新戦力①
喧嘩騒動を起こした事で、俺の評判は更に悪くなった。
ただ、一部の冒険者からは臆病ながらも実力はある」と思ってもらえたようで、悪い事ばかりでもない。
そういった認めてくれるのは大概が大先輩達であり、俺のパーティメンバー加入に直結しないのは困りものであったが。
彼らには彼らなりの理屈があり、俺には俺の考えがある。
どちらが正しいとかそういう問題ではなく、どちらにより共感できるかという話だ。
新人連中にしてみれば俺の言葉には反発を覚え、枝村を詰っていた奴には共感を覚えると言う事だろう。
リーダーがしっかりするべきで、リーダーなんだから何かあったら責任をとれと。そう言いたいらしい。俺とは根本的な部分で相容れない考え方だ。
もっと自分で考えろって言うのは、贅沢な要求なのかね。
リーダーを選んだのは、従う事を選んだのは自分だろって言うのは、厳しい考えなのかね。
選ぶ自由は、あったんだがなぁ。
そうやって評判を悪くした俺だけど、ようやく仲間が増える運びとなった。
楠葉さんの妹、『撫子』さんが加入したのだ。
冒険者では珍しい「魔法使い」の加入に、俺の期待は否が応でも膨らむ。
「撫子です。お姉ちゃん共々、よろしく御願いします」
「三筋十夜だ。これからよろしく頼むよ」
撫子さんは、楠葉さんと同い年の俺より一つ年下だ。
楠葉さんよりも小柄で、俺より頭一つ背が低い。少々痩せ気味で発育も良くなく、ここまで体が小さいと体力面では不安が残る。革鎧でもきつそうで、布鎧が精々かもしれない。
ただ、魔法使いだ。元素魔法という俺では扱えない魔法を使える、凄い戦力なのだ。遠距離攻撃の専門家、威力の高い一撃は大型モンスターと戦う上で非常に頼りになると噂される魔法使い様だ。俺はかなり期待している。
一応、俺の悪評についても説明しておいたが、そちらは姉と同じく気にしないらしい。
それよりも金銭収入の方が大事らしく、とにかくお金を稼ぎたいと言っている。
魔法使いになるために、そこそこではなく、かなりの出費があったようだ。それを理解しているから、姉よりもお金に厳しそうな気がした。良い事だと思う。
「まずは慣らしからかな。小鬼相手に戦ってみて、戦いの感覚を掴むところから始めたいんだけど、大丈夫かな?」
「任せて下さい! 小鬼の相手は学校でもよくやっていたんです。バッチリですよ!」
体力の無さを気にしていたが、見た目ほどヤワではないようだ。撫子さんには戦闘経験があるという。
頼もしい言葉に、思わず俺も笑顔になる。
全くの素人ではなく即戦力の加入。
これで撫子さんも鬼角犬とも戦えるようであれば、そろそろ先に進む事を検討してもいいかもしれない。
本音を言えばもう一人ぐらい仲間は欲しいけど、さすがにそれは贅沢というものだろう。今の段階では難しい。
俺と楠葉さんの稼ぎは、合計すると一日に銀貨十二枚。
一人六枚で安定している。
先に進む事ができれば、これを一日平均十枚以上に増やす事も不可能ではない。
鬼角犬の更に先に行けば、二十枚だって狙えるのが冒険者だ。
そこまで行ければ、親父達と同じ成功者として冒険者を引退できる。
そこまで行けなければ、日銭稼ぎの底辺冒険者で終わってしまう。今からでも他の仕事を覚えろと、親父達から言われかねない。
ここから先は、俺たちにとって重要な試金石。
冒険者としてやっていけるかどうかを占う大事な場面だ。
俺は先の事を考える。
ほんの少し、緊張してきた。




