表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
魑魅魍魎《スタマミツハ》  作者: 勾陳令吾
覚醒の黄昏
3/3

黄昏と東雲 III

「貴方は遺跡の東側、神殿近くの凱旋門広場にて倒れていました。迷宮から出てきたのを目撃した者もいました。よくわからない言語を使い、遺跡を彷徨っていたと」

「周囲の人々は気味悪がって近くのを恐れている。そこに、私の娘たちが通りかかった。そのときに妹が聴いたらしいのですよ」


「何をですか?」


「"虫の知らせ"です。占星術による魔法の一種で霊能系の魔法。妹もまだ幼いものですから、それが何かまでは分からなかったらしいのですが…」

「姉と相談して家に連れて帰ることにしたそうです。私もいるし、何よりお爺ちゃんに聞けば分かると思ったのでしょう」


「そうでしたか…」


空が暗くなってきた。薄明の正体は黄昏だったか。けれど、木々が騒がしい気がする。男性も外を気にかけているようだ。


「お父さん!」

ドアを勢いよく開けて、先ほどの妹が入ってくる。その後ろには薔薇色の髪の少女、姉であろう少女が立っている。


外と内を隔てている窓が、ガタガタと震える。窓に闇がぶつかっているようだ。


「カゲロウがっ」

妹がそう言いかけた瞬間、窓ガラスが割れて、内に闇が入ってきた。


会話を羽音に遮られ、光が曲がり周囲を認識出来ない。カゲロウを追い払うように妹を守る姉。父は姉妹を部屋から追い出す。


「にげろっ」

念動力のような遠隔魔法で姉妹を運び、ドアを閉める。


父は男を掴み、壊れた窓から外に出る。カゲロウの羽が身体に触れて、傷だらけだ。


男はただうずくまる。父は男を庇うように、魔法を使い抵抗している。カゲロウにもそれなりに効いているのか勢いが弱まる。


屈折が終わり、羽音が止んだ頃には、傷だらけの父親とうずくまる男だけが残されていた。


父親に駆け寄った姉妹は、惨劇に唖然としていた。しばらくして、妹は父親の手を握り静かに泣き、傷を負った姉は妹をただ見つめている。


東の空から日が昇る。晴天に恵まれた気持ちのいい朝だった。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ