(3)
「まったく、どいつもこいつも……。」
近場にあった簡易的な椅子を蹴り飛ばすと、豪快な音がして破壊された。
「未だにスフィア以外に成功例が無いんじゃ、
ボクの研究も野望もまだ先の話じゃないか。」
光る電子板をリズミカルに叩きながら呟く。
「いい加減、クレアにもちゃんと手伝ってほしいんだよなぁ。今はまだ良いけど。」
そばにある沢山の円柱状の容器の中には幼い裸の灰色の犬獣人や鳥獣人が、
容器1つ1つに収められており、それぞれ眠っているかのように小さく縮こまっていた。
電子板を叩き終わると、それぞれの容器の下から泡が溢れてきて、
中の獣人達の顔が少し苦痛に歪むのが見える。
その様子を確認することなく、男は部屋を後にした。
別の部屋に男がたどり着くと、苛立たしく声を張り上げる。
「クレア!聞こえてるんだろう?スフィアの状況を電子板で連絡してくれ。
あぁ、今すぐじゃなく後で良い。今日はもうボクは帰るから、セキュリティーロックは任せた。」
「珍しいですね。クロード博士はどちらへ行かれるんです?」
「ちょっとストレス解消だ。戻るのは明後日かな。
あ、妙な真似をしたら分かるから。キチンと業務をこなしてくれたまえ。」
「……了解です。」
音声機械から聞こえるクレアの声を確認してから、
男は手早く全裸になり、滅菌室を通りクリーンルームへ移動した。
クリーンルームでは全身を液体に包まれ、再洗浄される。
暫くすると液体が無くなり、全身を温風で乾かされていく。
それが終わるとようやく奥の扉が開く。
無言のまま男は扉の先にある部屋で、適当な衣類を着ると、部屋を後にした。
男が向かった先は、なにものにも縛られないのが当たり前のような場所。
国家、法律、権力、思いつくもの全て。そういう場所。
建物も多いが濃い霧が今日は掛かっているようで少し肌寒い。
「ずいぶん身なりの良い奴だな。全部置いていけば命くらいは助けてやるかもしれないぜ?」
男は囲まれていた。そして溜息をついた。
「今のココは随分と下らない奴らが多いんだな。
せっかくの休日でデートの予定を入れたってのに、服が汚れるじゃないか。」
「何言ってんだ?いくぜぇ!」
囲んでいた男達が各々に飛びかかっていく。
男が右手を一振りした瞬間、十数人居た男達が全員消えた。
「まったく、材料にすら値しない……。」
男はそう呟くと歩きだし、霧の奥へと消えていった。




