三号ダンジョン⑤
音を出す、と言うのはそこそこ有効だったようだ。
偶然、音が聞こえる範囲にいたのだろう。五匹の小鬼が釣れた。
ありがたいことに、俺たちと鳴子の位置関係を考えると、側面からの登場だ。
これなら俺が音を鳴らし続けて注意を誘い、その間に楠葉さんが回り込むという作戦が使える。
俺は無言で楠葉さんに合図を送り、楠葉さんが移動するのを見届けた。
当たり前だけど、音を出し続けていれば新しい小鬼が誘われる可能性もある。
だから俺の意識は「鳴子と誘われた小鬼」「楠葉さん」「自身の背後」の三つに意識を向けなくてはいけない。
前者二つは方向が近いのでまだ良いけど、これで俺が新しい小鬼に襲われでもしたら間抜けすぎる。視線をせわしなく動かしながら、状況の変化を見守る。
小鬼が鳴子にかなり近付いた。
そろそろ音を出すのを止める。
それでも小鬼は鳴子の方に近付いていく。
そこで、楠葉さんが無言で襲いかかった。
背後からの奇襲で、一匹の小鬼を仕留めた。
小鬼の断末魔の声で、楠葉さんの存在がバレる。
「これでもくらえ!」
小鬼の視線が楠葉さんの方を向いた。
俺はその瞬間を狙い、大声を上げつつダンジョンの外で拾っておいた石ころを投げる。
残り四匹の集団だったこともあり、運良く途中で木に防がれず、石は小鬼の一匹を捉えた。
――今回は運が良かったけど、木が多いと射線が通らず、投擲はあまり効果を発揮しないだろうなな。弓を使うのも難しいから、遠距離攻撃は基本的に無しだな。
俺の攻撃により、今度は俺に小鬼の視線が動いた。
そこで楠葉さんがそのまま二匹目の胸板を槍で貫き、絶命させる。
再び楠葉さんに視線が戻るが、もう遅い。
三匹目、四匹目と小鬼は槍に貫かれ、俺が最後に石の当たった奴の首を刎ね、それで終わり。
戦闘は、作戦が嵌まったので僅かな時間で片が付いた。
ただし。
「うーん。あんまり背後から狙うとかは考えなくても良いか? 背後までの移動が大変そうだったし、奇襲役に負担がかかりすぎる。
俺、石を投げた後はあんまり役に立ってなかった気がする」
「あはは……」
小鬼と戦うことより、奇襲の前段階の方が負担が大きかった。
俺は周囲の警戒で緊張したし、楠葉さんはあまり音を立てず、それでも急いで動くのが大変だった。
誘い出し以降の行動は負担の割に、あまり意味がないと思う。
だって、小鬼だし。
昨日みたいに小鬼がたくさんいたのならともかく、五匹ぐらいでそこまで警戒して戦う必要はなかったかな?
いや、練習と思えば無駄ではないか。
やってみないと分からないことも多いし。
とりあえず、鳴子で誘い出せることは分かった。
俺たちは少数だけど、大人数であれば、もっと選択肢は広がると思う。俺の後ろの警戒とかを別の人に任せたり、奇襲役を増やして囲まれる可能性を減らしたりと。
情報の共有は大切だ。
もう知っているかもしれないけど、この方法はあとで騎士団の人にも教えておこうかな。




