さよなら
ラスト。
連続投稿ラストであり、物語のラスト。
あの日以降も彼女は、いつもと変わらず接してくれる。
別に気まずいとか、そういうことはない。
ボクは時間が許す限り彼女の側にいる。
彼女が側にいてくれればそれで良いと思っているし
多分、彼女もそれを理解してくれていると思う。
ボク達は、ただ、のんびりと共通の時間を過ごしている。
時折、彼女が
コンコン…コンコン
「何?」
『フフッ、なんでもないですよ~』
コンコン…コンコン
「何?」
『私、なんにもしてないよ~。うふふ』
「コラ!」
ってやりとりを楽しんだりする。
『ねぇ?』
「何?」
『ううん。呼んでみただけ』」
ちょっとだけ気になる事があるとすれば
時々だけど彼女は暗い表情を見せる気がして
「どうしたの?」
と聞くことがある。が
『何が?貴方こそどうかしましたか?』
と微笑むのであまり気にはしてない。
そういう訳でいつもと変わらない日常は続いている。
と思っていた。
■
その日は突然やってきた。
『もし、もしですよ、私がいなくなったらどうします?』
「え?考えたことなかった」
『もぅ真面目な質問なんですよー』
水槽の中で手足をバタバタさせる。
手足をバタバタさせるのは久しぶりだな、なんて笑ってみてると
『もう、ニヤニヤしながらじっとこっちを見つめて、恥ずかしいです』
とちょっと拗ねた。
ボクはこんなやり取りだから、いつもの冗談だと思い適当に話を流した。
これからも、こんなやり取りがずっと出来ると思っていたから
思いたかったから。
翌朝起きると、彼女は眠っていた。いつもはボクより
早く起きて、おはようございます。と声をかけてくるのに。
「もう朝だよ。起きたら?」
彼女は目を覚まさない。
「?」
「どうしたの?」
彼女は苦しそうな表情をしてうっすらと目を開けた。
『お別れの時が・・・もう、きちゃったみたい』
「えっ?!」
『もうちょっと・・・時間があると思ったんだけど・・・』
「え?え?え?ミイ、何言ってんの?」
『ごめん・・・ネ』
彼女は一生懸命笑顔を作ろうとするが苦しそうな表情は消えない。
「嘘だ!嘘だ!嘘だ!」
『楽しかった・・・よ』
「!!」
『そんなに哀しそうな顔・・・しないで』
『私は別に無くなるわけじゃないから』
「!」
『どこかに生まれ変わる・・・はずだから』
『きっと、どこかで・・・会えるから』
「・・・」
『さよならじゃないよ。いってきます・・・だよ』
彼女は苦しそうだが、それでも一生懸命ボクに笑顔をむけようとする。
ボクはそんな彼女をじっと見つめることしかできない。
「・・・」
『あれ?どうしちゃったのかな?目がかすむ』
『ほんとは、ほんとはね・・・もうちょっと、お話してたかった』
彼女はくしゃくしゃの泣き顔をした。
ボクは耐えられず、うつむいてしまった。
『あ・り・が・と・う・・・いってきます』
彼女の声が聞こえなくなり
ボクは恐る恐る顔を上げ、水槽の中を見つめた。
彼女の姿は水槽からなくなっていた。
「っ!!!!!!」
■
ボクはしばらく落ち込んだが
時間の経過とともに、笑ったり、食事したりと
普段の生活を取り戻した。
彼女を失った悲しみや彼女のことを忘れている時間が
多くなる自分に嫌気がさし
彼女のことは、記憶を封印するかのように忘れた。
そして時は流れ数十年後
昼食を食べに行こうと会社を出て街を歩くボクに後輩が話しかけてくる。
「せんぱーーい。先輩の開発したゲーム、大ヒットですねー」
「あぁまぁね」
適当に答えるボク
「凄い人気っすよー。このAIゲームアプリ
ホームホーム ~イケメンと過ごす90日~
生意気な対応をするイケメンの設定が斬新だって評判っすよ」
「そうだね」
適当に言う。
「でも、あれ本当っすか?
当初、このゲーム、ちっちゃい女の子にする予定だった。って」
「あぁ・・・」
ボクは空返事を返す。
「ちょっと危ないっすよね、っていうか聞いてるんすかー?せんぱーい」
「あぁ・・・」
向こうから、女性数人が歩いてくる、昼休みだ、よその会社のOLか何かだろう。
そんな女性達とすれ違うとき、ふと一人の女性に目がとまった。
とびきりちっちゃいけど黒髪でどこかでみたことがあるそんな顔。
ボクが振り返ると、ちっちゃい女性も振り返っていた。
そして彼女は、いたずらっぽく微笑み、何か口を動かした。
『た・だ・い・ま』
なぜか涙が止まらなかった。
「おかえり・・・」
以上おしまいです。
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