プロローグ ~転生前 その2~
突然、めまいがするほど眩しい光の中に吸い込まれたかと思ったら、
パーーーーーっと周りが拓けてきて、辺り一面、白い空間に出てきた。
いや、よく見ると白いというか、グレーというか、ものすごく曖昧な所だ。
あたりを見回して見ると、遠くまで果てしなく広がっているように見えて、六畳一間の部屋にいるみたい。
床も有るのか無いのか分からないが、自分が立っている状態だと思うので有るのだろう。
いつの間にか、目の前に誰かが立っているのが見える。
立っている人物を凝視してみると、靄というかモザイクがかかっているみたいでハッキリ見えない。
その人物から目をそらすと、某電気店街に点在するメイド喫茶の店員さんのような格好をした美少女のように見える。
「やっちまったダに?」
女の子の声でモザイクな美少女メイドさんらしき目の前の人物が言ってきた。
「あなたは、まだ死ぬ運命になってないのに、勝手に死んじゃ駄目じゃん!」
「こっちの身にもなってよね!」
どうやら、怒っているらしいので、
「はぁ」
という歯切れの悪い返事をしつつ、お風呂での出来事から今までの経緯を説明してみた。
モザイクな美少女メイドさんらしき人は、自分の話を聞き終わると、
「だーーー何やっとるらぁ~」
「身体と魂をつなぐコードは、デリケートだから、
赤い印が出て来るまで引っ張ったら、ちぎれるのは当たり前じゃん」
「身体の中に魂を戻すには、コードを引っ張るのを一旦止めて、もう一度コードを軽く引くと自動で戻りますって、ちゃんと説明書に書いてあるダに?」
「説明書って、どこにあるんですか?」
「ポケットに入ってるら?」
「えっ!?」
自分は全裸でここまで来てるのに、何でポケットと言っているのだろうと、
下を向いたら、いつも外出する時に着ているシャツとジーパンの格好だった。
ポケットに手を突っ込んでみると、何か紙が入っていて、
取り出すと、本体説明書と書いてある折りたたまれた物だった。
広げて読んでみると、確かに書いてある。
書いてある下の項目には、こんな事が書かれていた。
『コードが切れた場合は、死亡扱いになります。
その後の魂は、神様の指示に従ってください。』
これで、自分が死んだ事が確実になった。
目の前にいる人物らしい者は、誰だろう?
「あの~~、あなたは誰ですか?」
「あたしは、神様ダに?」
「何でそんな格好をしているんですか?」
「そっちに合わせとるんよ」
「私がメイドさんが好きだと?」
「ああ、ちがうちがう。地球人の概念みたいな?」
「方言もですか?」
「そうそう」
「神様を見ると、モザイクがかかるんですが?」
「あたしには、補正がかかっとるでぇ、ちゃんと見えないようになっとるダに」
・・・どこから突っ込んでいいやら分からなくなってきた。
とりあえず、死んだ後の魂がどうなるのか、神様に聞いてみたところ、
記憶をリセットさせてから、再び人間として生まれ変わるらしい。
記憶は、神様にとっては糧であり、生き甲斐であり、一番大好きな物だそうな。
しかし、何回も転生した魂は、情報が完全に抜けきれずに、少し残ったまま転生されるので、ある程度転生した魂は、魂ごと神様が吸収するみたいだ。
その吸収したエネルギーで、新しい魂の卵をつくり、動物に与えて育てていく~みたいな事を
長々と話していたのだが、こっちが疲れてしまった。
今度は、自分の今後の事を聞いてみた。
魂的には、あと2~3回くらい転生出来るらしいけど、運命を変えて早く死んだので、転生先が見つからないらしい。
自分がお風呂に入った事で、運命が変わったみたいだ。
神様が言うには、地球人の運命は、8割前後ほぼ決まっているのだそうだ。
生まれてから死ぬまでにかかる病気のかかりやすさとか、その人の性格とか、転生先の環境とかを緻密に計算して、DNAに暗号化して埋め込んでいるとか言ってた。
「最近は、科学の進歩でDNAの解析が進んできているけど、まだまだじゃんね~」とも。
「DNAの解析が本当に出来た時、人類は驚愕するダに」とか言って、
「ケケッ」と、ゲスい声で笑っていたので、おそらく顔もゲスい顔をしているのだろう。
「だもんで、運命を先に決めてるから、あたしは、ただ傍観するだけダに?」
地球人が類人猿の頃からそうだったらしい。驚愕である。
「あ~~そうそう、地球人の魂がね、増えすぎちゃっててぇ、あなたみたいな人たちを、別の世界で試験的に転生させてるんだったわ」
「その世界だったら、転生可能だから、転生しりん!」
「担当の神様を連れてくるで」と、言って消えてしまった。
嫌な予感しかしない自分であった。
あともう1回プロローグが続きます。
地球の神様の方言ですが、私は三河弁マスターしてないので、エセ三河弁ということで、ご勘弁願いたいです。
2017年4月5日、修正しました。文章の前に空白を入れるのと、読みやすように修正しました。