幼少編 ~その5~
炎の出る魔法は、ちゃんと出た。ただし、出方がおかしい。
もう一回、右手で炎が出る魔法を使ってみる。
また、無くなった腕が指先まで生えて、赤い光が、流れるように指先まで光ってから炎が出る。
そして、半透明な腕は消える。
どうやら、魔力に反応して生えるらしい。
見えていた半透明な腕は、魔力そのものだろう。思考すると魔法が使えるので、動く義手に、魔力を通してコントロールしたら、自由に動かせるかもしれない。
自分のハンディキャップの対策に、希望が見えてきた。
前世で地球に住んでいた時の、自分の考えは、こうだ。
ハンディキャップは、誰でも持っていると。
ただ、見えるか見えないだけ、相手に分かるか分からないかだけ、の差だと思っていた。
自分が不細工なのも、家が貧乏だったのも、学校でイジメられたのも、全部ハンディキャップだと。
テレビ番組で、障害者の方々が、健常者に批難や中傷されても、自分のハンディキャップに腐ることなく、全て受け入れて、前向きに明るく生きている姿を見て、羨ましく思ったし、励みになったのを覚えている。
だが、その運命を地球の神様が決めていたのが、ちょっとイラっときた。
決めるだけ決めて、放ったらかしなのが。
今度会ったら、右手で一発殴ってやろう。
まずは、魔力の操作なのだが、うまくいかない。
(創造神レベルなのに、自由に魔力操作出来ないなんて、創造神の権限とか使えないのかな?)
と、思ってたら、何かスイッチが入った感じがした。
体の中で、魔法を使った時の感覚がグルグルと巡っている。その感覚を右腕に集中させると、無くなった腕から先が、半透明だが、生えてくるように再現された。
無くなった足の方にも、感覚を集中させると、半透明だが足が再現した。
半透明な手足は、自分の思う通りに動くが、物体をすり抜けてしまう。
これは要検証するとして、寝ている事しか出来ない赤ちゃんの体では、無理なので後回しにする。
魔力操作が出来るのなら、弱くて動けない体を守る、壁のような物が出来ないか試してみる。
イメージを膨らませて、カッと目を見開いたら、ガラス板の様な物が、目の前に浮かんでいる。
鏡みたいに反射していたので、覗き込むと自分が映っていた。
地球人の赤ちゃんとほぼ変わらない、ちょっと耳が丸くて大きい感じもする。北欧人くらい肌の色が白い。目の色は、ピンク色がかったシルバー、髪の毛はシルバー、もう、全体的に白い。
顔は、両親のかわいい所を全部吸収したような顔だ。
父親は、カッコ可愛い。母親は、きれい可愛い。可愛いと可愛いを掛けると、クッソかわいいになる。
いつも魂だけ出てた時は、泣き顔か、母親に隠れて、まともに見えなかったが、これだけ可愛かったら父親がデレデレするわけだ。
この世界のドワーフは、地球人のような肌の色で、髭を三つ編みにするほど毛深くは無く、地球人より等身が少し低い感じで、平均身長も少し低い。男性は筋肉質で横に広く腕が長め、女性は童顔の日本人な感じだが、ほぼ地球人と変わらない。違うのは、男女とも耳が丸くて少し大きいくらいか。
自分の顔に見とれているのも駄目なので、目の前のガラス状の板を消す。
板だと、全体を守りきれないので、球体にしようかと思ったが、守っているのがバレてしまう。
それよりも金属メッキのように、中身を傷めず、更に強くするコーティングのような防御魔法を頭の中で想像し、魔力を練る。
・・・何かのスイッチが出来た感じがした。
(コーティング魔法!)
心の中で唱えると、体から魔力が拡散し、透明で薄い膜に変わり、皮膚の上に、真空パックする感じで貼り付いて、皮膚に馴染んでしまった。
左手で、赤ちゃんベッドの枠を触っても違和感が無い。試しに、思い切り「ガンッ」と、ぶつけてみても痛くなかった。
少し痛いかな?くらいの感触は有るので、普段の生活には困らないと思う。
コーティング魔法を一旦切り、自分に害を及ぼす全ての物を弾くように願い、再びかけ直す。
膨大な魔力が消費されていくのが体で感じるのだが、無限に持っているので問題ない。
常時発動するように念じたら、スイッチが入った感じがしたので大丈夫だろう。
・・・疲れたので、ウトウトとしている。
部屋の窓は少し開けられていて、そよそよと心地良い風が入ってきていた。
自分が深い眠りに入ろうとしていた時、突然、声が聞こえてきた。
「アンタは、生まれたばかりだけど、この世界の為に死んでもらうワ!!!」
今回、面白くなるように頑張りました。
それから、この小説とは別に、もう一つ並行して小説を書くことにしました。
『魔法研究部の担当顧問』、もしよろしかったら、こちらもよろしくお願いします。
両方とも、面白くなるように頑張ります。