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プロローグ

 「世界の真ん中であなたを待ち続けています。」

 そうあの人に誓ってもう4年の月日が流れる。


 私の母は東大の卒業生で私の父はあの世界一のハーバード大学の卒業生だ。そう、私の家はエリート家系だ。だから、勉強のことに関してはすごくうるさかった。

 幼稚園の頃から塾に行き熱心に勉強をしてきた。有名私立小学校に入学するために。友達と遊ぶ暇もないくらい勉強に励んでいたがしかし、受験当日体調を崩し受験は失敗に終わった。親にも呆れられ近くの公立の学校に通うことになった。私は両親に申し訳なさで心がいっぱいだった。公立に行っても勉強に励んでいた。

 行きたい私立中学校が見つからずそのまま公立中学校に進学した。初めての定期テスト、5教科で498点。順位はダントツ1番だ。親に嬉しそうにこのことを報告すると


 「なんで満点じゃないの?ほんとにあんたには呆れた。」


 この日から寝ずに勉強をした。そして日本一の最難関高校を受験した。しかし、今度も幼稚園の時と同じように体調を崩し失敗に終わった。仕方なく滑り止めで受けていた私立高校に入学した。親は完全に私のことを見損なっている。


 ここまでが私が高校に入るまでの環境。私は友達と遊びに行ったことすらない。そもそも友達なんていない。恋なんてなにそれ?って感じ。



 恋というものがこんなにも愛おしくて苦しくて。この頃の私には分からなかった...



 入学式の日。茶色のブレザーに無地の紺色のスカート。胸くらいの長さの髪の毛を後ろでひとつに縛り家を出る。この日は晴れに近い曇り空だ。本当は自転車で向かうはずだが何となく徒歩で学校に向かった。


 学校に着くと下駄箱の窓にクラス名簿が張り出されていた。

 私は、"山崎 澄麗"と書いてあるクラスを一生懸命探した。


 (あった!1年2組だ!)


 私はビニール袋の中に革靴を入れ鞄の中から上履きを取り出した。階段で3回まで登り、1年2組の教室へと向かった。


 教室に入り黒板に貼ってある座席表を見ると廊下側の前から2番目。良い席だろう。前の方の席の方が授業にも集中しやすい。


 席に着いて数分後、担任の先生が教室に入ってきて教卓に立った。


 「1年2組の担任になりました。佐藤(さとう) 裕美(ひろみ)です。1年間よろしくお願いします。」


とハキハキと自己紹介した後に黒板に"佐藤 裕美”と書き出した。


 佐藤先生の合図で廊下に名簿順並び体育館へ移動した。体育館へ足を踏み入れ、俯いていた顔を上げるとステージの上には


 "第42回 栄海学園入学式"


と大きく書かれた看板が天井からぶら下がっていた。


 生徒が全員入場し終わり長い長い校長先生の話が始まる。聞く気にもなれない。周りを見渡すとみんなボーッとしている。

 長い長い校長先生の話がやっと終わり生徒会長の挨拶が始まる。生徒会長がステージに立った瞬間女子特有の黄色い声がとぶ。周りはざわついている中私だけがおいてけぼりだった。


 「どーも。3年1組、生徒会長の大園(おおぞの) 海斗(かいと)です。1年生のみなさんご入学おめでとうございます。高校生活での3年間は長いようで短いです。みなさんが悔いのない学校生活を送れますように。」


生徒会長は笑顔で挨拶をした。


 「生徒会長まじイケメーン!」

 「モーやばいー照れる」

 「彼女とかいたりするのかな?」


 私は周りの人の会話に全然ついていけなかった。そもそもかっこいいと思わない。まず男に興味がない。でも心の奥底には彼女たちのようにかっこいいと思う男を語ってみたいという思いもあったが私にはそもそもかっこいいと思う男に出会ったことがない。


 入学式が終わりほっと一息。下駄箱から校門までの道の両端には満開の桜の木が並んでいた。それをみながら歩いていると前から走ってくる男にぶつかった。私は思っきり転倒し何が起きたか一瞬分からなかった。その男は私に手を差し伸べ


 「大丈夫ですか?」


と笑顔で一言。風邪で揺れる髪の毛、鼻筋がとおり、ぱっちり二重の目。厚くて赤い唇。そして、背景には満開の桜。


 私はこの時初めて人をかっこいいと思った。彼に見惚れた。時が止まった気がした。彼は私にもう一度、


 「大丈夫ですか?」


と笑顔で一言。私は答えることすら忘れてた。私は顔全体まっ赤に染めて


 「あっ。大丈夫です。」


と言い、彼が差し伸べてくれた手に捕まって立った。


 「じゃぁ。」


とだけ言って彼は走り去って行った。



 今まで知らなかった世界に飛び込んだような感覚を覚えた。彼をかっこいいと思ったあの瞬間に私は女の子に慣れたような気がした。


 彼にまた会いたくても学年すら知らない。こんな経験初めてたがら知り方すらわかんない。まずどうしていいのかも分からない。

 勉強のことで埋まっていた私の心は今は彼でいっぱいだ。


 家へ帰る帰り道、私は彼とどうしたら再び会えるのかばかり考えていた。

 大体、彼は私のことをなんとも思っていないだろう。あんなキラキラした彼がこんなにガリ勉で地味な私を可愛いなんて思うはずがない。ただぶつかった相手としか思われていないだろう。そう思うと何だか虚しくなった。


 家へ着いても母も父も仕事なので家の中は1人だ。玄関で靴を脱ぎ自分の部屋に直行し勉強を始める。何故だろう?勉強が手につかない。まるで魔法にかけられているみたいだ。こんな経験はない。勉強が手につかない日なんて今日が初めてだ。



 私はこの時知らなかった。彼をかっこいいと思ったのが恋の始まりだということを。

またその恋により人生が180°変わることも。

この恋は苦しくて甘くて胸が締め付けられるような恋になることにも。


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