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一歩目①

 どうせなので、楠葉さんにも鬼角犬と戦ってもらうことにした。


 何かあればフォローする。

 最悪、怪我をしても治せるので、嫌そうにするところを説得してみた。

 楠葉さんは小さい声だが「やっぱり……」と言っていたので、俺が鬼角犬と戦うと言い出した時からこうなることを予見していたみたいだ。





 楠葉さんは、あのパーティで鬼角犬の相手を何度もしていた。

 その時は盾で攻撃を防ぎぐだけの役割だったらしいが、それでも経験者であることには変わりない。



「せいっ!」


 鬼角犬と対峙した楠葉さんは、とにかく相手を近寄らせない事に集中していた。

 もともと、槍の間合いは剣よりも離れている。近寄られる前に終わらせるのが基本だ。

 一撃の威力よりもとにかく早さを、手数で攻めて隙を作らない。

 本命、必殺の一撃は相手の足を一本でも殺してからしか使わない。そういった戦い方をしている。



 普段の小鬼相手であれば、全部必殺の一撃にした方が早いし疲れない。

 相手の動きが遅いのであれば、その方が効率が良いのだ。


 しかし鬼角犬は犬の姿をしたモンスター。

 小鬼などよりずっと力があるし、動きの早さに至っては比較する気にもならない。いきなり強くなり過ぎだと思う。

 もう少し先に進めば、これが複数出てくるというのだから泣けてくる。

 今は、一匹を相手取るので精いっぱいだ。



 楠葉さんはけん制の突きで顔を狙いつつも、相手の攻撃を避けた時に見える柔らかい横腹を切り、確実にその命を削っていく。

 そして動きが徐々に鈍くなったところで足の肉を大きく切り裂き、鬼角犬最大の武器である早さを殺した。


「これで!」


 そうなっても、楠葉さんは油断しない。

 これまで通り相手の攻撃をかわし、体勢を崩したところに合わせて心臓を抉った。


 殺された鬼角犬の姿が消え、足元に魔石が残る。


「疲れた~」


 楠葉さんは周囲の警戒をする余裕もなく、その場に座り込んだ。

 俺がいるからとはいえ、ずいぶん油断している。

 いや、俺がそれだけ信用されているという事か?



 楠葉さんは疲れ切っていたし、少し休憩した後、今日は帰ることにした。


 この日の戦果は小鬼八二匹と鬼角犬二匹。

 銀貨にして十枚分で、俺が一人で稼げるほぼ上限とあまり変わらない。


 だんだん調子が上がってきたね。

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