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一人前の証明②

 海月の迷宮型ダンジョンの入り口は山裾にある。

 その入り口はごく普通の洞窟に見えるんだけど、一歩足を踏み入れればそこから先はモンスターが出てくる危険な世界だ。

 俺は入り口を守る衛兵に冒険者ギルドで貰った木片を見せ、中に入っていく。


 子供が一人で入ろうとすれば何か言ってくる奴もいる、という事は無かった。

 入ってすぐのところで戦うだけなら俺ぐらいの歳でもできなくはないし、何より人を見る目のある衛兵っていうのは俺のようにダンジョンを経験した奴をかぎ分ける。年齢よりも実力を察して何も言わない。

 他の冒険者からであれば何か言われると思っていたけど、「一人前の証明」の事を知っているからだろう。彼らも特に助言やからかいの言葉を貰うことは無かった。



 そうやって初めて足を踏み入れた海月のダンジョンは、驚きも何も特になかった。

 親からの教育の一環で既に他のダンジョンに入ったことのある身としては、久しぶりだな、と言う感想しか出てこない。


 薄暗く、じめじめとした空気。

 迷宮型という事で人工物にも見える石造りの通路。足場の方はややデコボコしているものの、おおよそ平らで戦いやすい。広さの方も一人で剣を振るう分には申し分ないどころか、前衛四人ぐらいが並んでも大丈夫そうだ。

 なぜか設置されていて、燃え尽きる事の無いロウソク。このロウソク、光源としては助かるんだけど、取り外してしまえばモンスター同様すぐに消えてしまう。これで儲けを出すことはできない。灯りとして期待できるからそれで満足すべきなんだろうけど。


 で、どこからともなく漂う血と肉の腐った臭い。

 この臭い空気だけで、ダンジョンに入りたがらない一般人は吐いてしまう事もあるという。

 森林型ダンジョンであれば風で臭いも薄れるんだろうけど、迷宮型はそういった点では不利だ。あまり環境が良くない。



 迷宮に足を踏み入れ、体感で百も数えないうちに小鬼が現れた。

 入ってすぐのため、数は一匹。ダンジョンでも端っこの方であればあまり強いモンスターが出てこないばかりか、その数も少ない。


 小鬼は緑色の肌をした、頭に角の生えた人型モンスターだ。

 体は小さく非力でとても弱く、十歳ぐらいの男であれば普通に勝てるだろう力しか持っていない。頭の方もかなり悪い。

 問題はモンスター特有の闘争心の方で、例え腕が切り飛ばされようと体の骨を砕かれようと、とにかく侵入してきた人間を殺そうとする点だ。

 それに非力であっても人は殺せるしな。


 こいつら、弱い事は弱いんだけど、殺意だけは高い。

 殺意を向けられる事に慣れるまでは強敵かもしれない。

 ある程度進めば群れて出てくるし。

 慣れるまでは大変だった。


「あ、骨に当たったか」


 もちろん慣れている俺にとっては、何の脅威でもない。

 首の高さで剣を横に振れば簡単に殺せる。


 ただ、俺の振るった剣は小鬼の首の骨に当たってしまい、首を刎ね飛ばすことには失敗してしまった。

 獲物である剣の損耗を考えるとあまり嬉しくない結果だ。


「なんとかなるかな?」


 追加の敵はいない。

 俺は剣の状態を確かめると、油断なく奥へと進むのだった。

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