臆病者③
冒険者ギルド内での言い争いは、女が連行されるという、俺にとってそこそこ良い形で話が終わった。
これが喧嘩両成敗などになれば俺の評判が落ちるし、仲間集めにも悪影響が出る。
案の定、あの女は取り調べの時に嘘を吐きまくり、取り調べをしたギルド職員の不興を買ったようだ。
あまりに嘘が多いので話の整合性が取れず、ギルドは俺の個人的活動状況も把握しているので、あの女の発言はすぐに嘘だと発覚したのだ。
関係者だからと教えてもらったこの話を聞いて、あの女はやっぱり馬鹿なんだなと思う。せめて正直に言えばまだマシだったのに。
周囲へは俺が絡まれただけ、女は非常識だったと分かってもらえた事で、俺は「もう大丈夫」と自信を持った。
あとは女が逆恨みをしてまた突っかかってくることが予測されるが、何度もああいって愚かな行為をし続ければ、ギルドの利用もままならなくなる。
最悪は冒険者資格のはく奪で、冒険者でなくなれば収入が途絶える。悪質であれば法的処分も言い渡されるだろう。
さすがにそこまで馬鹿じゃないと思いたい。
あの騒動からさらに十日、メンバー募集をかけてから二十日が経過した。
応募は未だに無い。
あれから小鬼で稼ぎを確保しつつ、鬼角犬に慣れるための挑戦を何度もしている。
メインを鬼角犬に切り替えることも考えたけど、それをするのは仲間が集まらないと厳しい。ダンジョンに一人で泊まり込みはしたくない。
もう一対一なら確実に勝てるし、三連戦をしても大丈夫なぐらい戦い慣れたので、できればもう少し奥まで進みたいんだけどね。深夜の番を考えると、できれば三人は仲間が欲しいんだ。
「応募、無いですか……」
「ええ、新人さんは見かけるんだけどね。私も声をかけているけど、なぜか貴方の募集は嫌がるの」
ギルドの受付さんとは何度か顔を合わせているので、ちょっとした世間話が出来る程度になった。
メンバー募集の受付は、列が並ぶほど人が来ない。多少の雑談をする余裕がある。
仲良くなればちょっとした忖度もしてくれる。
こちらの事情、気持ちを察して手助けしてくれるのだ。
仲間が欲しい俺に対し、受付さんは声掛けでどうかと聞いてくれている。
なのに、仲間の応募は全くない。
じゃあ、新人はどうやって仲間を探しているのか?
どこに所属していくのか?
仲間探しをしているのなら、どこか評判のいいところを見付けているのか?
俺の所を避ける理由は分からないが、その行先も疑問だ。
そう思っていると、受付さんは嫌な事を教えてくれた。
「前に十夜君と騒ぎを起こした女の子を覚えている? 彼女のところに集まっているみたいなの」
「は、い? あんなのの所に?」
信じがたい事に、馬鹿女は順調に人を集めているらしかった。




