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31 玉鋼

 早朝、鉄石のたたら場

 

 「おーし、こっちだ押せー!!」 

 

 おいしょ!おいしょ!

 

 複数人の掛け声が聞こえ、木々のメキメキという音が聞こえる。

 遠くでは川に人が入り何やら土をすくっていた。

 

 近くで見るとその街はまるで火事でも起こっているのかと見間違う程に煙が立ち上っている。

 

 今いるのは俺とアイノスケの二人だけだ。

 流石に一目でわかるアンリを連れて行くわけにもいかない。

 テルマは厚着をすれば腕を隠せるが二手に別れたほうがいいと判断し置いてきた。

 

 二人には街の観測を頼んである。

 もし何かあれば騒ぎを起こす、それを確認したらすぐさま偵察、そして出来れば助けてくれと言っておいた。

 無理そうなら一旦引きアラネアの蜘蛛達を呼べとも。

 

 「しっかし旦那、こりゃーたたら場ですぜ、それにしても立派だー」

 

 そう言うアイノスケを見て頷く。

 確かにこれは妖魔対策なのだろうが立派な壁だ。

 木でも石でも無く鉄とは…恐れ入る。

 

 こちらの世界でもこれ程の物は見ないな。

 いや…ドワーフの国が鉄でできていたか…。

 

 そうフードを深く被り角を隠し、手を見せず外で歩いていると筋肉質の男に止められた。

 

 「ちょっと、そこの子連れのあんた、見ねぇ顔だな…。

 どこから来た?」

 「へ? あっしのことですかい?

 どこから来たって…槿花の北辺りの村からでさぁ」

 

 そう聞くと男は俺を見て笑う。

 

 「そうかい、所でぼく、なんでここに来たのかな?」

 「そいつは…」

 「おっと、あんたは黙ってな、俺はこの子に聞いてんだ。

 見たところよその偵察って感じじゃ無さそうだが。

 気に入らねぇ、なんでここにたたら場があると知った?

 子供は嘘をつかねえからな…」

 

 そう言い終えるとまた俺を見て笑顔で聞いてくる。

 

 ここは演じた方がいいのだろうか…でも…それは……いや、いい。

 やけくそだ。

 

 「えっとね、お父さんと都に行く予定だったんだ。

 でも、その途中で迷っちゃってね。

 それでここに来たの!」

 

 途切れ途切れに話す事で演じて見せる、やるなら徹底的にだ…。

 

 笑顔は固く、下手だがフードがなんとかごまかしてくれたらしい。

 

 「そうか……それなら入んな、俺が紹介してやるよ。

 飯なんかも無くて大変だったろ」

 

 そう言い男は前を歩き門へと歩き始めた。

 

 よし…うまく行った。

 

 そうほくそ笑み男を見ていると、急に立ち止まって振り返りこちらを見た。

 

 ヤベ…バレたか…。

 

 男は俺を見てズシズシと近づくと懐に手をつこっんだ。

 

 なんだ!? ナイフでも出すつもりか…。

 

 そう考え身構えかけたがその考えは違ったらしい。

 男はしゃがむと拳を突き出し開く。

 するとそこには紙包みに包まれた飴が鎮座していた。

 

 「ほら、これを食べるといい。

 ちょうど、珍しく手に入ってね。

 水飴と言うんだが、米や大麦を煮て甘みを取り出したものだ。

 さあ、食べなさい」

 

 それを受け取り紙包みを開ける。

 それはベタベタした物だったのだがそれよりもこの紙が気になった。

 肌触りはサラサラとしている不思議な紙。

 

 「ねえねえ、この紙はなに?」

 「ん?ああそれは和紙だな。

 水に強く、長持ちするとても貴重な物だ」

 「ふーん」

 

 和紙か…面白い、こんな材質の紙は見た事がない。

 とても貴重な物なのだろうか…。

 

 そう考えながら紙包みの中にある水飴をパクリと食べた。

 

 甘い…幸せ…。

 

 頬が緩みまるでほっぺたが落ちたかの様な感覚に襲われた。

 口の中で味わって少しずつ少しずつ食べていく。

 

 これは…研究せねばなるまい…。

 

 …

 

 それから門を潜り街の中を歩いた。

 街は栄え、作業する音や指示する声が周りから聞こえている。

 

 カーンカーンと鉄を叩く金属音、パチパチと火の音も。

 

 空に立ち込める煙の柱、その中央にある大きな煙を出す施設、その横を通ると中で大きなフイゴを踏む鬼達の姿があった。

 

 「鬼!?」

 

 驚いた……てっきり妖魔と人は殺し合ってるものと思っていたのだが、そう単純でも無いらしい。

 

 「ああ、鬼達か。

 ここのたたら場では、もとよりここに住まう鬼達と兄弟分の契りを交わしてる。

 それで俺達と鬼は争い事を辞めこの地で共に暮らしてるのさ。

 鬼達は労働力と土地を提供し、俺達、人はここで作る玉鋼で商いをし、鬼達に見返りとして安定した豊かな生活を約束している」

 

 案内をしてくれている男はそう説明してくれた。

 

 しかし…なるほど、これは面白い事だ。

 

 人と妖魔の共存、それはこちらの世界で言うところでは現在、対立している魔族と人に当てはまる。

 それが共存…。

 

 あと他に気になったのは…玉鋼。

 どうやらこの施設は鉄を作っているようだが、魔鉱石やアダマン鉱石などの特殊金属だろうか…?

 

 「玉鋼ってなに?」

 「玉鋼はこの手法でしか取れない特殊な金属だ。

 主に刀鍛冶に使われる。

 言うなれば刀の命と言ってもいい。

 玉鋼がなければ折れず曲がらずの刀は作れない」

 

 その問いには後ろから現れた鉄石、タタラのおさが後ろから答えた。

 

 「トモエ様!!

 都から帰ってきたんですか!?」

 

 タタラの長は女性だ。

 後ろには数人の部下を付き従え高そうな着物を着ている。

 

 高貴な生まれ、貴族だろうか…。

 

 「ああ、ちょうど今な…シンゲン公に玉鋼を収めてきた所だ。

 足元を見て値段を高く取引してきてやったよ」

 

 長がそう言うと周りにいる人達は笑いそれは良かったと肩を叩きあった。

 それから笑いが収まるとゆっくり俺を見て聞く。

 

 「所で…この子鬼はどうしたんだい?」

 読んでいただきありがとうございます     m(_ _)m

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