幼少編 ~その1~
エクスペリメンティア・・・実験の星と名付けられたその星は、地球の神様が試験的に作った星である。
そこはテレビゲームのロールプレイングゲームを模倣した世界観と言われたが、あの神様の事だから、色々な情報を取り入れて、雑に混ぜてそうな感じがする。
自分に向かって、映像が飛び込んでくる。
地球のようで、似てない大陸がある惑星がドンドン近づいて、
更に、その惑星の幾つかの大陸の1つにドンドン近づいて、
更に、その大陸の山脈の麓にある集落にドンドン近づいて、
更に、その集落のある一軒家にドンドン近づいて、
その一軒家の中に入ったと思った瞬間、また真っ白になっていく。
「オギャー!オギャー!」
どうやら、赤ちゃんが生まれたばかりで、産婆さん(助産師さん)が頭上に抱え上げている。
部屋には、赤ちゃんの母親、産婆さん、そして赤ちゃんの泣き声を聞いて慌てて入ってきた父親がいる。
「「「うおっっ!、眩しいっ!」」」
泣いてる赤ちゃんが光っている。全員直視出来なくて、叫んでいた。
自分は、光っている赤ちゃんの様子を上からふわふわと、浮かびながら眺めている。
自分の魂は、伊藤悟だった姿形からかけ離れて、棒人間が宇宙服を着たような、もっと曖昧な感じになっている。
そして、自分の体からコードのようなものがスルスルと出てきて・・・
赤ちゃんの方までスルスルと伸びて行き、カチンとつながった。
つながった途端、赤ちゃんから光が薄れて、常夜灯くらいの明るさで光っている。
自分の目の前に、何かが出てきた。手に取って見ると、本体取扱説明書だ。
前回の失敗を取り返すように熟読してみる。
地球との違いは、魔法の概念がある事、魔力を扱えるようにして、守ったり、戦ったり、飛んだり跳ねたり、色々としなければならない。
あと、しばらくは魂と本体の融合に時間がかかるので、自分の意思で動かない時があるが、本体の安全機能が働いているから、問題ないみたいだ。
コードを軽く引き、本体と融合。魂が本体に染み込む感覚を感じながら、無事融合が完了した。
光っていた赤ちゃんの体からは光が消え、元気に泣いている。
「この子は、神の子じゃ。産まれた時の光といい、手足の欠損といい、間違いない」
産婆さんがそう言うと、母親の方へ綺麗に洗って布に包まれている赤ちゃんを渡し、母乳を飲まさせていく。
「俺の一族では、初めての事ですが、何か問題がありますかね?」
父親は、不安そうに質問してみた。
「何も無いのぅ、逆に普通の子供より優秀じゃと思う。
なにせ、ドワーフの命とも言える右手を差し出してまで、
神様にお願い事をしたんじゃ。
この子は、世界を変える偉業を成し遂げるやもしれん。将来が楽しみじゃて。
じゃあ、何か困った事があったら、いつでも呼びに来なさいや」
そう言って、産婆さんは帰っていった。
父親は、まだ不安なのか、あれこれブツブツ言いながら、部屋をウロウロしている。
彼が心配するのも無理はない。夫婦にとっては、最初の子供であり、
長い間、願いに願ってやっと授かった一粒種であり、
もしかすると、母親が高齢でもあることから、唯一無二の自分たちの子供かもしれないのだ。
「あなた・・・」
母親が心配性な父親に対して、少し呆れ気味に呼ぶ。
「この子は、神の子でも、ましてや悪魔の子でもないわ」
十分に母乳を飲ませて満足したかのようにグッスリ眠る赤ちゃんの頭を優しくなでながら、
「この子は、私が頑張って産んだ、だいじな大事な、私たちの子供よ」
そう言って、父親に微笑んだ。
「そうだな。確かにそうだ」
父親が返事をすると、出産の疲れが一気に出たのだろうか、赤ちゃんと一緒に寝てしまっていた。
聖母のような慈愛に満ちた表情で寝ている母親と、その横で、母親に似てて、とても愛くるしい顔の赤ちゃん。
二人の寝姿に、ほっこりとする父親は、一生に一度も無いような多幸感に溢れて、さっきまで、アタフタと取り乱していた事など何処かに吹き飛んでしまっていたようだ。
「俺の、だいじな大事な、家族・・・」
父親は、二人を起こさないように、そっと抱きしめるのであった。
投稿が遅くなりました。
インフルエンザにかかって、しばらく寝込んでたら、仕事が溜まっていて、超忙しいです。
2017年4月5日、文章の前に空白をいれました。あと、読みやすいように修正しています。