達に向けて話す。
「悪く思うな、客人達の寝泊りする家はもう決めてあるのだ」
そう言い終わると皆に背を向けトモエは歩き出す。
まずはセイヨウ達が止まる場所。
そこはトモエが住んでいる鬼達の場所ではなく今度は逆に人達が住んでいる区画だった。
おそらく、彼らと妖族の間に問題が生じないようにとした措置の為だろう。
そして俺達はまた鬼達の住んでいる区画…では無く鍛冶を行う施設が立ち並んだ場所へと連れてこられた。
「ここが今日寝泊まりする場所か?」
やたら鉄を叩く音でうるさくおまけに煙と熱気、とてもじゃないがいい環境とは言えない。
だが、トモエはそれを聞きまさか、と首を振り刀鍛冶達を見て話す。
「ルーク、お前達が探している人材がここにいるだけだ。
先に紹介して置こうと思ってな。
後でいませんでしたなんて事はゴメンだろ?
信用、と言うやつさ」
刀鍛冶、と呼ばれた人達を見ると彼らは鬼や人と関係なく作業をしているのが分かる。
その作業工程は玉鋼を折り曲げ鍛えたり、粘土のような物を刀身に塗ったり冷やしたり、研磨とそれは見ていて飽きない物であったがトモエに付いていくためその場を後にした。
なるほど…
「ここは鉄だけでなく武器の輸出も行っているのか?」
それにトモエはさも当然の様に頷き先へと進む。
「まあな。
ここは他の大きな国に鉄や武器を売りつける小さな国だ、故に上手いこといろいろな国々相手に商売してるのさ」
いわゆる武器商人だと言う。
どおりで同盟の話を慎重にする訳だ。
もし今商売しているであろう国の敵国に武器を提供したと気づかれれば敵の供給を断つ為にここを狙われかねないだろう。
「なるほど…綱渡りか」
そんな会話をしながら歩いているとようやく話していた人物の家に到着した。
「ここだ、ここには大工や鍛冶を器用にこなすやつがいてな…」
「馬鹿野郎!こんな質の悪い3級品の玉鋼で刀が打てるか!
別のやつもってこい!!」
「はい!すいません師匠!!」
トモエが紹介しようとした時、ガシャン!と大きな音と共に男の怒号が聞こえ、それにすぐさま女の声が謝罪した。
「どうやら、さっそくやってるようだな。
ハチロク! 入るぞ!」
トモエはそう引き戸の前で告げると扉を開け中に入る。
するとそこにはハチマキを巻く厳つい顔の鬼と同じハチマキを巻く少女の姿があった。
今は刀を鍛える準備をしているのか手で押す事で風を送れるフイゴと薪を使い火を起こしている所だ。
「ん?なんだ…頭ですかい…。
今少し忙しいんで後にしてもらえませんか…」
「ハチロク、以前、外の国で一旗上げたいと言っていたな。
その話なんだが…」
「何? 今…何つった!?
それなら早く言ってくれればいいのに!
全く頭は人が悪い!
おいシュカ作業は中止だ、茶を入れてやれ!」
ハチロクと呼ばれた男はそれを聞くや今までの言動とは打って変わり突如立ち上がり急いで4人分の椅子を奥の部屋よりひっぱり出してきた。
どうやらハチロクはこの話に食いついたらしい。
そうして話は予想以上、簡単に決着した。
大工や刀鍛冶ができると言うハチロクとその弟子シュカが俺達に同行する代わりにアラネアで店を開く。
それを条件にこの話は纏まり俺はハチロクと握手を交わした。
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