一人前の証明④
武器のメンテナンスは職人の手により完璧に。
攻撃を食らっていないけど防具の方も一応チェック。装備して動くだけでも消耗するからね、防具は。
道具の方も戦闘中の激しい動きで駄目になる事があるから、「使っていないから」といって油断はできない。
そうやって準備をしたら、今日も元気にダンジョンに出発。
昨日は武器の損耗をあんまり考えずに戦っていたから失敗したんだ。
予備が一本というのは、けっこう心許ないのかもしれない。
そのあたりをちゃんと考えて動かないと安定した収入が望めないから、武器の手入れをもっと習熟した方が良さそうだ。
この手の技能って、長い目で見ればきっと将来大きな差を生むと思う。
冒険の片手間、一朝一夕で身につく技能じゃないからどこかでまとまった時間を作った方が良いのかな?
武器は高いし、簡単に購入を決められるほど安くはない。
親父が冒険者デビューの選別としてくれた二本の剣。これが俺の生命線であると理解するべきだ。
じゃあ、小鬼相手に武器の損耗を抑えつつ戦うとすれば、どうすればいいだろう?
「よし、殴ろう。殴り殺そう」
答えは単純だ。
素手で、殴り殺せばいい。
いや、素手に拘らず、落ちている石ころを使ってもいいか。とにかく剣以外で小鬼を殺していかないと、先に進めない。
集団を相手にするときは剣を抜いた方が良いだろうけど、全部剣で戦うのは……あ。
違う。
全部戦おうとするのが間違いなんだ。
見付けた小鬼、全部を殺さなくてもいいんだよ。
無駄な戦闘を避けて、最低限の戦闘で先に進むのが、きっと正解なんだ。
そうじゃなきゃ、一人でトランスポートまで進めないはずだよ。
皆が皆、俺みたいに良い武器を持っているわけじゃない。
だったら、俺よりも戦闘回数が少ないはずだ。
うん。きっとこの考えで間違いないはず。
万全の準備と戦闘を出来るだけしない方針。
それにより、俺は二日目でトランスポートまでたどり着くことに成功する。
道中で倒した小鬼の数は、六四匹。
昨日よりも多かったけど、進んだ距離は倍なのだし、何より後半は避けられない戦闘が多かった事を考えると、ずいぶん頑張ったと思う。
武器の修理費用は昨日と変わらず銀貨一枚。
収入だけが、銀貨二枚増えた。
こうして二日で一人前になった俺は、そこそこ使えそうな新人として周囲にアピールできるようになった。
上にはもっと凄いのが居るので大型新人とかは名乗れないけど、これならきっと仲間もすぐに見つかる。
この時の俺は、そんな甘い考えをしていた。