九敬 楠葉①
「ちょっと、話が違うじゃない!」
声が聞こえたのは、メンバー募集のエリアではなく、魔石の換金エリアの方だ。
女性の声は大きくて聞こえるけど、その仲間の声はここまで聞こえない。騒いでいるのはあの女じゃないけど……大声の女と縁があるね。
「話が違う」だからギルドとの揉め事ではなく、冒険者仲間との揉め事かな?
俺はちょっとした好奇心で野次馬をすることにした。
「なんでよ! ちゃんと仕事はしたじゃない!!」
「だからちゃんと説明しただろうが。魔石は倒した人間のものだと。パーティだから頭割りにしないと。人の話はちゃんと聞けよ」
「でも! 盾役なのよ! 倒すための役割じゃなくて、守るための役なのよ!」
「その役をきっちりこなせてないから、取り分が無いんだろうが」
「なんでよ! ちゃんとできてたじゃない!!」
騒ぎを起こしているのは、男女混成パーティだった。
人数は男六に女が四人。
装備を見る限り、俺と同じ初心者ぐらい。そこまで良い物は持っていない。
装備についた傷、足周りを見れば損傷が大きいので、鬼角犬を相手にしていると思われる。
ただ、ほとんどの奴はまだこれからって気はするけど、一人だけ、女性と言い争っている男だけ頭一つ抜けている感じかな。彼がパーティのリーダーっぽい気がする。
言い争っている内容に関しては、よく聞く話。報酬の取り分に関するものだ。
盾役、壁役は防具の損傷が激しいのでちょっと取り分を大目に渡すか、パーティ資金で賄うのが普通。
それを頭割どころか出来高制、魔石は倒したやつの者だって言えば、そりゃ揉めるだろ。
普通は引っ掛からないはずなんだけど、あの女性は見事に騙されたようだ。
言い争いの方は激昂した女性に冷静に返す男といった形だ。
で、言っている内容を冷静に見れば女性の方が正しいと思うけど、大声で騒いでいるから女性の方が悪者に見えてくる。
たぶんも何も、それを狙っているんだろう。
男の側に付いた仲間たちは何も言い返さないし、その様子をニマニマと笑いながら見ていた。
計画的な行動だと思われる。
「装備を買うのに借金までしたのよ……。どうしろって言うのよ……」
「ま、次で稼げばいい話だろ。頑張ればなんとかなるさ」
そして、タチが悪い。
おそらくこのままパーティメンバーとして縛り付け、借金で身動きできなくするつもりだと思う。
これならパーティ追放の方がまだマシなんだけど、彼女が気が付いていないなら、助けてみようかな?




