仲間探し⑤
よく見ると、七人の冒険者のうち、六人は軽い怪我をいくつもしている。
主に足だが、ロクに防具を身につけていないので噛まれたり爪で引掻かれたような痕が見られる。
うん。
俺はああはならないようにしないといけないな。
無駄に怪我をする趣味は無い。堅実に戦うべきだ。
「ちょっと! 何を見ているのよ!!」
「ああ、すまん。邪魔をして悪かった」
そうやって彼らを観察していると、唯一怪我をしていない女性が俺に向かって怒鳴りだした。
同業者からジロジロと見られれば、そりゃあ不快になるかと思い、俺はすぐに頭を下げた。
今のはこっちが悪い。
近くに居ればトラブルになるだろう。
そう判断した俺はすぐにこの場を離れようと移動を始めたが、その背中に声を掛けられた。
「ちょっと、アンタ。ねぇ、包帯とか持ってない? あったら分けて欲しいんだけど」
「残念だが、俺は独りで来ているからな。余分な荷物は持ってない。持って来れない」
怪我人が多いから、治療に使う道具が足りないんだろう。俺の荷物をアテにするような発言をしてきた。
が、言い方が悪いとか以前に、人に何か分けられるほど物を持ち込んでいない。俺は考える必要もないなと思い、振り返り相手の顔を見て断りを入れたのだが。
「それはこっちで判断するわ。いいから荷物を見せなさい」
「はぁ?」
この女は、俺の言葉を無視して荷物を見せろと言い出した。
正直、頭の出来を疑うような発言だ。
これは関わり合いにならない方がいい手合いだ。無視するに限る。
俺は振り返ったことを後悔しつつ、さっさとこの場を離れることにした。
「ちょっと! 待ちなさいよ!!」
後ろで女が何か騒いでいたが、追っては来ないようだ。
他の連中が女を止めようとしているような声も聞こえた。あの連中の全員が女に同調している様子ではないらしい。
俺はその事に心から安堵する。
あと、女が大きい声で騒いでいるので、俺とは別の方角からモンスター、このあたりならまだ小鬼の集団か? そいつらが近づいてくる気配がする。
見たところ、まだ装備は壊れていないし、ここはまだトランスポートに近い。
鬼角犬を倒しに来た連中であれば、小鬼ぐらいどうとでもなるだろう。いざという時の逃げ場もある。
俺はアホらしい女とその一行を思考から追い出し、鬼角犬を探すことにした。
今日の目的は鬼角犬との戦闘経験を積む事だからな。
無駄な事に時間をとられそうになったけど、まだ余裕がある。せめて三回は戦いたいな。




