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赤い鳥居

 全ての始まりはここから始まった。

 それは幼少期の事だ。

 まだ子供の俺はよく孤児院を抜け出しては夜の空を見上げていたっけ…。

 

 満点の星空、その中に真ん丸に輝く月が見える。

 ルークは夜の空を見上げるのが好きだった。

 こうしてゆっくりとした静かな時間を過ごしているととても心が安らぐのだ。

 

 「ルークお兄ちゃんミッケ!」

 

 しかし、いつもこの静けさを遮るのは彼女、スサナの存在だった。

 俺は少し鬱陶しそうにしながらも彼女に答える。

 

 「見つかっちゃったか?」

 

 スサナは両方の手を広げ座る俺に抱きついてくる。

 頬が擦られ甘えられているのだ。

 だから頭を撫でてやる。

 

 「フヘヘ、お兄ちゃん好きー」

 

 スサナはこう言ってくれるが実の兄弟では無い。

 孤児院で一緒に育った家族だ。

 他にも3人、中の良い仲間がいて。

 辛い時も悲しい時も、もちろん楽しかった時もずっと一緒だった。

 

 「スサナ! ルーク兄に甘え過ぎだよ!」

 

 そう言い頬を赤らめているのはリオン。

 スサナのほうをチラチラと見ている。

 リオンはスサナの事が好きなのだろうか分からないが…スサナと話す時はいつもああしている。

 

 他にもカルナとフィーネが歩いてくるのが見える。

 

 「少し離れて、スサナ」

 

 俺はそう言い立ち上がるとスサナの手を握り孤児院に向かって歩き出した。

 スサナはそれが少し不満だったようで頬を膨らましている。

 

 「どうしたんだ?」

 「だって…お兄ちゃんちょっとしか構ってくれないんだもん!」

 

 そう言うスサナの頬を突くとプスッと空気が漏れる音がした。

 まったく、めんどうだ…。

 子供の頃の俺は甘えてくるスサナにそんな事を良く思っていたっけか。

 

 「ルーク、また夜空でも見てたのか?」

 

 カルナはこの中で一番年上の人間だ。

 大体この中の誰かが喧嘩するとカルナが仲裁に入り仲直りさせてくれる。

 まあ、いわゆる…まとめ役だ。

 

 「お兄ちゃん…」

 

 そしてこっちの、大人しい女の子がフィーネだ。

 フィーネは内気な性格の子で何かして欲しい時は何時も口では言わず服を引っ張ったり、近付いてずっと見つめたりしてくる。

 今回も、そうだ。

 袖を引っ張ってくる。

 だから、俺は手を繋いだ。

 

 「皆! 手を繋いで帰ろ!!」

 

 それを見てスサナがリオンに手を伸ばし手を繋ぐ。

 カルナもまたそれを聞きフィーネの手を繋いだ。

 

 これからも…ずっと5人で仲良く暮らして行くのだろう…。

 そう、あの時は思っていたんだ…。

 

 …

 

 魔力適正試験。

 それは、国が孤児院の子供たちの才能を埋もれさせない為に作った物で、一定の年に一度、選ばれた孤児院で検査が行われる。

 

 もしこの検査で魔力適正が一定以上あると分かれば子供たちは否応なしに魔術学校に入れられるのだ。

 

 魔術学校を卒業すると大半が軍に入れられ、一握りが研究を行う研究者となる。

 

 5人は、この出来事に不安を怯えずにはいられなかった。

 ずっと一緒にいられると思っていた仲のいい家族でもある5人に取っては恐怖だ。

 

 「どうしよう…もし誰か一人でも離れ離れになったら…」

 

 スサナは何時もの元気が無く落ち込んでいるのが嫌でも分かる。

 カルナ以外他の皆も同様だ。

 自分自身でさえも不安なのが分かる。

 

 「まあ、落ち着こ。

 もし離れ離れになっても約束すれば良い。

 大人になったらまた絶対会おうって」

 

 カルナがそう皆を安心させる為に笑った。

 いつもそうだった。

 カルナが皆の心の支えで、中心だった。

 

 魔力適正検査は順に行われ俺の番がついに回ってくる。

 緊張する、血を採血され脈を見られた。

 他にも様々見られ、行われ調べらる。

 頼む、皆このまま一緒に…。

 そう願った…が…。

 

 「見てください! この結果を。

 この子の魔力適正は稀に見る素晴らしいものですよ!!」

 

 助手の男が担当者に興奮気味に紙を見せる。

 

 「これはっ…宮廷魔術師…いや。

 下手をすれば勇者になり得るかもしれん!

 素晴らしい数値だ…」

 

 白衣を着た男はそう言うとその紙にドンと赤いハンコを押した。

 この時期の勇者とは、魔王や近隣諸国と戦争になった際、国民の指揮を上げるために作られた称号だ。

 祭り上げらる、お飾りでしかない。

 比較的に強い人物につけられる称号だった。

 

 「おめでとう…君は魔力適正が認められた。

 明日より我々と共に学校へ来てもらう」

 

 本当は喜ぶべきだったのかも知れないが、あの時は人生で一番最悪の気分だった。

 

 …

 

 孤児院、近く、花が咲き誇る丘にある大きな木の根本。

 そこには小さな子供が入れる穴があり中は洞窟。

 5人の秘密基地だった。

 

 

 この場所は不思議な場所で地下なのに明るく、そして広い。

 中央には赤い鳥居があり本当に不思議な雰囲気を醸し出している。

 

 よくここで遊んだものだ。

 しかし、今は鳴き声が聞こえていた。

 スサナの泣き声だ。

 魔力適正があったのは俺とカルナの二人。

 後の三人は適正が無かったらしい。

 スサナの頭を撫でて抱き締めてやる中。

 フィーネは白い紙に何かを描いていた。

 

 「何してるんだ? フィーネ」

 

 リオンとカルナがそれを覗くとそれは花✿だった。

 カラフルな花。

 一枚一枚色の違う花びらを持つ。

 

 「これ…お守り…」

 

 そう言いながらフィーネはそれを折りたたみ5つに手でちぎった。

 花びらの部分と中央が5つに別れている。

 

 「一人一枚取って…」

 

 そう言いフィーネは一枚ずつ渡していく。

 

 「これ…」

 

 その行動はフィーネにしてはとても珍しい物だった。

 皆キョトンとしながらもそれを受け取る。

 

 5人揃い、花びらを合わせてみる。

 するとそれは一つの花…この木桜の花となり皆を繋いだ。

 ✿❀✿❀✿

 「約束…」

 「ああ…約束だ」

 「う…うん」

 「皆でまた会おう」

 「まあ、すぐ会えるさ」

 

 5人はそう誓いあった。

 また会う約束を…。

 

 …


 今日はここで過ごそうと決めて皆でいた時。

 そしてそれは突如として起こった。

 赤い鳥居が輝き、歌を歌い始めたのだ。

 

 不思議な歌と質素な楽器の音色が洞窟全体に響き渡る。

 『通りゃんせ 通りゃんせ

ここはどこの 細道じゃ

天神さまの 細道じゃ』

 

 赤い鳥居が光を放ち5人の子供達を吸い寄せたのだ。

 

 突如の出来事で鳥居の中にカルナがフィーネがリオンが吸い込まれて行く。

 

 「そんな!!」

 

 いったい何が!?

 

 最後に残されたのは植物の蔓を咄嗟に掴んだ俺とその手を掴むスサナだった。

 

 「スサナ!!」

 「ルークお兄ちゃん…助けて!」

 

 『ちっと通して 下しゃんせ

御用のないもの 通しゃせぬ』

 

 引く力は強く、徐々に蔦が剥がれ体が空中に浮いた。

 スサナの手は徐々に力が抜けていき今にも離れようとしている。

 手が離れ指先で耐えるがそれも少ししか持たない。

 スサナはルークの手を離れ赤い鳥居の中に吸い込まれた。

 

 「お兄ちゃん!!」

 「スサナーー!!」

 

 『行きはよいよい 帰りはこわい

こわいながらも

通りゃんせ 通りゃんせ』

 

 スサナが発した最後の言葉と姿が吸い込まれ消えたと同時に引力と歌、その洞窟を照らしていた明かりは消えさった。

 

 そして残された子供はただ一人…。

 

 「…そんな…皆…」

 スサナ リオン フィーネ カルナ

 

 この四人の名が悲しげに夜空に向かって響き消えた。

 読んでいただきありがとうございます     m(_ _)m

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