流行病②
多少収入が増えたとしても、のちの出費が大きくなるなら冒険者は動かない。
今回は俺たち以外にも静観を選んだ奴が多く、冒険者ギルドは外のダンジョン破壊を諦め、削りに専念するという決断を下した、らしい。
俺は参加するつもりが無いので、参加する冒険者からの伝聞である。本当かどうかは知らない。
面子を重んじ、ダンジョン破壊は冒険者の仕事と意気込むギルドがそのような決断をするのは屈辱だっただろう。
騎士団を頼りにするしかないというのは、冒険者ギルドの自立性に大きな疑問を投げかけることになるから、この件で領主から色々と言われるんだろうな。
ここまでは俺もそこまで危機感を持っていなかったし、他の連中もそいうだろう。
多少ギルドが厄介事を抱えるのは分かるが、それでも自分の生活を投げ捨ててまで無理をしたくはないし、ましてや命をかけようとも思っていなかった。
ギルドの苦労は目に見えにくいし、これまでもダンジョン破壊に失敗するなどと言う話はあったので、そこまで大事になるとは考えられなかったのだ。
だけど、事態は俺たちが考えるよりも、ずっと深刻であった。
「あれ? なんでまた、外のダンジョン破壊の人員募集?」
「南の森のダンジョンですよね」
「人手が足りなくなったの? 騎士団が向かったはずなのに?」
冒険者ギルドに、また外のダンジョン破壊のメンバー募集の張り紙があったのだ。
俺たちだけでなく、多くの冒険者が内容に目を通し、訝しげな声を上げた。
だが、この張り紙は書いてある通りのもので、新規の募集であった。
ダンジョンは、もう一つあったのだ。
「ちょっと待ってくれ。もう一つ? おいおい、人手が足りないなんてもんじゃないだろ、これ」
「というか、また南の森かよ」
「まさか、三つ目とか言わないだろうな」
最初のダンジョンに多くはないが、そこそこの数の冒険者が向かった。
彼らは冬支度を早々に終えた、優秀な冒険者たちだ。
そして残っているのは冬支度がまだのちょっと駄目な冒険者と、俺たちのように命の惜しい冒険者だ。
すでに、外のダンジョンに向かえる人員はいない。
「騎士団って……全部は動かしてないよな? まだ、余剰人員はいるよな?」
「いや、難しいんじゃないか? それに、騎士団に全部任せるような事になったら……」
「まさか、ギルドが……」
こういった事態になると、冒険者ギルドの存在意義が、根っこのところから問われる可能性があった。
ダンジョン破壊に何も貢献できないとなると、ギルドが騎士団などに接収され、冒険者が兵隊へと強制的に変わる可能性が出てくる。
失敗したとしても、モンスターの数を削るという貢献でギルドは独立性を維持している。
冒険者がある程度の裁量、自己管理という名の放任が許されているのも、冒険者ギルド所属だからだ。兵隊になれば、そういった自由はない。
ここで俺たち、他の冒険者を含む誰もが動かなかったとして、いきなりギルドが無くなるという訳ではないだろうが……そこまで先の事は、俺では分からない。
何も知らない子供の、ただの悪い推測だ。
それが無責任な話だと分かっているけど、俺はただ、悪い未来が来ない事を願うだけで、他に何もできなかった。




