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戦力把握⑤

 小鬼の魔石が八十六個。

 銀貨八枚が今回の収入だ。


 積極的に、何度か二人で戦闘を繰り返したけど、収入の方はそこまで増えなかった。

 むしろ、俺は一人の方が儲かるという結果だ。

 鬼角犬の方も試せばもっと収入は増えるけど、しばらくその予定はない。





 ダンジョンを出て、二人で反省会を開くことにした。

 いや、反省会と言うほどでもないか。一緒にダンジョンで戦ってみて、どうだったかという話し合いである。


 座れればどこでもいいかと、あまり人が来ない更地に二人、腰を下ろす。



 最初に出たのは収入の話題だ。


「二人で戦っていても、小鬼を探す手間を考えると、限界があるよね」

「ええ。前半の戦闘を避けて奥だけで戦えば銀貨十枚も目指せるけど、それなら一人で戦っても変わらないわよね」


 もともと、ダンジョンの中では移動と休憩の時間が大半だったからだ。


 単純な話、二手に分かれた方が索敵範囲が広がるので、戦闘回数が増える。

 二人で戦っても、戦闘時間はあんまり減らない。俺たちは一人でも小鬼相手にそこまで苦戦しない。


 楠葉さんは一人で六匹の小鬼を倒せるほどではなかったが、それでも四匹の集団ぐらいなら何とかなる。五匹では余裕がまったくない。二人で分担してちょうどいいと言った有様。

 一人前になるために一人でいた時は、終盤の戦闘は避けていたという。まぁ、それも冒険者としてやっていくうえで正しい選択肢だろう。



「でも、一人でダンジョンに行くのは、やっぱり怖いわ。パーティメンバーがいないと、何かあった時に死んじゃうから。

 それを考えると、収入は減っても二人でいたいの」

「ああ。今日の収入はともかく、先を考えれば悪くもない。このままの方が良いね」


 酷い話だけど、ただ稼ぐだけならしばらく一人でダンジョンに行くっていう選択肢がある。

 何のためのパーティだ、と思わなくも無いけど、効率だけを考えればその方が儲かるのは確かだ。


 ただ、それをする理由が弱い。

 ちょっとした収入減にはなったものの、将来を見越せば必要な投資だ。今、我慢するだけで一年後や二年後はもっと儲かる。

 なにより、まだ黒字だ。赤字ではない。



 あと、俺が仲間を探していたのは先に進むためだからな。

 仲間がいないとダンジョン内で野営ができないし、先に行けば俺一人では危険な敵も出るだろう。

 いま、一人で戦えることと先の話は全く違う。


 先に進むために求めているものを考えると、逆に効率が悪くなる。

 そこを間違えてはいけないのである。



 楠葉さんは一人で戦う事を怖がっているが、それは俺にとってありがたい話だ。

 危険を出来るだけ避け、安全に、より大きく儲けたい俺と意見が合う。


 その後も連係で「ああしてほしい」「これを試したい」という意見をぶつけ合って、夕食の時間になると解散した。


 明日からはトランスポート近辺で小鬼を狩るのでもう少し状況はマシになる。

 収入減に焦らず、今のうちに、二人肩を並べて戦う事に慣れておこう。

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